概要
戦争やテロなどの紛争や、自然・人為による災害などが発生した際に、国民の生命や国の財産を守るため、速やかな避難や被災者の救助、終結後の復旧活動によって、被害を最小化させるための、民間レベルの活動のことである。
戦争・テロに関しては、武力を行使した直接的な侵略だけではなく、スパイなどの工作員により、新聞社やテレビ局などのマスコミといった主要メディアが乗っ取られ、プロパガンダ(宣伝)工作や情報操作を行うことで、国民の愛国心や国防意識を失わせて、国の乗っ取りを謀る間接的な侵略に対してや、それらにより占領され国が乗っ取られた際に、国を取り戻すために行うゲリラ活動などの、民間レベルの対策まで含まれる。
永世中立国の立場をとっているスイスでは、国民のそれらに対する国防意識を向上させるために、政府がこれらの活動について具体的に解説された書籍を発行し、全スイス国民に配布している。
日本においても、『あらゆる危険から身をまもる 民間防衛』のタイトルで、2003年に日本語翻訳され発行された。
戦後に長らくおろそかにされていた国防に関して、非常に現実的な解説がされていることから、あらゆるメディアで話題になり、インターネット上では特に参考にされている。
永世中立を保てた所以
スイスは「永世中立国」として200年以上も戦争をしていない世界で唯一の近代国家であり、その所以(ゆえん)には以下の理由がある。
まずは強大な軍事力を有しており、「侵略を受ければ徹底抗戦する」と宣言し、それでもし敗れることがあれば国内の発電所・ダム・橋梁などのありとあらゆる施設を破壊して国土を焦土化してでも、侵略国には何も与えない。
どこの国とも軍事同盟を組んでいないため、国民皆兵で男子には徴兵の義務が課せられており(女子は任意)、除隊すると60歳までは予備役兵として登録され、いざ戦争が起これば軍に復帰し、そのため国民の一人ひとりに民間人であるにも関わらず小銃が支給されている。
それでいて、本書「民間防衛」が一家に一冊必ず配布されており、戦争が起こった際に国民はどのようにゲリラ戦を戦えば良いか、メディアなどを利用した間接侵略にどう対応するべきかまで記されている。
こうした国民の国防意識の向上を促すスイス政府の政策が、中立を掲げどこの国とも同盟を組むことなく、200年以上にわたって国家の独立を守り平和を保ってこれた所以である。
余談だが、逆に非武装の中立を掲げたルクセンブルクは、第一次・第二次世界大戦において、その宣言を破ったドイツの侵略を受け、国土を蹂躙される手痛い思いをしている。
そのためルクセンブルクは、戦後に国防のため徴兵制を敷いて軍隊を創設し、NATOに加盟して軍事同盟を結んだ。