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人は自由なものとして生まれたのに、いたるところで鎖につながれている。自分が他人の主人であると思い込んでる人も、じつはその人々よりもさらに奴隷なのである。この逆転はどのようにして起こったのだろうか。それについては知らない。それではどのようにすればその逆転を正当なものにできるのだろうか? わたしはこの問いには答えられると思う。

(『社会契約論』、光文社古典新訳文庫(一部日本語訳を加筆・修正)、18~19ページ※ 以下も同書からの引用である。)



概要編集

ジュネーヴ共和国(現:スイス西部の都市)の思想家哲学者作曲家で、主にフランスにおいて活躍した。日本においてルソーと呼ばれるのは大体は彼のこと。

1762年にフランスで公刊された、政治哲学の著作である社会契約論の著者として有名であり、「一般意志」という概念(しばしばルソー独自の造語と認識されている)を世に送り出した書であり、古くは『民約論』とも訳された。

彼のこの書籍は、フランス革命期において掲げられた民主主義のみならず、その後の民主主義や政治思想を巡る議論に大きな影響を与えた。


ルソーは、『社会契約論』において、『人間不平等起源論』での議論を下地にして、トーマス・ホッブズのような性悪説的な自然状態を想定した社会契約説や、フーゴー・グロティウスやアリストテレスらの奴隷を巡る議論を批判的に検討することを通じて、人間の権利は物理的な力や脅威ではなく人間同士の取り決めや契約の上で成り立っているという前提に立ち、社会契約や国家の本質を、特定の個人や階級・集団に権限を委ねることなしに、自然状態で存在していたはずの自由を市民的秩序の枠組みにおいて回復するために自らが定めた法律や制度に従って生き、市民同士が互いの幸福を尊重し保護するため力を合わせることにあるという議論を展開し、民主主義的な国民国家の原則を次のように語った。


「……『どうすれば共同の力のすべてをもって、それぞれの成員の人格と財産を守り、保護できる結合の形式をみいだすことができるだろうか。この結合において、各人はすべての人々と結びつきながら、しかも自分にしか服従せず、それ以前と同じように自由でありつづけることができなければならない』。これが根本的な問題であり、これを解決するのが社会契約である。

 これらの条項は、正しく理解するならばただ一つの条項に集約される。社会のすべての構成員は、みずからと、みずからのすべての権利を、共同体の全体に譲渡するのである。この条項によるとまず、誰もがすべてを放棄するのだから、誰にも同じ条件が適用されることになる。そしてすべての人に同じ条件が適用されるのだから、誰も他人に自分よりも重い条件を課すことには関心をもたないはずである。

 さらにこの譲渡は留保なしで行われる。そのために結合は完全なものであり、どの構成員もほかに何も要求するものをもたない。もしも特定の個人に何らかの権利が残されたならば、これらの人々と公衆のあいだで判決を下す上位の者がまったく存在しないのだから、そしてある意味では各人は自分のことについてみずから判決を下すことができるものだから、やがては[この特定の個人が]すべてのことについて判決を下すことができると考え始めるだろう。そうなると自然状態がつづくことになり、結合は圧制となるか、有名無実なものとならざるをえないのである。

 要するに、各人がすべての者にみずからを与えるのだから、みずからをいかなる個人に与えることもない。すべての成員は、みずから譲渡したのと同じ権利を、[契約によって]うけとるのだから、各人は自分が失ったものと同じ価値のものを手にいれることになる。そして各人は、自分が所有しているものを保存するために、[契約を締結する前よりも]大きな力を手にいれる。

 だから社会契約から、本質的でない要素をとりのぞくと、次のように表現することができることがわかる。「われわれ各人は、われわれのすべての人格とすべての力を、一般意志の最高の指導のもとに委ねる。われわれ全員が、それぞれの成員を、全体の不可分な一部としてうけとるものである」

 この結合の行為は、それぞれの契約者に特殊な人格の代わりに、精神的で集団的な一つの団体(身体)をただちに作りだす。この団体の成員の数は、集会において投票する権利のある人の数と一致する。この団体は、結合の行為によって、その統一と、共同の自我と、その生命と、その意志をうけとるのである。……」(39~42ページ)



「だから統治者が市民に

『汝は国家のために死なねばならぬ』と言うときには、

市民は死ななければならないのである。」

「なぜならこのことを条件としてのみ、

市民はそれまで安全に生きてこられたのであり、

また市民の生命はたんに自然の恵みであるだけではなく、

国家からの条件つきの贈物だったからである。」(76~77ページ)


創作作品におけるルソー編集

ジャン=ジャック・ルソーを題材にした人物、またはモチーフにしたキャラクターが登場する作品。

乙女パズルゲームの攻略キャラクター。→J=J・ルソー(ラヴヘブン)

フランスで活躍した哲学者。政治哲学や社会思想の側面から語られることが多いが,あらゆる分野に幅広い関心を持ち、独自の思想を残した。(ゲーム内プロフィールより)

異世界の危機を救うため、主人公により召喚された。脱衣癖がある。


余談編集

若い頃は音楽家を目指していたらしく、童謡のむすんでひらいての作曲者とも言われている。


関連タグ編集

フランス フランス革命期 民主主義 政治哲学

社会契約論


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