「徳なき恐怖は忌まわしく、恐怖なき徳は無力である。」
概要
フランス人。1758年5月6日生まれ。1794年7月28日に死亡。
フランス革命の中心人物。
弁護士から政治家となり、後に独裁者となり数多の敵対者をギロチンにより粛清した。
一方で近代民主主義の実現に燃えた理想家であり、私腹を肥やしたり残虐な行為を行ったことはなかった。
人物
若い頃は貧しい苦学生であったが、秀才であり、1775年にルイ16世の戴冠式の帰途学院を訪問した際には、雨の中膝をついてルイ16世を出迎え、学生代表としてラテン語の祝辞を捧げたという話が残っている。ただし彼は後の国民公会において、そのルイ16世を激しく非難し、即時処刑すべきと主張している。
彼はルソーが唱えた「国民主権」「平等主義」を信奉していたが、純粋過ぎる平等の信念はもはや狂信の領域であり、「貧しい人間が一人もいてはならない」という脅迫的観念論の下で統制経済が実施され、反革命分子の徹底した監視・弾圧・処刑に繋がっており、恐怖政治もそうした彼の理念が関係していると思われる。
現実として彼が信じた理想は理想ではなく、「人を全く見ていない妄想」であった。
いくら彼自身が真面目で理想に燃える人物であったとしても、反対派を弾圧し恐怖政治を蔓延らせ本来の目的であるはずの「国民の生存と発展」とは真逆の結果となった。
彼の革命精神に忠実すぎる姿勢は政治家としてはあまり稚拙で狭量であり、非現実的を通り越して夢想的と言える。
その為、当時のフランス国民の実情に彼の政策がマッチしていたとはとても言えず、結果として多くの人間を無為に死なせることになってしまい彼自身も因果応報と言わんばかりに彼自身が処断した人たちと同じように断頭台にてその生涯を終える。
彼のやり方は根本的に「目的と手段を履き違え」「状況を省みない」、基礎から疎かな暗君のソレであり、民主制政治における最大級の汚点とも言えるほどの「失敗」となった。
彼個人としては清潔感があり、質素で紳士的な服装や振る舞いは、市民、特に女性からは独身であったことも相俟って、人気が高かった。
経歴
政治党派・ジャコバン派に所属し、オーストリアやプロイセン(後のドイツ)を巻き込んだフランス革命戦争の最中、革命政府による新議会「国民公会」の名称を提案(この国民公会において議長席から見て右側と左側が、後の政治における『右翼』『左翼』の語源となった)。
ここでジャコバン派が勝利したことによって王制が廃止され、フランスは共和国となった。
ロベスピエールは普通選挙や人権といった近代民主主義の先駆者として政治を主導。
しかし、ルイ16世の処刑後に対立するジロンド派の議員たちを逮捕し、実質的にフランスの実権を握って以降は、国内外の問題を解決すべく、自分の思想に反し政敵と見做した貴族や市民を次々に処刑した「恐怖政治」を敷き、約4000人もが処刑された。
この時の恐怖政治は「Terreur(テルール)」と呼ばれ、現在の「テロ」の語源となり、彼が歴史上最初の「テロリスト」とされている。もっとも、政権に対する反動であるゲリラ的活動である近代テロリズムとは別物で、体制による反対勢力への弾圧、白色テロであると言える。
その後、対外戦争とそれに伴う内乱を一旦は終結させたものの、上述した恐怖政治により、いつ自分が殺されてしまうか解らなかった議員たちによるクーデターが起こり(テルミドールの反動)、ロベスピエールと彼の腹心たちは逮捕され、死刑判決を受けて処刑された。
異名
「ルソーの血塗られた手」
「清廉の人」
ロベスピエール家
フルネームは「マクシミリアン・フランソワ・マリー・イジドール・ド・ロベスピエール」。
弟であるオーギュスタンは兄と同様に政治家の道を歩み、テルミドールのクーデターで兄共々処刑されている。妹のシャルロットによる兄弟の回想録がある。
通常ロベスピエールと言えば長男のマクシミリアンのことを指す。
人間関係
ジョルジュ・ダントン……豪快な性格でロベスピエールとは対照的な革命家。親友だったが決別し、ダントンは処刑される。
サン・ジュスト……「革命の大天使」または「死の天使長」と呼ばれた美貌の青年革命家。ロベスピエールの右腕として恐怖政治を執行。
ナポレオン・ボナパルト……直接的な関わりはないが、ナポレオンはロベスピエールの弟オーギュスタンの仲間だった。ロベスピエールの死をもってフランス革命は終わりに向かい、ナポレオンの戴冠により収束する。
創作作品におけるロベスピエール
シュヴァリエ~LeChevalierD'Éon~/漫画・アニメ・小説
(東宝版)
(宝塚版)
ひかりふる路/舞台
薔薇に隠されしヴェリテ/ゲーム
Fate/GrandOrder/ゲーム
→マクシミリアン・ロベスピエール(Fate):彼をモチーフとしたキャラクターだが、サーヴァントではない。
関連タグ
マクシミリアン・テルミドール:彼とテルミドールのクーデターをモデルとした、ACfAに登場するある人物の偽名。