概要
米カタパルト社がシステムを開発したゲーム機のネットワーク通信対戦システムであり、日本ではニフティサーブの日商岩井が提携した日本法人・カタパルトエンタテイメントが運営し、スーパーファミコンのネット通信対戦システムとしてサービスが開始した。
勘違いされやすいが、任天堂は周辺機器として認可しているが、任天堂が行っていたサービスではない。なお、米国ではSNESだけではなくGENESIS(メガドライブ)にもあった。
サービス時期は日本のインターネット黎明期と重なり、通信にはダイヤルアップ形式により電話代がかかる上に、マッチングにはプリペイドカード(ICカードタイプ)による課金が必須であった。
この事から敷居が高く一般的には広まらなかったが、かつて利用していたコアなユーザーも存在する。
XBANDモデム
紫色のカートリッジタイプの通信モデム。上部にカートリッジコネクタが存在し、ここにスーパーファミコン用のゲームカートリッジを装着して、対応タイトル同士でマッチングを行う。マッチングは同じ市外局番同士もしくは近い市外局番同士がマッチングされやすかったとの事。
現在の感覚からすると通信速度は遅く、ラグの発生もあったようだ。
通信にはインターネットを介するが、Webサイトの閲覧機能はなかった。
専用のプリペイドカードをこのモデムに挿入し、その度数(いわゆる利用料金)を消費することでサービスが利用できる仕組み。
実は、マッチング時にこのプリペイドカードを瞬間的に抜き差しする・XBAND本体の切り替えスイッチの操作といった行為を意図的に行うとプリペイドの度数が減らなくなってしまうという、運営にとっては致命的な不具合が存在した。
というのも、このプリペイドカードには度数が記録された薄型の半導体チップが付いており、XBAND本体に挿入すると接点に繋がり、電気的に度数の情報をやりとりする仕組みだったのである。現在のプリペイドカードのようにコードを入力して紐付けたアカウントに課金するものとは異なる。
これが衰退に繋がった一つの要因だとされている。また、プリペイドカード自体はコンビニ等で販売されていたもの、入手方法自体があまり認知されていなかった。
XBANDのシステムは後にセガサターンで引き継がれ(サターンモデム)、カタパルトエンタテイメント撤退後はセガがシステムを引き継いでセガサターンのネットワークシステムとして使われた。
これで得たノウハウをセガはISAOネット構築に生かし、ドリームキャストのネット通信システムへと繋がっていくのである。
なおカートリッジコネクタ部分はスーパーファミコン本体の内側にあるものとは異なり、剥き出しとなっている。
そのため端子形状は同じだが差し込み口の形状が異なり普通はスーパーファミコン本体には挿せないようになっている北米版のSNES用ソフトのカートリッジを、このXBANDモデムにならば挿すことが可能となっている。
XBANDモデムに装着したソフトは通信なしで普通に遊ぶこともでき、これにより海外版ソフトを遊ぶための単純な変換アダプタとしての使用法も副次的に生まれている。
総評
いわゆる日本の家庭用ゲーム機のネット通信対戦システムの黎明期のものであったが、敷居の高さを払拭するには常時接続のブロードバンド時代まで待たねばならなかった。
現在ではニンテンドーネットワーク、プレイステーションネットワーク等、家庭用ゲーム機向けのネットワーク通信システムが確立している。
XBANDは時代が早かったと言ってしまえばそれまでだが、インターネット通信の可能性を見出したものであるのは確かである。
現在
公式サービスこそ終了しているものの、北米SNES用ソフト(※)を日本のスーパーファミコンでプレイするための変換アダプタとして需要があるため、現在でも中古ではそれなりの価格で販売している店もる。
VOIPアダプタを利用して代替サーバーを立てることで一部タイトルでの対戦、メッセージ機能が利用できるようになった(外部リンク)。
なおXBAND本体を設定段階でジョイルブレイクしているため、カードの度数は消費しない。
※…変換アダプタとして使う場合、日米以外のSNESソフトは映像方式(PAL等)が異なり、NTSC圏にあるSFCもしくは米SNESでは使えないので注意。
関連タグ
サテラビュー - 同時期に存在した任天堂のゲーム機放送受信システム。こちらは衛星データ放送を利用したもの。
ピョコタン - かつてXBANDユーザーだった。