その心温まる妖怪漫画(ドラマ)に“妖怪泣き”する人が続出。"探しもの"旅の出会いで知った、はじめての花吹き乱れる想い。それは初恋で、嫉妬もあって、慈(いつく)しみなどが描かれる恋物語。またそれとは別に（作者の自己満足な）先も読めぬ展開(シリアス)、戦闘(バトル)、お遊び(コメディ)も盛り込まれ、笑えて泣けて熱くなれる妖しくも美しい幻想冒険譚(ファンタジーSF)。

2014年にniconico×ダ・ヴィンチの第1回「次にくるマンガ大賞」で「本にしてほしいWebマンガ」部門にて4位を獲得。

2015年2月9日に満を持してコミックスが刊行された。

そして2017年11月3日に6年間の連載に幕を下ろした。

最終話は前編・後編の大ボリュームで公開された！

2019年12月からは、本作の数百年くらい前を描く次作「月歌の始まり」が創作されている。

ストーリー

巨大な妖怪屋敷を旅する人間の少年・鴨川満月は、

ある日美しい龍の少女と出会う。

初めての恋、初めての世界……誰も見たことのない物語がはじまる！

和風ファンタジー大作、いざ開幕！

(ニコニコ静画作品紹介より引用)

世界観

妖怪や鬼などの人外・陰陽術などの霊能力・超能力が存在する架空日本。

世界(万物)の構成元素に『魂魄(こんぱく)』という、汎用性(はんようせい：用途が限られておらず、幅広い用途に使用できる事)に優れた要素がある。これは日常や戦闘で多種多様に活用がされている。

人間や鬼などの生物、妖怪といった物の怪に宿る『魂魄』は、オーラやチャクラや魔力のような活動力(エナジー)としての役割を果たし、含有量が多い存在ほど強い生命力・術技(じゅつぎ)を有する。

だが汎用性が高すぎるために、力の使い方を誤ったり制御が外れたりなどがあった場合、暴走の起きやすい世界(万物)の構造となっている。

その他、詳細は『魂魄(九十九の満月)』・『暴走(九十九の満月)』を参照。

時代背景

舞台は江戸時代までは史実通りの大正時代。開国してから45年くらいたっており、外国の文化交流が盛ん・江戸幕府がまだ続いてるなど現在とは少しずれた歴史となっている。その中でも、おんでこ屋敷(空を飛ぶ巨大なお化け屋敷で本作の舞台)はかなり新しい文化圏なので、外来語の使用や横文字も左から右へ読むのがほとんど。

世界観を壊さないように外来語表記が美男子(ナイスガイ)、超・可愛(そう・きゅ～と)etcとなっている。

法が整備され、身分制度の撤廃・四民平等・自由民権など、誰もが自由に生活できる平時の時代と言われているが、それはごく一部だけの話。妖怪・人間社会にはまだ貧富の差や身分の差別など厳しい世の中。しかし人間社会にある男尊女卑は、妖怪社会であまり見かけない。

その他、

本編に登場する鬼の生態・文化については、鬼(九十九の満月)

本編に登場する妖怪の生態・文化については、おんでこ屋敷・九十九神(九十九の満月)

その他本編に登場する用語については、九十九の満月・用語一覧

を参照。

作品の特徴

秀逸な伏線とそれを回収した上で読者を驚かせる展開が盛り沢山。どんでん返しや番狂わせが非常に多く、色々な意味で先が読めない楽しみがある。
残酷な描写もあるが、キャラクターの無意味な死は少なく、残された者や託された者がそこから学び、感じ、受け継ぐ描写が多い。
キャラの背景や過去のエピソードが作りこまれており、全編通して過去回想が占める割合は多い。その為主要キャラクターは勿論の事チョイ役や悪役にいたるまで感情移入し易く、群像劇としての側面も強い。

これによりキャラクターの出会いや別れがもたらす変化や成長を深く感じ取る事ができる安定の小雨節が特徴である。

ニコニコ漫画に掲載されているWEB漫画はBGMやSEと共にコマを進めて閲覧するスライドショー形式で、オリジナルBGMやテーマ曲「九十九の満月」(歌唱：小池樹里杏)が(特別発注で)制作されている。上記の小雨節もあってより一層の笑い・感動・涙を誘う。テーマ曲は第一話「初めての恋」(無料)にも使用されているので視聴が可能である。
妖怪達の戦闘(バトル)だけでなく、水鉄砲(ウォーターカッター)や確率、素数といった現実世界にもある用語・方式なども物語(ストーリー)に盛り込まれている。本編やおしこさ(本編後にある補足説明)で、それらの事を分かり易く解説しているので、物理(サイエンス)や数学(マスマティックス) 、化学(ケミストリー)好きのフレンズやそうでないフレンズでも安心！安ー心！に読んで楽しむことが出来る。

また作中に出てくる用語・設定は、ヒッグス粒子やガイア理論などを参考にしたものが多数あり、中二病…もとい博識な人や、興味ある人が元ネタを調べてみれば「この事か！」と発見がある。

圧倒的な女性率！だいたい【男：心は乙女：女＝2：1：5】の割合（数値は【その38】のおしこさより）。そのためお姉さんの力(パワー)やすごいぞママ力(パワー)な展開が多い。勿論男や心は乙女キャラも負けてない！

また妖しい人外キャラも登場するため異種族恋愛譚やお母さんが逞しい家族愛の展開も描かれる。因みに作者は男。ざんねんだったな！！

創作作品のオマージュが盛り沢山！作品の根幹には鬼技持ちの能力者が登場する奇妙な冒険や軍神が出てくるロボットなどの作品群。連載中は生物妖の女の子達や魅惑的な首を傾げる格好(ポーズ)などのパロディが豊富。作者の趣味大全開！
小雨大豆の他作品(鷽替真と月夜の×××、フィオナ旅行記、ラジオアニメなど)で登場したキャラクター・アイテム・演出が再登場するスターシステムを用いている。なので作者の作品を多く知っていると小さな発見もありながらストーリーを閲覧できる。そう！この作者は自分の作品が大好きなのである！
【その7】からエンドカードが設けられ、ニコニコ静画に「九十九の満月」タグで投稿された作品を、作者がホイホイ拾って貼り付けたコーナー。【その43】より作者・小雨大豆のコメントが追加された。白色背景で水色のコメントで読みづらいが、たまに本編の小ネタが添えられている。

主な登場人物

鴨川満月（かもがわまんげつ）

男主人公の人間。「探しもの」のために"おんでこ屋敷"を旅する絵描きの少年。

本作の数少ない人間のひとりで、ツッコミ担当。心優しくお人よしな性格である。天然ジゴロ。

実は合戦剣術(かっせんけんじゅつ：実践を想定した実戦剣術)の名家"鴨川本家三男坊"で、人型・関節のある妖怪なら強者でも倒せる強さを秘めている。

龍宮殿雪鷹（りゅうぐうでんゆきたか）

女主人公の龍娘(ヒロイン)。龍と人間の鬼子(おにご：妖怪と人間の親から産まれた半妖)。

実家が金持ちで箱入り娘として育ったため、世間知らず。

大事な巾着を空飛ぶ妖怪の"コウベエ"に飲み込まれ、そこから満月たちの旅に同行する。

おしとやかぶってるが食いしん坊で、かなり強い。

戦国万妖違（せんごくばんようちがい）

満月の用心棒をしている"戦国万妖"という妖怪(チート)。

パカと頭が割れて、喰らう・噛みつく・小さなかわいい違ちゃんを出すなどバラエティ豊富。

色々と適当な性格をしており、ノリが大変よろしい。おしっこはしない。

鬼岩島黄太（きがんじまおうた）

黄鬼で紅の弟。姉の紅が禍神(まがつがみ：強い思いを持って死んだ生物が化けた異形の存在)の呪いに倒れ助けようとしていたところを、満月たちに助けられる。その後は姉の呪いを解くため、満月たちの旅に同行している。

11歳とは思えない幼さで元気な鬼っ子。姉とは違い力は強くないが、命懸けの場面では漢をみせる。

ほむらん

鬼岩島姉弟と行動を共にする雪男にして、ビックフットにして、ヒバゴンの仲間。

背には"自在倉"という便利道具を背負っており身体能力が高い。

人語は喋れないがなんとなく伝わり、思いやりの心をもつ優しいイケメン。

鬼岩島紅（きがんじまべに）

赤鬼で黄太の姉。禍神(まがつがみ：強い思いを持って死んだ生物が化けた異形の存在)から呪いを受け、満月たちに助けられる。自身の呪いを解くため、満月たちの旅に同行している。

戦闘能力が高く短気な性格で、意外と女子力が高い。満月とは犬猿の仲。

ショート短編

作者・小雨大豆がニコニコ静画などに投稿したショートショート短編集。

日めくり月歌

2015年10月～2016年5月までニコニコ静画 (マンガ)「日めくり月歌」と作者アカウントのⅩ(Twitter)・pixiv・Facebookに投稿された日めくり漫画。内容は主要キャラクター達の交流や現実世界の豆知識(トリビア)、単行本発売カウントダウンとなっている。

投稿サイトで違いがあり、

Ⅹ(前代・Twitter)の方が一日早く公開された。
サイトによって投稿されている・ない回がある。

といった事があるので、興味ある方はチェックしてみてはいかがだろうか。

龍の娘の育て方

ニコニコ静画 (マンガ)「小雨箱」と作者アカウントのⅩ(前代・Twitter)・pixivに投稿された漫画。

幼い龍の娘とその女中や家族の物語。

内容は元気なアホの子龍をお世話する女中妖怪などの話が投稿されている。

九十九の満月完結漫画

作者アカウントのⅩ(前代・Twitter)・pixivに投稿された漫画。

当時の作者曰く「無職記念に作った漫画です！（白目）当たったらRTしてくれよな！」

旅人の人間と龍の娘がおんでこ屋敷(空を飛ぶ巨大なお化け屋敷で本作の舞台)を旅していると用心棒の妖怪が「九十九の満月完結漫画占い虫」という九十九神を見つけきた。色々とツッコミ満載だが、この占い虫は何枚かの絵札(カード)を見せると「今から選んでいった絵札(カード)に当てはまるものを降らす」というのだが…。

単行本

2017年11月現在、単行本は4巻まで刊行されている。

【その1】～【その26】分が収録されている。

WEB版で連載されたものに加筆修正をして刊行されている。

というかほぼ全コマの線や演出などが描き直しされている！

Q&Aやおしこさの他、キャラクターのプロフィール・とある絵師が描いた妖怪図鑑【妖怪文庫】・扉絵やおまけエピソードの描きおろし・WEB版でもあったカラーページの挿入といった豪華仕様になっている。

web版と単行本の演出比較例

ともさかろうなどの敵登場シーンが単行本だと更に恐ろしく迫力のあるものに！もちろん、満月達の活躍シーンも更にカッコよく迫力あるものに新しく描きおろしされている！！
単行本(2巻) の【その13 「おんでこ組曲」】では、おんでこ組・おそわさん登場シーンのキラキラ乙女度が上がっていたり、黒鉄(くろがね)・座禅居士(ざぜんこじ)・おそわさん・ぼたんの戦闘シーン、おんでこ屋敷の大家・御屋形様の登場シーンなど所々が加筆修正・新しく描きおろしされている。
虫屋さんの旅館が出来るシーンがweb版だと1コマ・単行本(3巻)だと2コマのカラーページで演出されている。旅館は新しく描きおろしされ更に荘厳さが増し、よく見ると提灯にある満月達の表情も変わっている。
妖怪横丁の解説がweb版だと２コマ・単行本(3巻)だと１コマで紹介されている。妖怪横丁の様子は新しく描きおろしされ、妖怪達で賑わっている風景に変更。よく見ると、 (web版読者なら分かるであろう)とある妖怪とその女中や(web版読者なら思わずウルッとするであろう)とある妖怪家族が街を散策している。

他にも、まだまだ演出の変更・描きおろしが盛り沢山なので、web版・単行本を読み比べるとおもしろい。

制作秘話

Q どういう経緯でニコニコ漫画で連載することになったの？

【その69】のおしこさ(本編後にある補足話)で、小雨先生の概要絵(イメージイラスト)と共に語られている。

漫画家を夢見ていた男・小雨大豆は、かつては夢見て漫画の投稿や持ち込みに励む一人の若者だった。当時の彼は作品をつくるたび、持ち込むたびに成長し輝ける『まんが道』を一歩一歩、しっかりと歩んでいた。

でなんやかんやあって―

" 腐っちゃったんだよね "

賞は取れないは、認められないは、褒められないはと心を病んで腐敗した男は、ニコニコ動画でショートショートやラジオアニメを作って発表していたところ…

「面白い物作ってる奴がいる！」

と目をつけてニコニコ漫画に誘ってくれた方がいた。そうweb版「九十九の満月」読者ではお馴染み、おしこさなどで赤い色の妖怪として登場している編集者……

ではなく 〝漫画家・春原ロビンソンさん〟でした

だから今でも小雨大豆は春原さんには感謝いっぱいで、作家人生の恩人だと思っているとのこと♪

もちろん最終的に決めたのはニコニコ漫画の編集者達ですけどね♪

因みに小雨大豆は編集者に―

編集「今の時代妖怪漫画なんてはやりません」

って言われたこと『 一生忘れない！ 』と根に持っているらしい。こんな事を言った編集者側は当作品のために色々と力尽くしていたわけで、（web版「九十九の満月」ではお馴染みの）作者 VS 編集の熱い対決絵が描かれている。これも愛。

九十九の満月は高校生の頃から考えていたお話で、元々二部構成だったが三部構成に練り直し、当初ストーリーの弱かった部分も補強できて結果最高の形に完結まで作れたとの事。
想像していた漫画家像とは違ったが、ニコニコ漫画というページ制限なし決まりなしで一切の妥協なくストーリーづくりができたと確信し、心から良かったと思っている。