曖昧さ回避
本稿では1.について解説する。
概要
小雨大豆の妖怪漫画「九十九の満月」及び「月歌の始まり」に登場する妖怪文化の一つ。
作中世界で自然発生する妖怪【九十九神】は、その生まれ方から親無しという共通の妖怪生(人生)を背負っている。この生態から、まだ未熟な妖を大人の妖が引き取り、生きる術(すべ)をつなぐ風習がある。
これは「綱親(つなおや)」や「絆親(きずなおや)」と呼ばれ、特に妖怪の街で見掛けやすい独自文化。
縁をつなぐ絆
小雨大豆の妖怪漫画で、妖怪【九十九神】は世界へ突然地から生まれる物の怪であり、その発生過程は実に奇怪な段階で誕生する。
人や動物などの生き物は【肉体】と【魂】で構成される。生き物が亡くなると【肉体】は生態系の糧になり、そして【魂】は土地(惑星)の中心部へ沈む。やがて大地の奥深くに在る龍脈(りゅうみゃく:大地にある魂の海流)に乗り、そして同様に流れ着いた他の【魂】と混ざり、新たな【魂】となって龍脈から漏れ出した時、様々な要因が重なって新たな【肉体】を得て生まれる存在が妖怪【九十九神】という大要。つまり他の生物とは異なり、親の存在無しに生まれる疑似生物ともいえる。
作中世界においてこの突如誕生する時点で保有する【魂】の質によって、妖怪により身体・知能の差異が表れる。そのため、老成した知識を備えたじいちゃんの妖怪として誕生する者や、子どもの魂を多く保有していたら見た目も中身もちびっ子の妖怪として誕生する者もありえる。
そして肉親を持たない妖怪背景から、幼稚な妖怪を熟達な妖怪が引き取り、生きる知恵を授ける本能的な文化を「綱親(つなおや)」や「絆親(きずなおや)」と呼ばれる。
だが「知性」を持つ生物でもある事から、生活状況によっては自己を優先し必ず在る習慣でもない自主的な行為。困窮した生活環境ならば、弱肉強食として弱者は強者へ淘汰される事もある(例・斑鳩の森)。逆に妖怪たちが営む町で、生活へ余裕ある社会が形成される場所では頻繁にみられる光景である(例・おんでこ屋敷、大鬼太鼓妖怪洞)。
以上の独自文化から、妖怪の生活圏では外見で差別や男尊女卑といった認識は低い傾向もみられる。
九十九の満月では、回想にて「綱親(つなおや)」となる馴れ初めが描かれた。それは子ども妖怪たちが生き抜くために盗みを働く様を諫める大人妖怪の出会い-後から思えば、これも何かの縁と思えるような邂逅-という一幕。
月歌の始まりでは、妖怪の誕生経緯から人間の性質も宿す妖たちの生活風景「外見は違えど、同族として家族や集団を築く営み」を眺め、これだけではない人の本質があると理解しつつも、外観に縛られず思い遣りの心で過ごす幸福を人間界にも求めたい対話が語られている。
どの作品でも親子で容姿・妖怪の系統に差異があれど、母性的な愛情を注ぐ光景が紡がれている。
その何気ない関係は、大した見返りも血の繋がりすら無くとも、愛情のみでつながった家族の絆であると物語っている。
備考・余談
本稿にある「他者を助ける行動」「身寄りの無い子どもを親代わりする大人の姿勢」は自然界でもみられ、これらを『利他的行動』とも呼ばれる。
参考動画
🎥ニワトリが温めていたのは…3匹の子猫!? - YouTube
🎥育児拒否された子ライオン 犬が母親代わりに - YouTube
これらは人間界でもみられ、代表例に保護やボランティアが挙げられる。これは『利他主義』や『人情』などと呼ぶことが出来る。
このように、いずれの世界でもみられる「自己だけでなく他へ助力する発想・姿勢」は、万物に在る理の一つかもしれませんね。
関連項目
魚人族・人魚族(ONEPIECE)・・・親子で外見が異なる独自文化(こちらは肉親がいるも、子孫の誕生には何れかの先祖へ由来する遺伝が色濃く表れる生態のため)、この代代つながれる生活様式から「容姿差別の認識が薄い」といった類似項のある種族および作品世界。