概要
「泣き女」(なきおんな)とは、葬式のときに雇われて号泣する女性である。
「泣女」(なきめ)や「泣き屋」(なきや)とも呼ばれる。
男性が行う「泣き男」というものもある。
葬儀で忙しくて悲しむ余裕もない遺族に代わって悲しみの意を表す役割であり、この風習は東アジアなどに見られる。また、W・B・イエイツによれば、アイルランドで葬式の時、英語で「Keen」ゲール語で「Caionie(クイーナ)」と呼ばれる「泣く」儀礼があり、農民がこの「弔い泣き」を行ったという。
西洋の妖精である「バンシー」も「泣き女」(Weeper)と訳される事があり、そちらのイラストも多く見られる。(バンシーは「妖精の女」という意味であるが、そのバリエーションで、「クーニアック(Caoineag 泣く者)」と呼ばれる名前で呼ばれるバンシーがいる 声だけしかわからないが)
泣き女は、日本でもその昔はその辺にあったらしい。後述する処の他、岩手県平泉 大阪府大阪笹山 岡山県久米町 長崎県壱岐 などで見られたそうである。
『日本民俗大辞典 下』250頁によれば、「沖縄県にはない」というが、『改訂版総合日本民俗語彙3巻』p1100によれば、八重山地方で「ナキィピトゥ」という泣き女がいたらしい。あとほかの地方で、ナキメ ナキテ、ナキババ、トムライババ、ナキバアサン 等といわれた。
泣き女は、
1兼業(地方によっては産婆が務めた)という半職業的なところと、
2死人の親戚とか近親の女性が行う儀礼、というパターンがある。
雇われて泣く場合、全国で共通して、五合泣き、一升泣き、二升泣き、三升泣きという、米(報酬)によるランクがある。
彼女たちは、泣きながら、死者の人生を語ったり、「お別れの言葉」(節回しがある)を唱えたりする。
仏式と併せて行われる場合、僧侶が読経している間中、泣き女が棺に手をかけて泣く(新潟県佐渡 相川)ところと読経の前に泣く(長崎県五島)ところとかがあった。
京都府与謝郡では、葬礼での女性の職が飯持ちとナキババのみであった。
泣く儀礼は、死者への哀悼表現、死霊を鎮めるために行うと考えられるが、死者をよみがえらせるための可能性もある。