解説
国家等においてその構成員(国民等)の意思を集合して意思決定が行われること。デモクラシー。大日本帝国憲法下では民本主義と称していた(当時の日本は天皇主権が建前であったため、人民主権を含意する可能性がある「民主主義」の語は避けられた)。
古代ギリシャ以来の政治概念であるが、長い歴史の中で発展してきた概念であり、時代や論者によって何を持って民主主義と称するには多様な捉え方がある。実は古代ギリシャの「民主主義」は都市部の「市民」(ギリシャ人のほんの一部)だけの特権であり、女性や田舎の住民には参政権がなかった。
最終的な意思決定の手法として多数決が用いられることが多いため、民主主義即ち多数決と捉えられてしまうことがあるが、近代の民主主義はむしろ少数意見の尊重が肝要とされる。思想・良心の自由、表現の自由、議論の場の提供は民主主義の前提として欠かせないものである。
余談
よく誤解されるが、民主主義は君主制の対義語ではない。
フランス革命後にフランス軍を率いた将軍ナポレオンは、民主主義の原点とされるルソーが説いた民主主義思想に若い頃から傾倒していたが、後に皇帝となっている。
このことに関してナポレオンは
「私は、つねに主権は国民にあると考えていた。事実、帝政は一種の共和制なのだ」
「私は古代ギリシアの共同体国家(ポリス)が行ったことを、この国で実現したかったのだ」
と語っている。
事実、日本には皇室があり、イギリスには王室があるが、日本もイギリスも制度としては議会民主制(代議制)を採用しているため、「共和制国家」と言っても矛盾しないのである。
ナポレオンが言っている古代ギリシアの「共和政」は、『民主制』『貴族制』『君主制』という3つの国家形態を包括した(全部ひっくるめた)概念である。
つまり共和主義は『民主制』でも『貴族制』でも『君主制』でもどれでもよいわけであり、君主を倒して革命を起こせば共和主義・民主主義というわけでは断じてないのである。
関連タグ
古代における最大の民主制(ただし「ローマ市民権を持つ市民」のみ)国家。市民の範囲拡大とともに対応できなくなり、帝政(元首政)へ移行した。→ローマ帝国