概要
1983年に複数のメーカーから発売開始された、マイクロソフトとアスキー提唱の共通規格のパソコン。
後継規格のMSX2、MSX2+、MSXturboRを含めた総称として使われることも多い。
現在でこそ、例えばWindowsマシンであればどのメーカーのものでも同じソフトが動く(※)が、当時は各社のPCに互換性が無く、共通規格は画期的なものであった。
もっとも時代を先取りしすぎたのかメーカー側の思惑は外れた感が強いが、家庭用TVに接続可能で本体価格が安いこともあり、ホビー向けのPCとしては根強い人気があった。
ちなみに、かつてのソビエト連邦では軌道宇宙船「ミール」に搭載され宇宙に行ったことでも知られている。
販売が中止され市販ソフトが出なくなった後も、X68000同様熱心なユーザーが一定数残り、パソコン通信や雑誌投稿のゲーム、同人ソフト等でそれなりに盛り上がった時期もあった。
後に1chipMSXという形で復刻されたりもしている。
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※: ユーザーサイドからはあまり実感出来ないが、厳密にはWindows等のOSレベルでの互換性確保と、ハードウェア(アーキテクチャ)レベルでの統一規格は異なる。
ただしWindowsの場合、以前はIBM PC/ATの互換機、PC-9801、FM-TOWNS等の異なるハードウェアの差異を吸収していたが、現在ではPC/AT互換機だけが生き残り、結果的にはMSXに近い状態になっている。
(もっともPC/ATは設計が公開とは言え提唱された規格ではなく、互換機がIBMも阻止できないまま自然に普及しただけという違いはある)
いろいろ
CPU
CPUにはMSX2+まではZ80A 3.58MHz相当品、MSX turboRでは、その"R"の由来にもなった「R800」が使用されている(互換性確保のため従来のZ80も載っているが、同時使用は出来ない)。
R800とはアスキーが開発したZ80の上位互換CPUで、技術の一部は本家のZ80後継CPUの1つ「eZ80」に逆輸入され、ライセンス料も支払われている。
なお、R800には、乗算時にレジスタの組み合わせによっては正しい結果が出ないトホホな不具合がある。もっとも高集積された回路の不具合は現在でもよく見られ、既知のものはデータシートにも記載されている(昔より修正が簡単になったため、次ロットで修正されることが多い)。
また、R800の開発意図はなんと開発者が趣味で設計したからという凄い理由である。もはや凄いのか何なのかわからない領域である。現在の企業でそんな事やったら、いくら自らの技能とは言えど首が飛びそうな事が立派な製品となり、更に本家がR800から関連技術を買ってくれたのだから、考えてみればある意味羨ましい環境だったのかもしれない。
PanasonicのMSX2+(FS-A1FX,FS-A1WX,FS-A1WSX)では、ソフトウェアからZ80を6MHzの高速モードに切り替えることが出来る。ただし内蔵PSGの音程が変わってしまい別途周波数テーブルを用意する必要があるなど、個々のソフトが機種判別して対応する必要があった。
その他
MSX用拡張機器にハードディスクドライブも存在したのだが、昭和60年頃のMSX用フロッピーディスクドライブの価格ですら10万円近い定価(昭和60年版東芝製品価格表より)だったのに、それよりさらに高価なハードディスクドライブがどんな売れ行きだったかはお察しください。
現在はいわゆる同人パーツとしてSCSIボードやIDEインターフェイスボードが製作されており、現在の大容量ハードディスクを使うこともできるそうである。