黒白様
くろしろさま
小雨大豆の妖怪漫画「月歌の始まり」に登場する御神体の龍。厄災の権化などと恐れられている妖怪「龍」であり、それは大きな戦があった年に現れる「龍」を退治する様子が文献に残されるほど、世間での認知度・危険度が高い存在。
伊勢の国にある「黒白様」も、かつては討伐対象であった龍の一体。本編では既に仕留められ、跡地である「黒白の里」には亡骸の巨大な骨などが残り、心臓のような部位にあたる「龍胆(りゅうたん)」を里の人間たちは祀っている。
現行では、心臓のような部位にあたる「龍胆(りゅうたん)」だけになっても、長い年月を生き続けている黒白様。既に自発的な活動は出来ないが、存在しているだけで、周囲の環境へ様々な影響を及ぼしている。
顕著な影響として、莫大な魂魄(こんぱく)を宿している「龍胆(りゅうたん)」が残っている事。作中世界の勢力図・生態系を左右する大きな要素である魂魄(こんぱく)。これは汎用性に優れた万物構成の一つであり、自然界では生物の栄養素・成長に大きく作用する要素でもある(その他、詳細は『魂魄(九十九の満月)』を参照)。ゆえに、黒白様の「龍胆(りゅうたん)」は半永久的な天然資源といえる存在であり、その周囲は自然の恵みが彩り豊かな生命力に溢れている。
生きていた頃の「黒白様」を仕留めた一族の末裔が暮らす隠れ里「黒白の里」では、長い年月の試行錯誤・刻苦勉励の努めにより、陰陽術(式術・式神)を用いて黒白様の「龍胆(りゅうたん)」から恩恵を受ける術(すべ)を確立した。これにより、一年中豊作になる農業、それに釣られて寄り付く山の動物たちを狩猟、といった飢餓のない自給自足の生活を築きあげた。
だが、これは絶対に安全な生活ではなかった。なぜならば、この恩恵をもたらしてくれている存在が厄災の権化とも言われる「龍」だからだ。
莫大な影響力(エネルギー)を有するゆえに、今は安定していても、何かしらの作用で均衡(バランス)が崩れれば、多大な悪影響を及ぼす危険を常に帯びている(現代で例えれば、核原料物質を使った原子炉であり、安定供給を続けるための管理を怠れば炉心溶融(メルトダウン)が発生し、周囲へ致死級の放射能が拡散する危険を帯びているようなもの)。
また、この他にも危惧すべき懸念事項として、自発的な活動ができない龍が「生きている」こと。それは長い年月を、願う事が叶わない時間(とき)を過ごしている状態。それは純粋な心(ねがい)が、他の存在へ「怨み」に変わるだけの充分な理由(もんだい)があるのだった…。