曖昧さ回避
本稿では1.について解説する
概要
小雨大豆の妖怪漫画「九十九の満月」及び「月歌の始まり」での「鬼」は、妖怪でなく哺乳類オニ科の生物として登場する。
作中に登場する妖怪の定義を簡略すると“親をもたず無から産まれる存在”という神秘的な存在。
生物として親から産まれる「鬼」はこの定義に当てはまらず、鬼を妖怪扱いすると失礼に当たるので注意!
生態と歴史
人より圧倒的に筋量が優れ、産まれながらに鬼技(おにわざ:超能力)を使える。資質としては温厚な性格の者が多く、争いごとを避ける傾向にある。
また人間に比べ子どもができづらく、鬼技の暴走による死亡率の高い鬼達の繁殖力は人に大きく劣る。
そんな鬼達にとって双子は大きな意味を持つ。出生率は極めて極めて低いが、産まれた双鬼(そうき)の鬼は特殊な鬼技を持っていることが多く、双子の鬼が産まれる度に歴史は大きく動いてきたといわれている。
歴史上では、拳一つで城を割った力の強い鬼:萌黄太夫(もえぎだゆう)や優れた鬼技使い:金色丸(こがねまる)の鬼ヶ島といった伝説がある。
頭部の角には鬼技(おにわざ:超能力)が宿っており力の源。これを加工して薬にすると、誰でも鬼技を使えるため“幻の高需要商品”とされている。大昔から人間はその力を欲し鬼達を迫害してきた。
「九十九の満月」の本編から50年前に起きた、第二次 天応の乱という大きな戦争の発端となったのが、鬼の角だったとも言われている。
現在は法律が出来て「鬼」も安心して暮らせるようになったというが、金銭や鬼技目当てに角を狙う鬼狩(おにがり)へ手を染める者がおり、鬼達にとっては今も厳しい世の中。
「月歌の始まり」では、鬼と人間の種族間にある関係が前作「九十九の満月」よりも多く綴られており、かつ数百年前の時系列が舞台である事から某御伽話と関連する鬼事情も描写されている。
生物として産まれながらに力が強く鬼技(おにわざ:超能力)を有している事、生息分布が大きい民族「人間」と酷似した外見差異もあってか、かつての鬼は人にとって脅威であると同時に信仰の対象でもあった。
触らぬ神に祟りなし
鬼と神とは同義であり、お互いに距離をとる存在でもあった。だが、風潮へ影響されやすい古き時代背景と人間の欲深い面が悪く作用してか、いつしか迫害の対象へ墜とされた。
決定的になったのは「ある一派」の襲撃から「鬼」の地位は暴落。元から出世率の低さ、さらに鬼の角がいい薬になるという欲望から、多大に生息数が激減する事となる。
この民族浄化から逃れた鬼の中には、知らぬ間に賞金首へされて身柄を追われる者、心身へ深い傷を負うもなんとか生き延びる者など、各々で異なる障害を負う生涯を余儀なくされ、鬼にとって生きづらい時代であった。
だが、どの作品でも全ての人間が「鬼」を迫害・差別しておらず、特に情の篤い平民、器量のある者たちなどからは、外見が違ってようが他と変わりない縁故を結べる巡り合わせも描写されている。
そして、神秘的な誕生経緯・独自文化もあって外見差別意識が薄い異形の存在「妖怪(九十九神)」からは、有効な交友関係を築きやすい一面もあった。
身体的特徴と生体
角
「鬼」と言えばやっぱり角!
鬼によって数や形は様々だが、鬼技(おにわざ:超能力)の強さにはあまり関係しない。角は大きいほどカッコいいと言う鬼文化があり、角の発達が激しい青之助は鬼の中ではイケメン。
そして角が取れると「鬼」は死んでしまう。角を狙う鬼狩(おにがり)などから逃れるため、黄太のように髪を結って角を隠している鬼もいる。
固有色
肌の色だったり、髪の色だったり、角の色だったりと、様々な所に特定の色が付いて産まれる。
「鬼」の体色(カラー)によってある程度の性格・能力へ特徴があり、自然と鬼達は自分の色が好きになる傾向が多い。また、自分の固有色(パーソナルカラー)を名前に入れるという風習がある。
鬼状紋(きじょうもん)
「鬼」の肌に現れる帯状の痣。
消えない蒙古斑みたいなもので、鬼によって現れる箇所が異なる。身体にある角や固有色は家族で大きく異なる場合もあるが、鬼状紋は遺伝しやすいので、親族間では同じ場所に現れる事が多い。
つえー
「鬼」の見た目はさほど人間と変わらないが、筋力は人の倍以上ある。
だが黄太のように筋力が人並みの鬼もいる。「つえー」となる要因の一つに、妖怪のような妖質(ようしつ:汎用性に優れた架空の万物構成要素を変化させた物質および体組成)を持った身体構造もあるから。これが少なく生まれた鬼は筋力も人並みになってしまう模様。
鬼道
鬼自身が持つ魂魄(こんぱく:万物構成を成す一つであり、汎用性に優れた架空の元素および活動力)や妖質(ようしつ)を扱う分野で、強くなりたい鬼は鬼技(おにわざ:超能力)と同様に鬼道も鍛錬する。作中では、魂魄を使って放つ見えない刃:空爪(からづめ)や指先の妖質を鋭利に変化させて引っ搔く技:鋭爪(えいそう)を使う鬼が登場している。
鬼技(おにわざ)
「鬼」が産まれながらに使える超能力。
幼少期から鬼技が発現する模様。鬼技の暴走で怪我や死亡する事があるため、能力が発現した鬼は力の使用訓練を行う。鬼の場合は人と違い、鍛錬や感情の昂りで進化する事もあり、その伸びしろ・応用力は幅広い。
鬼文化
食文化
「鬼」の食べる物は人間と同じである他、妖怪料理(ようかいりょうり:架空の万物構成要素がふんだんに含まれた生きてる酔狂な料理)も食べる。人と違い妖質(ようしつ:汎用性に優れた架空の万物構成要素を変化させた物質および体組成)もある生体のお陰か、出店にある不衛生な妖怪料理を食べても、毒耐性が高いため食中毒を-力の弱い鬼でも-発症しない。また「鬼の秘伝飯」という絶品の料理文化がある。
鬼の衣装
「鬼」の服文化は人間とあまり変わらないが、帯は「鬼留め結び」という鬼特有の結び方-横できゅっと留める-をしている。
鬼の靴
産まれつき力が強い「鬼」は、草鞋(わらじ)だとすぐに擦り切れてしまうので、古来より動物のなめし革(丈夫な靴)を使っている。
「九十九の満月」・【その28】の靴屋にて、紅が「だいたい鬼が草鞋なんて欲しがるんじゃねぇよ。」と言っていのはこの事。
「月歌の始まり」でも、妖怪の街「大鬼太鼓妖怪洞」で買い物する場面で同様な事柄「鬼はわらじでなく靴を履く」へ触れている。
言葉は「人」の字ではなく「鬼」の字で話す。
「鬼」の言語文化には、例として「一人、二人」を「一鬼、二鬼」と、人の字を鬼の字へ変えて言葉にしている。つまり「人の振り見て我が振り直せ」は「鬼の振り見て我が振り直せ」になる。
「九十九の満月」では大昔の文化という事柄になっている。物語の始まり時点では、鬼と人の文化交流は盛んだったため、作中の鬼達は言葉をムリに「鬼」の字へ直さず使っている。
だが人間を嫌悪する鬼の場合は人の字を使わず、あえて大昔の鬼文化に習い、鬼の字を無理やり使う者もいる。これは現実世界にもあった戦時下の日本みたいに、敵性外国語だった英語などを無理やり日本語へ変えて話していた歴史と似ている。
次作「月歌の始まり」では、前作「九十九の満月」の昔話である時系列から、鬼に関連した話口・話題へ注目すると「人の字を鬼の字へ置換した言葉遣い」がされる日常会話をしている。
何に変えても生きて勝ち残ること!
「鬼」が危機的状況(ピンチ)に遭った際に見られる行動。
詳細は【何に変えても生きて勝ち残ること!】を参照。
灰の兄妹
人間に親を殺された孤児達が集まった血の繋がらない「鬼」の家族。
詳細は【灰の兄妹】を参照。
余談
- 【その3】で初めて鬼が登場。
- 【その18】で鬼が人間から迫害されてきた歴史を解説。
- 【その70】の会話内で、親から産まれる鬼も鬼子(おにご:妖怪と人間の親から産まれた半妖)も雪男も妖怪じゃない事が判明。
- 【その117】~【その144】のおしこさ(本編後にある補足説明)で、生態・文化など本格的な解説(※鬼以外の解説もあり)。
作中世界の「鬼」について、その本格的な説明をするまでに約4年かかっている!
連載当時は、鬼が哺乳類オニ科の動物である事など「今更!?」という感じになった。
関連サイト
公式サイトはこちらから →九十九の満月 - 小雨大豆 - ニコニコ静画 (マンガ)