概要
おおよそ平成元年から平成6年あたりが全盛期とされる、インターネット普及以前に使われていたコンピュータネットワーク。利用するには基本的にパソコン(および一部ワープロ等の端末)の専用のソフトウェアが必要であったが、一部システムではWebブラウザなどを使用可能にしたものもあった。
インターネットとの違いは「回線がサーバーと物理的につながっておらず、直接サーバーと電話回線等を使って接続する」ことにあった。
現在同様のことを行うことはソフトウェアとハードウェアをそろえる必要があり、困難が伴うと思われる。
サービス
電子掲示板(BBS)を中心にオンラインソフトやCG、音楽データ等の公開とダウンロード、メール、チャット等のサービスが提供された。
これらのサービスはインターネットの普及により、1990年代後半にほとんどの商用サービスが終了、最大手だったnifty(商社である日商岩井とハードのメーカーである富士通が合弁で設立、現在は富士通の連結子会社で現在はISP事業を主要な事業としている)も2006年にそのサービスを終了し、ほぼ活動が終了している。
分類
大まかに大手の商用ネットと個人経営の小規模な草の根BBSに分類できる。
各ネット(ホスト)間はインターネットと違い物理的に接続されておらず、その回線も脆弱(通信の主体は初期ではデジタル信号と音声信号の変換装置であり電話機の受信口と送信口に直接つなぐ音響カプラー、後にはデジタル信号とアナログ信号の変換装置であるモデムであり、後期になると56kというものもあったが、それでも現在のインターネットの回線とは100倍以上の差がある)のでフリーソフトウェアやデータ等はBBS間の転載、あるいは人の手を介して広まる文化を持っていた。
草の根BBSの内容は現在のインターネットの個人Webサイトのようにかなり個性的なものもありCAT-CGNET(CG描きの集まるホストとして人気を博したcat-netからCG部門が独立したもの)のようなイラスト中心のBBSなどもあった。
特に電波新聞社から出版されていた一般公開されている草の根BBSのアクセス先が記された「BBS電話帳」なるものがあり、1990年版では約800局はあったという。ただし、仲間内で使われていたホストは含まれない。
ソフトウェア
使用するソフトウェアは大きく分けて2種類。サーバー用の「電子掲示板やメールなどのシステムを運営するソフトウェア」と「サーバで行っている内容を利用するために個人側で利用するソフトウェア」である。
サーバー
特に草の根BBSの掲示板に使われていた専用のソフトは複数存在しており、フリーウェアの大多数は運用者などにより改造された物を用いていたり、あるいは自作のソフトウェアを使うユーザーもいた。当時流通していた汎用システムとしてはフリーのKTBBS(Turbo Bulletin Board System、Turbo BBSの改造であるが、ファイル転送形式の種類が豊富であるものの操作性の問題がある)、NETCOCK(なおX68000のコミュニティがこれで支えられていたとされる)、mmm(割と操作がややこしく、上級者向けとされる。2000年問題のため使われなくなったとされる)、VS(KTBBSの豪華版のような挙動を示すが、ソースは非公開のため改造できない)や、市販ソフトのBigModel(実用書などを出版しているナツメ社が著作権を持つプログラムで、高度な機能があるが維持管理が大変だったとされる)等があったた。
クライアント
通信は、末期にはFirstClass(サーバー・クライアント型のグループウェア、本来教育者のために使用されるチャット機能つきのMacintosh用電子メールサービスとして作られたソフト、現在も一応存在する)のような例外もあったが一般的に用いられたWTERM(設定は簡単だが遅くて低性能な通信ソフト)やKTX(アセンブラーのみで書かれた高速高機能な通信ソフト、ここでは大韓民国の韓国高速鉄道ではない)などは基本的にテキストベースで、CG等はダウンロードして回線を切ってからローカル(自分のPC)で展開して(基本的に圧縮され、テキストしか扱えないため特殊なエンコードがなされていることが多かった)からビューアーを起動し閲覧した。長い時間かけたダウンロードしたものが思っていたものと違って涙、ということもあった。
接続料とテレホ
主として電話回線で接続する。外国の一部ではアマチュア無線の周波数を使い運用していたものも存在していた。当時の日本においては従量課金制(使った時間に応じて料金が請求されるシステム)であったため、なるべく接続時間を減らすような自動巡回ツールが普及していたが、それでもアクティブユーザーだと電話代が月10万円を越えるようなケースもあった。
その為、じっくりこれを楽しみたい場合、深夜11時あたりから翌朝8時あたりまでに限りその時間帯は定額使い放題のサービステレホーダイ(テレホ)は必須であった。ちなみにホスト接続中は他のユーザーには話し中扱いとなる為、複数回線を持つホストも少なくはなかったが、その分維持費はかさむ。テレホーダイはインターネット時代において自動巡回プログラムが使いづらくなったためプロバイダーとの接続において利用されたが、接続の回線が常時接続となりそれが定額制となるまで需要は存在した。そのためテレホマンなるAAが存在している。
ただし、テレホーダイには「同一市内の指定した電話番号2つ」または「隣接区域の指定した電話番号2つ」という対象制限が存在し商用または特定少数のホストではなく、各地に存在する草の根BBSを中心に多数のホストを使う人間にはテレジョーズという「一定額を払うと22:00~8:00の市内及び市外通話が一定額以上で設定された金額分まで利用可能」というサービスが多く使われた。
そのほか、当時新電電と呼ばれたDDIや日本テレコムの市外通話割引サービスを活用する人間もいた。
当時のNTTや電話代は「みかか」と呼ばれ恐れられた(由来は日本語JISキーボードの「N」「T」「T」を見てみよう)。これはインターネット普及初期のダイアルアップ接続時代にも言える。
そしてインターネットへ
後のネット掲示板などで見られる、オフ会、炎上、荒らし等の文化の多くは、既にパソコン通信の時代にかなり出揃っていた。初期インターネットの住民はパソコン通信から流れてきた人も多い。オタク文化が地下に潜っていた時代の貴重な一次資料であり、90年代の作品や出来事などは当時の反応が分かり面白い。
しかしInternetArchiveを有するインターネットと違いログは散逸しており、またその絶対的人口の少なさゆえあまり研究はされていない。大半のログはレトロPCと共に倉庫の奥で朽ち果てるのを待っている状況であるが、一部のBBSでは全ログがネットで公開されているところもある。
似て非なるもの
電話回線を利用したものとしてはパソコン通信と一見似ているものに「キャプテンシステム」といったものがある。こちらはパソコンではなく専用の端末を用いてモニタと接続したものである。
正確には「ビデオテックス通信網」といい、接続には「166」から始まる番号が用いられた。
現在のインターネットに割と近いが家庭用端末だと有料コンテンツが多い為かそこまで普及しなかった。公衆端末だと原則的には全て無料。キャプテンシステム端末の操作自体が電話のテンキーとほぼ同じである。
関連タグ
セガサターン:サターンモデム(XBAND)と専用CD-ROMを利用した「パッドニフティ」でニフティサーブによるパソコン通信が出来たゲーム機。