概要
大阪難波〜近鉄名古屋間を最速2時間5分で走っていた。最速列車の近鉄名古屋〜鶴橋間の所要時間は1時間59分であるため、名阪間で2時間を切るスピードで運行している、というのはあながち間違いではない。まあ、ほとんど2時間ではあるのだが。
近鉄名古屋〜鶴橋間「ノンストップ」なだけあって、近鉄名古屋〜鶴橋間は一切停車をしなかった。伊勢中川では短絡線を通ることでスイッチバック回避と無停車を実現していた。
2012年3月20日のダイヤ改正にて、全ての名阪甲特急が津駅に停車することとなり、50年余りに渡る「名阪ノンストップ特急」の歴史に幕を下ろした。
ノンストップ特急の雑学
運転士
運転士はどんなに凄腕でも、集中力が切れるのは仕方ない。この観点から、長距離を走る列車が多い近鉄ではいわゆる「縄張り」が設けられており、その線区を担当する運転士以外は運転してはいけないこととなっている。つまり大阪線を担当する運転士は名古屋線を運転することはできないし、逆もまたしかりなのである。では、鶴橋まで停まらないノンストップ特急はどうやって運転士を代えるのか?そんな心配は御無用!!実は、名阪ノンストップ特急には2人の運転士が乗務していて、1人が伊勢中川まで運転し、もう1人が車掌を担当している。そして、伊勢中川の短絡線内を徐行運転しているときに、車掌が運転席に入ってきて交代。こうしてうまく2人の運転士を使っているのだ。近鉄って頭いい!!
津駅に停車する列車の場合は、津駅が縄張りの区切りとされているため、乗務員交代が同駅で行われることとなっている。ノンストップ運転取りやめ後はすべての名阪特急が津駅にて乗務員交代することとなった。
ノンストップなのは日中だけ
全ての名阪甲特急が津駅に停車するまで、ノンストップなのは上り7本(近鉄名古屋発10:00〜16:00)、下り8本(大阪難波発11:00〜18:00)の合わせて15本だけ。他の列車は、津または大和八木のいずれか、または両方の駅に停車していた。ちなみに「ノンストップ特急・アーバンライナー」と案内されるのは前述の鶴橋〜名古屋間ノンストップの列車のみで、その他は単に「アーバンライナー」とだけ案内されていた。方向幕にも、ノンストップ特急は行先に「NONSTOP」と表示されていた。
特急が特急の通過待ち!?
名阪ノンストップ特急とはあまり関係のない話だが、名阪特急には、甲と乙があり、名阪ノンストップ特急は前者の一種に含まれていた。乙は途中停車駅を増やしており、途中桑名・近鉄四日市・白子・津・名張・大和八木・鶴橋・大阪上本町の8駅に停まるほか、一部の乙特急は伊賀神戸駅と桔梗が丘駅にも停車する。甲特急と乙特急は停車駅や使用車両の面からも明確に区別されている。
2016年3月19日のダイヤ改正からは大阪難波駅発21:00の甲特急が白子、近鉄四日市、桑名を停車駅に追加した。この大阪難波発21:00の甲特急は、大阪と伊勢志摩を結ぶ先行の乙特急を名張駅で追い抜く。私鉄で唯一、特急が特急の通過待ちをするという珍しいダイヤとなっている。
「2時間5分」の評価
新幹線には速さで劣るものの、名阪甲特急は断然安い。また、所要時間が最速2時間5分というのも、早すぎず遅すぎずで、睡眠や読書に最適な時間(睡眠サイクル1回分の90分+入眠・起床の余裕時間の合計)に適合だとして、乗客から高い評価を頂いている。
また、新幹線は新大阪駅で地下鉄に乗り換えなければならないのに対し、近鉄は大阪ミナミ(大阪難波)まで直行するので、ミナミや天王寺方面へ向かうには近鉄特急の方が便利と言える。
なお、津駅に新規停車後、2016年ダイヤ改正では大阪難波~近鉄名古屋間最速2時間9分、鶴橋~近鉄名古屋間最速2時間3分運転となっている。
車両
名阪甲特急には「アーバンライナー」が優先的に使われ、時刻表にも載る。
代走は、基本的に車種制限はなく、さまざまな編成が組まれる。
21000系
難波〜名古屋間の所要時間を最速2時間5分と、従来の名阪ノンストップ特急より6分短縮し、鶴橋〜名古屋間は1時間59分と、初めて名阪間2時間の壁を破った。最高速度130km/hは、登場した当時としては、私鉄最速だったといわれる。オールM車の抵抗制御車。登場時は全扉が折り戸。現在はバリアフリーに対応するため一部車両のみプラグドア。
車内設備は当初はレギュラーシート・デラックスシートとも簡易リクライニングシートであったが、シートピッチを1,050mmに拡げた上で背もたれと座面の連動を最適化し、本式のリクライニングシートに近い角度まで倒せるよう工夫が施されたシートを採用していた。その後、リニューアル工事と同時に後述の「アーバンライナーnext」と同じタイプのゆりかご型リクライニングシートに交換された。リニューアル車の愛称は「アーバンライナーplus(プラス)」。
基本編成は6両。2両の増結ユニットもあり、中間に組み込まれて8両で運行される。
21020系
愛称は「アーバンライナーnext(ネクスト)」。2002年に登場した。21000系のデザインを踏襲しつつ、前面窓周りをブラックで塗装するデザインは、なかなか斬新。ヘッドライトはHID灯となった。IGBT素子のVVVFインバーター制御となり、モーターは230kWと大出力なので、MT構成は3M3Tとなった。「デラックスシート」も21000系に引き続いて設置されたが、座席配置が1+1+1(2列+1列で、全ての座席が独立)の3列式となった。片方の通路の幅が広く、もう片方は台座となっている。
本系列は21000系の置き換え用ではなく、前述の「アーバンライナー」のリニューアル工事中に不足する本数だけを補う目的で造られたため、編成数は6両編成2本のみの在籍に留まっている。またリニューアル工事完了後は本数に余裕が出たことから、土・休日の夕方に運転される増発分の甲特急(大阪難波発20分台・近鉄名古屋発25分台)を全て「アーバンライナー」で賄えるようになった他、名阪間の主要駅に停まる乙特急の一部の運用にも就くこととなった。
過去の車両
10100系ビスタカー
通称ビスタII世(イラスト右下)。試作的要素の強かったビスタI世10000系を元に造られた、元々は名古屋線改軌に合わせて投入が開始された名阪ノンストップの看板車両だった。当時近鉄のビスタカーは国内唯一のダブルデッカー(二階建て電車)として全国区で有名になった。当初は難波方と名古屋方がそれぞれ流線形になっている3連節編成同士を背中合わせに連結した編成が定数だった(このほか、両側が貫通型の編成も存在する)。
しかし東海道新幹線開業により乗客は激減、収容力に重きを置いていた10100系では乗車率が低いわりに居住性が低いという事態になり、ビスタカーは1編成のみとし、後述の「エースカー」を連結して編成長を調整するとともに居住性の高いサービスを確保することになってしまった。そして最終的に、ビスタII世は近鉄の看板である名阪ノンストップを去ることになるる。
10400系・11400系エースカー
ビスタカー登場後もツリカケ式の旧型車が運用されていた名阪乙特急の更新用に製造されたオールフラットカー仕様の汎用特急形車両……のはずが、東海道新幹線開業により固定編成前提の10100系の運用が難しくなった名阪ノンストップにもフレキシブルな運用が可能な車両として投入されることに。イラストのようにビスタカーと組んで運用される姿は、VistaとAceの組み合わせであることからVA編成と呼ばれ、それまでのビスタカーのみの編成ともまた違った人気を持っていた。このVA編成はII世とだけではなく、後述のビスタIII世と組んだこともある。
12000系・12200系スナックカー
4連が定格性能のエースカーですら過剰となった名阪ノンストップ用に投入された定数2連の特急用車両。名阪ノンストップが最も落ちぶれていた時期の新車である。供食コーナー「スナックコーナー」わ設置するも評判は芳しくなく、最終的に合理化の為廃止された。名阪ノンストップ時代はとにかく惨めな扱いだったが、逆に名阪特急を離れてからは汎用特急車両として八面六臂の活躍をしている。
30000系ビスタカー
ビスタII世は名阪特急を離れた後、観光特急・乙特急などの運用に主体だったため、後継車である三代目ビスタカーは観光特急に特化したスタイルで登場していた。
ところが1976年を皮切りに国鉄が値上げを濫発し、さらには国鉄労組構成員の横柄な態度など乗客置いてけぼりの騒動が続いた結果、近鉄名阪ノンストップは首の皮一枚を残して息を吹きき返すことになった。
そしてそんな中の1985年、先代の雪辱を晴らすべく一部列車にビスタIII世の充当が開始される。この為、登場から5年ぶりに30000系が1編成増備された(30215編成)。
期間は3年間と短かったが、「健在ビスタカー」をアピールするには充分だった。