概要
小雨大豆の妖怪漫画「九十九の満月」及び「月歌の始まり」では、後述にある世界(万物)の構成から容易に「暴走」へ陥りやすい危険と隣り合わせな世界観も描写されている。
良好と危険が大きく密接した世界
作中世界では『魂魄(こんぱく)』という、汎用性(はんようせい:用途が限られておらず、幅広い用途に使用できる事)に優れた資源がある。これは日常や戦闘で多種多様に活用がされている。
人間や鬼などの生物、妖怪といった物の怪に宿る『魂魄』は、(オーラやチャクラ、魔力のような)活動力(生命エネルギー)としての役割を果たし、含有量が多い存在ほど強い生命力・術技(じゅつぎ)を有している。しかし汎用性が高すぎるため、力の使い方を誤ったり制御が外れる等があった場合に「暴走」の起きやすい性質も帯びている。
これら『魂魄(こんぱく)』の基盤がある影響もあり、これを変異させた『妖質(ようしつ)』で体を構成する物の怪「九十九神」や「禍神(まがつがみ)」などの存在は自己を強化しやすく、鬼や人間・妖怪が有する鬼技(おにわざ:超能力)の効力が増長されやすいといった、長所と短所も発生している。
その為、場合によっては単体で多大な影響力を発揮する事が可能であり、同時に箍(タガ)が外れ「暴走状態」のような事態になれば、甚大な被害へ波及する悪影響もありえる。
実際に妖怪漫画「九十九の満月」や「月歌の始まり」では、幾つもの「暴走」を引き起こす情勢が描かれている。
確認された「暴走」を大まかに分類し―
へ分け、更に詳細を以下で解説していく。
1.魂魄の枯渇症状
妖怪や鬼の体内にある魂魄(こんぱく:万物構成の一つであり、汎用性に優れた元素および活動力の一種)が、何かしらの要因で低下すると魂魄の枯渇症状になり暴走状態となる。
この症状へ陥ると意識の混濁に垂直眼振が表れ、更に悪化すると強い食欲欲求に苛まれて暴走してしまう。
2.不安定になった感情・自意識の影響
怒りなど不安定な強い感情で我を忘れ暴走してしまう。
この暴走状態になった妖怪や鬼などは鬼道(きどう:自身が持つ汎用性の高い活動力を扱う分野)や妖質変化(ようしつへんか:妖怪の変化能力) 、鬼技(おにわざ:超能力)が感情の赴くまま・無意識に暴走してしまう。
「九十九の満月」では―
- 【その37】では、防具と刀の九十九神がとある事情から怒りの感情に染まり「こんちくしょぉおお!!」と暴走。同僚達が鎖などで押さえつけるも強引に振り払ってしまう程の乱暴ぶり。この時は無茶苦茶に、自身の鬼技で地面から巨大な刀を生やし、妖質変化で防具のような仮面から棘が生える変貌をみせた。
- 【その86】では、ある鬼子(おにご:妖怪と人間の親から産まれた半妖)がとある事情で激昂?して暴走。この時対峙した世界最強の妖怪と互角に渡り合う戦闘力を発揮した。拳を交えただけで周囲の物が吹き飛び、空爪(からづめ:魂魄を使って放つ見えない刃)の連発といった大暴れとなり、大部屋が大損壊する被害をもたらしてもなお進撃は止まなかった。その後も凄まじい暴走っぷりで、幾重にも連なる結界壁を独力で割り食い止められなかった程。因みに感情に伴ってか体内の魂魄を集中させたためか、頭の両脇に生える角が硬質な形に妖質変化した。
次作「月歌の始まり」では、伊勢の国(三重県)にある隠里「黒白の里」で祀られている御神体の龍「黒白様」の影響による暴走が描写された。
これは肉体を失ってなお(重要な器官である)一部位で生き永らえてる龍を活用した生活による損益と利益を確立した術(ハイリスク・ハイリターン)による影響だった。殆どの生命活動を停止してるが、多大な魂魄(こんぱく:万物構成の一つであり、汎用性に優れた元素および活動力の一種)を有する資源の良い面と、元が大妖怪「龍」である影響力も残存しており最早「呪いの域」にある悪い面。これらを通常は先代から続けられている研鑽と研究で制御しつつ、栄養供給式術(えいようきょうきゅうシステム)により五穀豊穣の生活を100年も維持してきた。だが利用している存在が厄災の権化「龍」である事から、少しでも制御へ不具合などがあれば既に「呪い」となってる毒気を受けて暴走する危険を帯びている。
この暴走は「共振(きょうしん)」と言われ、御神体「黒白様」の世話役だけでなく、周囲の動物や妖怪も「呪い」へあてられ暴走状態となる。
これで間近に位置する「黒白の里」は幾度も被害を受けてきた。(現代で例えれば、核原料物質を使った原子炉であり、安定供給を続ける管理に災害などの障害で炉心溶融(メルトダウン)が発生し、周囲へ致死級の放射能が拡散する危険を帯びているようなもの)
だが、こういった災いも承知の上で実りある生活を続けていたが…。
3.制御不能になった鬼技
上記の1.2も含め妖怪や鬼が持つ鬼技(おにわざ:超能力)を酷使するなどで、命の危機に陥るほどの暴走をする場合(パターン)。
因みに鬼技の暴走は人間も同様に起こる。【その87】では、鬼技体質の幼子が怖い思いをした事から感情が不安定になり鬼技が暴走。近くへいた人間は無残な姿となって発見された…。
4.戦国万妖の共喰い
これは大昔の出来事。戦国万妖(せんごくばんよう:約600年前に誕生した最強の人造妖怪)は、不定形(全てが自分で、一人の自分の身体構造)ゆえ精神の消耗が激しく、誕生当時は精神崩壊からよく同士討ち(共喰い)が起きた。この出来事は〝戦国万妖の共喰い〟と言われている。「九十九の満月」の本編で現存している戦国万妖は精神が安定しているので心配無用とされている。
だったのだが…
【その116】で場合によっては強制的に暴走状態へ陥る事が判明。上記で述べた不定形の体は、普段だと頭(の自分)の意志で動かし、他の生き物と同じように自我も魂も一つだけという身体構造を維持している。しかし、とある事が起きると頭をとびこして体(の自分)が直接暴走し、攻撃を受けたと錯覚して意志から離れて勝手に暴走してしまう。その為、手加減ができずに敵味方問わず鏖(みなごろし)の状況となってしまう…。