曖昧さ回避
- 日本神話に登場する「災厄」を司る神で【禍神(まがかみ)】といわれる。その他は、関連性のある【禍津神(まがつがみ)】や【禍津日神(まがつひのかみ)】を参照。
- 小雨大豆の妖怪漫画に登場する物の怪であり厄災【禍神(まがつがみ)】の事
- その他作品に登場する存在の事 。
本稿では2.について解説する。
概要
禍(わざわい)の神と書いて、「禍神(まがつがみ)」と読む。
小雨大豆の妖怪漫画「九十九の満月」及び「月歌の始まり」に登場する物の怪であり厄災。
人とも妖怪とも言えぬ厄介な存在。
それは強い強い思いを抱いて死んだ生き物が、死して直接(広義上は)妖怪へと変わったおぞましい生き物……
ではなく作中では"死に物(しにもの)"といわれ、明確に"生き物(いきもの)"と差別化がされている。
その誕生(誕死?)経緯から、全ての禍神はその「欲望=強い思い」に従い人々を、生き物を、世界を襲う。
その脅威的な生態(死態?)による暴走から、どの禍神も大事(おおごと)であり、人間社会で多大な影響力を持つ陰陽省が介入するほどの厄ネタとなっている。
「九十九の満月」では、後述にある禍神の生態(死態?)や級数などが学校教育され、その危険度・認知が広まっている。数百年前が舞台の前日譚「月歌の始まり」では、充分な教育制度が整っていない貧困が顕著な時代背景であり、噂程度のような認知度に描写されている。
誕生(誕死?)経緯
作中世界では、動物や人といった命ある生物(いきもの)は死して魂は地へと還る。
だが稀に霊力の強い動物や人間が強い思いを抱いたまま死ぬと、その思いを成就せんと地へ還ることなく、その場で形をなして…
異形の化物(かいぶつ)となる事がある。
これが死してなお、この世にしがみつく未練の塊が【禍神(まがつかみ)】と呼ばれる存在であり厄災が誕生(誕死?)するのである。
人であろうと動物であろうと、そこには情念であり復讐心であり、何かしらの強い思いがきっかけとなって【禍神(まがつかみ)】になりえるのだ。
生態(死態?)
全ての禍神(まがつかみ)はその「欲望=強い思い」に従い人々を、生き物を、世界を襲う制御の外れた暴走状態が常の生態(死態?)が確認される。
例えば、"子供をたくさん襲いたい"という「欲望=強い思い」を持った禍神は、雪男(成長期を迎えたイケメン)と子どもの黄鬼を見つけても、子どもの方だけを狙って襲いかかってくる。
既に死んでいる存在であり、未練の塊(おもい)がこもった魂魄(こんぱく:万物構成の一つであり、汎用性に優れた元素)で体が構成されている。そんな不安定性である体のため、無形妖(むけいよう:体を構成する触媒(ベース)を基に姿を変形自在できる妖怪)のように姿形を(おそらく本能的に)変幻自在に変形させる事が出来、本能のままに生物(いきもの)を襲う。主魂体(魂の宿る"核")はなく全てが本体であり、打たれ強く、再生力も高い。
禍神(まがつかみ)に対峙した際、これは「欲望=強い思い」の塊であるため、その願いが叶える事で存在意義をなくし自己消滅を起こす生態(死態?)がある。そのため誕生(誕死?)経緯が分かれば、そこから禍神(まがつかみ)の願いを読み解き、本願成就させれば対処できる話であるが、周囲の環境・生物に悪影響を与え続ける事態に対処しながら願い事を叶えるのは至難の業である。また、体を構成する膨大な魂魄(こんぱく:万物構成の一つであり、汎用性に優れた元素)を削る事も対抗手段になるが、それには戦神(いくさかみ:最強の武人に付く称号)級か鬼の様に強者に、願(頑)張ってもらわないと叶わない(敵わない)。
妖怪漫画「月歌の始まり」では、禍神(まがつかみ)になりかけの大妖怪が登場し、瀬戸際で術者たちにより暴走が抑制されながら、それでも周囲の環境・生物に多大な影響力を及ぼしている。
ーたい
禍神(まがつかみ)に見られる特徴の一つ。
禍神は死んだ生物が抱いた「欲望=強い思い」の塊であるため、言葉や思念で「ーたい」と不気味に(ある意味で真摯に)願望を発することがある。確認できる限りでは、ある程度の「知性」があった存在基盤(ベース)の禍神に見られる行動。このような禍神に遭遇した場合には、対抗手段の一つである「願望を叶える」ための一助(ヒント)になる。
「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」「ーたい」
という風に、作中では不気味に連呼されて恐怖を感じられる演出がされている。この様な禍神(まがつかみ)がどのような願望を抱いたかを「知りたい」のならば、本編を読んで叶えるしかない…。
級数
正式名称「禍神等級(まがつがみとうきゅう)」
禍神の脅威に対する基準であり、危険度を示す目安。これは人間(おそらく陰陽省)が作ったものなので、この事を知らない鬼や鬼子(おにご:妖怪と人間の親から産まれた半妖)がいる。
以下の表では、下から上に行くほど高い危険度を表す。
危険度 | 禍神等級(まがつがみとうきゅう) |
---|---|
超怖いぞ | 神話級(しんわきゅう) |
とっても恐ろしいぞ | 民話級(みんわきゅう) |
それでも強いぞ | 怪談級(かいだんきゅう) |
そしてそれほどでもない | 雑談級(ざつだんきゅう) |
もっともこれは定義上だけで、ほとんど使われない。
また作中でよく妖怪の強さを「怪談級」や「民話級」と呼ぶ場面があるも、これはマナー違反!
級数は禍神(まがつかみ)に対して使う言葉なので、妖怪に使うのは大変失礼な事に当たる。だが力の強い妖怪に対しては、その限りではない。
作者が言うには、『超大型の台風級に強い、みたいな感じなんじゃない?』との事。
妖怪漫画「月歌の始まり」では、余所者(ぶがいしゃ)に対する評価基準で「怪談級」と呼ぶ場面があり、この時はまだ相手の詳細を知らない状況なので、ギリマナー違反とならないのかもしれない。
確認された禍神
岩喰み(いわばみ)
級数:民話級
八海山(はっかいさん)の山一つを、全て蛍石(ほたるいし)に変えた。
金色丸(こんじきまる)
級数:不明
長きに渡り虐待を受けて飼い殺された大きな鹿の禍神。飼い主だけでなく、村と山からすべての生き物を殺しきった。
泣き女
級数:民話級
虐げられた男に利用された娘が化けた禍神。8つの村の男達(全て)を、生きながらに腹の内から蛆に変え、その復讐を果たした。
因みに他の文献にある「泣き女」では、亡くなった人を悼んで泣く女という職業や風習として記されている。また「泣き女」関連の伝承として海外では「バンシー」という妖精が有名(因みに、死期が近い家・一族へ現れ、その死を想い泣く妖精など資料により内容が異なる)。
ホメホメモロン
級数:民話級
島一つを枯らした菌妖であり、幻の禍神。島一つと引き換えに退治された。禍神が思いの化身であるならば、思うことすらない生き物が禍神になるのであろうか?作中世界では長きに渡り疑問とされており、その派生(はせい)の秘密を探り当てた資料は途中で途切れ、その筆記者は今現在も消息不明。
ともさかろう
級数:怪談級
生前は欲深く、殺した維児(ややこ)を蹴って笑うなど非道の人物だった。その悪行により捕縛され、拷問の末に晒し首にされた。禍神になってからは、狙った獲物をいたぶりつくす厄介な存在。また打たれた強く再生力が高い。
九頭龍
級数:神話級
まだこの世に、人と地と妖(あやかし)しかいなかった頃、天より落ちし九頭龍が禍神となりて、天地をこがした。
このあまねく厄災を止めるべく、アマテラスオオミカミより命を受けたニニギノミコトは、三種の神器を持ちて禍神に挑み、九十と九日の長い戦いの後に、禍神の九つの首を打ち落とした。
こうして世界は太平をとりもどし、討たれた龍の頭(かぶら)達は海に落ち重なって島となし、後に九頭龍が頭(かぶら)で産まれし国としてー
九州と呼ばれるようになった。
ネグサレ
級数:民話級
全長約10m~20m。色は漆黒。形不定の浮遊妖。知能は低いと見られ、物・妖怪問わずに動くものに呪いにかける。また、その鬼技(おにわざ:超能力)とも言える呪いは、触れた物と強制的に式契約(しきけいやく:妖怪などと従属契約を結ぶ事)を結び、契約主から魂魄(こんぱく:万物構成の一つであり、汎用性に優れた元素)を吸い上げると言うもの。その契約は根式(こんしき:式術(しきじゅつ:文字状の回路を介して様々な効果を発現させる技術)の根底部分)から書き換えられており、未だ式を解くすべは見つかっていない。
突如としておんでこ屋敷(空を飛ぶ巨大なお化け屋敷で、妖怪漫画「九十九の満月」の舞台)に現れた神出鬼没の禍神で、赤鬼の娘や多くの妖怪に呪いをかけ、多大な被害をもたらした。
苗光様
等級:怪談級以上(推定)
月歌の始まりで登場した巨大な妖。
作物の育たない村を救うべく自ら人柱となった少女が、強大な霊媒体質とそれより遥かに強い思念によって村の守り神となったもの。
普段は異様に細長い女のような不気味な姿を取っているが、正体は土地そのものと一体化した不定型の肉塊。同時に村人にも寄生して全員を監視または復活する為の代替にしている。
村への愛は間違いなく本物であったが、妖と化してからは脱走・反抗する村人を殺したり窮地に陥れば躊躇なく人質にするなど守り神とは真逆の化け物と化してしまった。
彼女が思い浮かべる村人の笑顔も既に人の形を留めていない。
余談
- 級数の強さについて、実際に禍神と遭遇した子どもの黄鬼は、痛いほどよく理解した。
それで上記のマナー違反を振り返ると―
子どもの黄鬼「怪談級:ともさかろう、怖い。民話級:違ネエ、超怖い」
用心棒の妖怪「ん?今ほめた?」
子どもの黄鬼「ほめた!!」
寸前(ギリギリ)で回避するやり取りが行われた。
- 神話級禍神の九頭龍は、本作に登場する龍たちのご先祖様ともいえる存在。
現行で龍の末裔はしみじみとご先祖様を顧みて―
龍の娘「でかいなー私のご先祖様。」
用心棒の妖怪「所有権主張して土地代(ショバだい)を…」
龍の娘「とりません。」
旅人の人間「あくまで、いいつたえだけどね。」
- 作中では、同名の泣き女という妖怪が登場している。作者・小雨大豆によれば…
小雨「ほんとだ!?(;@皿@)マアシンセキカナ・・」との事(作者のTwitterより)。
ほんとだって…というのは作者の創作物でよくある事。
関連項目
無形妖(むけいよう)・・・禍神(まがつかみ)のように体を自在に変形出来る種類の妖怪。
概念妖(がいねんよう)・・・人などの概念が誕生基盤(ベース)の妖怪。誕生経緯が禍神と似ているが、安定した自我を持った妖怪。
戦国万妖(せんごくばんよう)・・・死んだ生物(人)の思い(命)が誕生基盤(ベース)にあり、体を自在に変化出来るが、個体により安定した自我を持って行動する。
類似事項
現実世界の伝承にもある、祟りを成す幽霊(例:日本三大怨霊)。生前に「怨み」があった生物・人間が化けた異形の存在。その「怨み」を晴らさんがために、永きに渡り世界へ様々な影響を及ぼす。
登場した経緯では、いずれも瀕死の重症を負っていた状態から変化していた)。その「怨み」による力で周囲の環境・生物を腐らせるなど、世界へ悪影響を及す暴走状態となり、不用意に関われば『死の呪い』を受けるため対処は困難を極める。
生前の「怨み」が強く濃く重く抱いていた生き物が、変貌した異形の怪物(