九十九神(九十九の満月)
つくもせかいのつくもがみまたはようかい
概要
おおよその内容は付喪神と同じ。
漫画「九十九の満月」の妖怪【九十九神(つくもがみ)】とは、人や動物などの生き物が死に、その魂と他の魂が混ざり合った魂が物や思いに宿った、生まれ変わりの存在として登場する。
別の見方をすると、生殖・繁殖行動も無く、突然生れる生物(せいぶつ)とも言える。
なので妖怪【九十九神】のざっくりした定義は“親をもたず無から産まれる存在”となる。
作中での表記は”付喪神”では無く”九十九神”で一貫している。
「九十九の満月」の世界(以下、九十九世界)に存在する妖怪のほとんどはこの【九十九神】。
なので『妖怪=九十九神』と考えてもらって良いかもしれない(例外はある)。
誕生経緯
九十九世界では、人や動物などの生き物が死ぬと肉体は土に返るが、魂には質量(「おしこさ(本編後にある補足説明)」では21g)があり、重力に引かれ地の奥深くに潜る。
潜った魂達は地球の中心部に集まって、一つの大きな魂=混合した魂となる。
この混合した魂は龍脈(大地にある魂の流れ道)の循環により再び地上に溢れ、生き物・物・思いに魂が宿る事で妖怪【九十九神】が誕生する(九十九神の分類については下記参照)。
ざっくり誕生の流れを説明すると、
と、こんな感じ。
ただし混ざり合う魂の数や質は均一ではない。元となった生物、魂が潜った場所や地域、龍脈の位置関係、地上に出るまで年月などで大きく異なってしまう。この偏りによって、九十九神の知能や力の強さなどが大きく不均衡で誕生する。
この事から、【親をもたず無から産まれる存在】とも言える。
同じ形の妖怪について
上記にある通り九十九世界の妖怪は、地球の中心に集まった魂の塊が、龍脈(大地にある魂の流れ道)の流れに乗って、地上に溢れた時に誕生する。
この時、同じ形の妖怪が誕生する2つのパターンがある。
- 魂の流れである龍脈の活動が活発になって、一度にたくさんの物に魂が宿った時に、同じ形・同じ種類の妖怪が誕生。
- ありふれた物にパターン化して誕生。
原作者の例えでは、『ポケットの中裏返すとねずみ色のくしゃく~しゃが出てくる』感じ。
場所や環境は違えど、条件が揃うと同じような形のモノが出来るように、上記のようにパターン化して同じ形の妖怪が誕生する。
例:よく使いこまれた釜土(かまど)と台所があると生まれる【妖怪釜(かま)かぶり】
(説明は【その103】の「おしこさ(本編後にある補足説明)」から、名前は【その43】より)
あびゃはぁあ(とんがりコーンを指に(10本)はめた子ども妖怪)
こんな妖怪が生まれるのも同じ理由。全国共通!
分類
九十九神は物と思いの数だけ存在するが、分類としては大きく3つに分かれる。
概念妖(がいねんよう)
人の概念が元となった妖怪。
例:火の玉科、龍科
物化妖(ものばけよう)
自然物や人工物など、生きていない物がベースの妖怪。
例:自在蔵科、そば科
生物妖(せいぶつよう)
動物だけでなく、植物や菌類まで含む生物全般がベースの妖怪。
例:ガジュマル科、お化けくらげ科
さらにここから、どんどん細かい分類になっていくのだが、それもあくまで目安。妖怪自体いろいろな物や動物の混合体が多いので、九十九世界の妖怪学では不毛な議論が今日も繰り広げられている…。
骸骨妖は生物妖?
とある妖怪「火葬した物なら無機物なので物化妖!」
満月「いや死をイメージしたものだから概念妖!」
黄太「どうでもよいの」
鬼子(おにご)
稀に人と妖怪の間で子が生まれることがある。
曰くそれはー
妖怪であり妖怪でなく、人であり人でなく、生き物であり死人である。
それが半妖半人の異形の生き物"鬼子"
元々人間と妖怪の間には子どもが出来づらく、出生率は極めて低い。
主な理由は、九十九世界に登場する妖怪の身体構造が不安定な生き物だから(詳細は下記の身体構造を参照)。
分布
Q 地上に妖怪ってどのくらいいるの?
A もさっとです。
物語の舞台となるおんでこ屋敷は、大きなお化け屋敷なので妖怪だらけだが、地上:人間界にはこれほど多くはいない。
とはいえネコやネズミ、大きな虫を見るくらいの割合で妖怪を見つける事が出来る。見つけようとすると結構見つかるくらいの量との事。
生態
身体構造
九十九世界の妖怪や九十九神達は、魂魄(こんぱく:汎用性の高いエネルギー)を変化させた“妖質(ようしつ)”という物で、骨格や臓器の他、血液やタンパク質・脂肪なども作って(そっくりに化けて)体を構成している。
九十九神の場合、そのほとんどが人間と同じように斬られれば血が出るし骨も折れれば、うんこもします(おしっこもする?)。
この事から九十九世界の妖怪や九十九神は、人などの有機生命体に限りなく近い、エネルギー体の生き物と言えるかもしれない。
ただしこの「妖質」は不安定な物質なので、放っておくと自然と魂魄に分解され、空気中に逃げていってしまう。そのため九十九神は人としての習性をもって産まれるが、同族同士での繁殖・妊娠は不可能。
この為、人間と妖怪の間には子どもが出来づらく、鬼子(おにご:妖怪と人間のハーフ)を身籠っても難産になる確率が高い。
なので体内の魂魄が減ったり補給できなくなると、存在そのものが消滅する生き物でもある。
知能
九十九神の元となった魂は地に潜る際に、生前の記憶をある程度持ったまま潜る。すると中心部では情報が平均化されて「思い出」などの固有の知識などは薄れ、反面「言語」や「常識」と言った全体的な知識だけが残る。
そういった理由で九十九神は、生前の「記憶」は持っておらず、生まれながらにして「基本的な人の知識」を持って(偏りは大きいですが)誕生する。
なので人語を話せる九十九神ならば習わずして言葉を話し、物の数え方等の常識も人間文化に合わせたものになる。
上記にある通り九十九神は、"人としての知識"を持っていても"個人としての思い出"までは持ち合わせていない存在。
だが、年を経て触媒となった物や動物に宿った魂の思いと記憶を持って生まれてくる事がままある。
病気
他の生き物の大きな相違点は、体が魂魄(こんぱく:汎用性の高いエネルギー)からなる妖質(ようしつ:汎用性の高いエネルギーを変化させた物)で出来ているので修復しやすく、姿・形も変えやすい所。
反面安定しない身体構造なので、細胞のバグ・癌の発生率が高い生き物。
大病の例(【その94】より)として、“オニグマ”という妖怪でその説明がされている。
妖怪オニグマは力も強く、動きも疾(は)やく、気性も荒い。何よりもやっかいなのは、その打たれ強さ。
撃っても、斬っても、燃やしてもあっという間に元通り。禍神(まがつがみ:祟り神のようなモノ)と間違われるほど再生力が強い妖怪だった。
そんなオニグマの最後は「癌」による病死。
再生を繰り返すうちに、体の複製暴走(ふくせいミス)から妖質の変異体が、あっという間に体中に広がり…
最後には、はじけてバラバラになって死んでしまったそうな。
軽い風邪は滅多にかからないが、反面大病は多い体質。
特に一点物の九十九神(例:薬箱の九十九神“片倉五郎箱(かたくらごろうばこ)”)は、一度大病を患うと治し方の見当がつかず、手遅れになる事がある(五郎箱の名前は【その100】より)。
寿命
妖怪も人間と同じく歳を取り、いつかは土に還る。
理由は、生まれながらに(魂の)生命としての(老いて死ぬ)記憶に引かれてしまうから。
ただ中には違ネエのように、老いの記憶を持たずに産まれる妖怪もごくごくたまにおり、木の記憶を持って産まれる神木妖達には長寿の妖怪が多い。
「死ぬと何も形が残らない」と言うとそうではなく、骨や甲羅などガッチリと妖質(ようしつ:汎用性の高いエネルギーを変化させた物)が組まれたものは、その後数十年、中には数千年単位で残る物がある。
その中でも有名なのが、おんでこ屋敷が作る(生み出す?)柱や床!
本物の木よりも耐久性が高く、雪鷹のダッシュにも耐える頑丈さから、おんでこ屋敷の重要な輸出品となっている。
文化
数える時のマナー
Q 妖怪なのに一人二人って「人」で数えるの変じゃない?
A 変じゃない!変じゃない?
妖怪は人の記憶を持って誕生するので、(たとえどんな姿・形でも)人の言葉を喋れる妖怪を数える時は、「一人、二人」と「人」で数える。
鬼の場合は「一鬼、二鬼」と「鬼」で数えますが、「人」と数えても大きなマナー違反にはなりません。
また作中によく妖怪の強さを「怪談級」や「民話級」と呼ぶ時があるが、これはマナー違反!
級数は禍神(まがつがみ:祟り神のようなモノ)に対して使う言葉なので、妖怪に使うのは大変失礼な事に当たる。
だが力の強い妖怪に対しては、その限りではない。
原作者が言うには、『超大型の台風級に強い、みたいな感じなんじゃない?』との事。
戦国万妖の呼び方も「一人、二人」だが、
戦国万妖違(ピクッ)の場合は「一かわいい、二かわいい」と、数えれば襲われることはありません。
たぶん…ガオン。あれ…モンスターのような顔で襲ってくる違(ゴゴゴッ)…かわいい(ピタッ)。
※戦国万妖違(かわいい)の記事で、読み仮名が『~またはとってもかわいいちがいちゃん』なのはこの為です。
最上級の形容詞を付けたので、この項目(数える時のマナー)以外にある記事の中では違かわいいではなく、「違」や「違ネエ」となっています…(ブルブル
食文化
妖怪によって、食べる物は異なる。
大抵の妖怪が食べる主な目的は、食べ物の栄養ではなく、物に宿った魂魄(こんぱく:汎用性の高いエネルギー)を食べている。
理由は、妖怪の体を構成している「妖質(ようしつ:汎用性の高いエネルギーを変化させた物)」のため。
これは不安定な物質なので、放っておくと自然と魂魄に分解され、空気中に逃げていってしまう(例外あり、上記の寿命の項目を参照)。
だから妖怪はなるべく「妖質」の元となる魂魄の高い物や妖怪料理を食べて補給している。
鬼子(おにご:妖怪と人間のハーフ)は人間と同様、食べ物からの栄養も必要となるので、人と妖怪両方の食料を食べている。
違ネエのような戦国万妖は、存在そのものを食べている(だから、おしっこはしない)。
下級な物化妖(ものばけよう)のほとんどは食事する事なく、生命・「妖質」の維持が出来る模様。
だが、物化妖でも食事をする者もいる。
妖怪の多くは前世の記憶に縛られるので、その縁(えにし)に準じた捕食行動をする。
【その3】では、元が砂糖瓶だった【見ため通りの甘いやつ “みつつぼ”】が、お砂糖の匂いにゴウッと寄ってきて、雪鷹が放った金平糖を食べる場面がある。
【その94】で妖怪も魂魄の少ない食料を食べる事が明らかになった。
それは妖怪料理以外の自然由来の成分で、不安定な妖質を安定させるため。これに由来して「米喰い者の大往生」(意味:体を長持ちさせる自然物を食べて、少しの苦しみもなく安らかに死ぬこと?)という独自のことわざがある。
余談
- 妖怪の誕生経緯はガイア理論を参考にしていると思われる。ガイア理論とは、地球と生物が相互に関係し合い環境を作り上げていることを、ある種の「巨大な生命体」と見なす仮説である。ガイア仮説ともいう。
- 魂の21gとは、ダンカン・マクドゥーガル(Duncan MacDougall、1866年-1920年)というアメリカ合衆国マサチューセッツ州の医師が「人間の魂の重さは21グラムである」と提唱した説が元と思われる。