しかも手足を使わずにコントロールできるこのマシーンを使う私を、ナディアと同じように見下すとは!つくづく女というものは、御し難いな!
カタログスペック
頭頂高 | 37.5m |
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本体重量 | 184.6t |
全備重量 | 263.7t |
ジェネレーター出力 | 31,650kW |
装甲材質 | チタン合金ハイセラミック複合材 |
スラスター総推力 | 1,054,850kg |
概要
カロッゾ・ロナがクロスボーン・バンガード総帥であるマイッツァー・ロナにさえ極秘裏に、側近であるジレ・クリューガー以下の限られたスタッフのみで開発した、大型モビルアーマー。型式番号XMA-01。
対艦・対MS戦の双方において、一対多数での殲滅戦を想定しての強大かつ“最高効率”を求めた、他に類を見ない超絶的な空間戦闘能力を有する。
ロナ家(ブッホ・コンツェルン)にとっては「入り婿」であるカロッゾが、自分を受け入れ最高に勝る環境を与えてくれたマイッツァーへと返すための最大の誠意であると同時に、自分を捨てた妻ナディア・ロナ――ひいてはロナ家そのものに対する怨念返しを具現化させたサイコ・マシーンである。
このカロッゾの心理を現して、「花」という自然界が作り上げた形状を持ちながら、360度空間に対して機械的に最高の戦闘能力を発揮するという矛盾を、ラフレシア本体が束ねる125本のテンタクラーロッド(以下、Tロッド)によって解決している。
花弁に見えるユニットは、Tロッドの支持機能(1基あたり25本を支持)を果たしつつ、多方向に配された大推力スラスター、上下端に大型メガ粒子砲をそれぞれ装備しており、かつそれぞれが極めて広い可動域を有するマルチバインダーである。
長距離巡行時にはこれら五枚の花弁型バインダーをたたんで推力を一方向に収束する事で爆発的な加速力を生じさせ、MSと相対する機動戦闘では各スラスターが多角的に偏向することで、巨体に見合わない運動性能を見せる。劇中ではこの機能を遺憾なく発揮し、「巨体には不利であろう」とF91とビギナ・ギナが判断して入り込んだコロニー商業施設残骸の狭所を、しかしMS以上の速度で駆け抜け、逆に二機を追い込んでいる。
形状的には明らかな死角を有するが、125本のTロッドは攻撃端末であるとともに、1本1本がカメラ・アイをも有する多機能センサーでもあるため、これらがあたかも有機体の如く稼働することで、攻防に渡って本体を完全にカバーする。この“完全視野”に上記の高機動を加味すると、そもそも本機に直撃を与える事自体が至難の業であり、加えて高出力のIフィールド・ビームバリアと重厚な装甲による防御力に対しては、ビーム・実弾のいずれを用いたとしても有効打まで達しない。
スペック上では「無敵」と評しても過言ではないモビルアーマーではあるが、唯一にして最大の欠陥は機動力・情報処理ともに人間の制御可能限界を完全に超えてしまっている点である。
125本のフレキシブル・Tロッドは、理論上間違いなく死角をゼロ化するが、それらから与えられ続けるセンサー情報を処理するには、人体の脳構造では絶対的に処理速度が不足しており、更には多少のオート機能を用いたとしても、各々を的確に敵MSの迎撃に向かわせるなど到底無理な課題である。言わばこれまでに解説した「無敵」の戦闘能力はただの理論にして机上論に過ぎない。
しかしカロッゾ・ロナは、自身へと徹底的な強化処理を施し、事実上の生体ユニットとなることで欠陥を克服。ラフレシア・プロジェクトの最終成果として自ら戦闘宙域へと赴き、月の地球連邦中央政府から派遣された艦隊を、瞬く間に撃滅した。
「無敵」のサイコ・マシーンと、それを十全に機能させるために人間を超えた生体ユニットが一体化したラフレシアは、例えニュータイプが駆るガンダム・タイプが敵対したとしても、“本来ならば”敗北する可能性などゼロに等しいはずであった。
しかしカロッゾは、自分を見下したナディア・ロナの現身(うつしみ)であるベラ・ロナを屈服させるために、わざとビギナ・ギナを撃墜せず行動不能状態でラフレシア本体へと引き寄せ、あまつさえ一時的に自らコクピットを離れた上、更にはベラとの会話へと大きく意識を割くという愚を犯す。
結果、至近距離で生じたビギナ・ギナ残骸の核爆発によって機体に多大なダメージを負ってしまう。
加えてわずかな時間“目”を離したF91がM.E.P.E.を発動したために、視覚を含めた全センサーを混乱させられ、これによって生体ユニットの情報処理もまた混乱し、焦り、ラフレシアの機動から精彩さが失われていった。
――…もしも。
もしも、本機の生体ユニットが全てにおいて機械のように正確に対処できたのであれば――…
カロッゾがその程度の、柔軟性を持たないシステムしか発想できない凡庸な人間であったのならば、彼は仮面を被る事無く、ナディアとの小さな家庭と狭い研究室を行き来するだけで、生涯を終えられたのかも知れない。
ラフレシア・プロジェクト
カロッゾが大学の研究院時代からテーマとし、ブッホ・コンツェルンの多大な支援の下で完成に至った大規模プロジェクト。
人類が内包している可能性は、人間自身が信じている以上に大きく花開くものである、という理想を反映して、ラフレシアから引用された(スペルは変えてある、とカロッゾは語っている)。
宇宙世紀0100年代に入ったころには、フラナガン・ブーン博士が発見・実用化したサイコミュを稼働させるための『感応波』は、既に科学的解析、および実証が進んでおり、人体の脳からニュートリノに近い性質を持つ「スウェッセム」と名付けられた粒子が発され、体液酵素「スウェッセム・セル」が、『意志』を物理的な人体へと伝導させている事が判明していた。この理論は、大学の研究テーマとして受け入れられるレベルにまで浸透しており、かつてはニュータイプという超能力者のような人々だけが有していた不可思議な直感を、一般人がシステマチックに利用するための研究もそれなりの「分野」となった。
ロナ家に入る前のカロッゾ(旧姓ビゲンゾン)は、このスウェッセム因子を総合的にバイオ・コンピュータと接続して、人間の感情や記憶を読み取り保存させる、あるいは意志力に対する補助を行わせる事で、「人類が次なる銀河に辿り着くための手段の模索」というロマンチシズムに満ちたテーマを取り扱っていた。
ナディア・ロナは、この頃のカロッゾの馬鹿々々しいロマンチシズムと実利の無いインテリジェンスに少女そのものの恋をし、結婚を決めている。
ナディアと結婚したことで本プロジェクトはブッホから多大な支援を受け、実直さと才能を兼ね備えたカロッゾは、この支援への恩義を返すためにロナ家の思想に染まっていったが、元来ロナ家のコスモ貴族主義をアナクロと断じていたナディアの目には、カロッゾが「マイッツァーの狗」に成り下がったようにしか見えなかった。このため二人の間に娘(ベラ)が生まれる頃には、夫婦間には明らかな亀裂が入っており、最終的にナディアは4歳のベラを連れてシオ・フェアチャイルドと駆け落ちする道を選んだのだった。
本来であればロナ家に在るための拠り所となってくれるはずのナディアに見限られ、しかもマイッツァーへの恩義を返さなければならないという強迫観念に駆られたカロッゾは、プロジェクトの方向性そのものを変容させる事になる。
結果、ラフレシア・プロジェクトはコスモ貴族主義が掲げる、「人類の永続的な繁栄のためには、人間という種をしかるべき個体数にまで粛清整理する必要がある」という、完全に矛盾した答えの無い理想――かつてギレン・ザビが掲げ、必然として散ったそれを、“効率的に”達成するための方策として完成する。
なお劇中においてカロッゾは、この矛盾に満ちたマイッツァーの理想と、それを解りつつ体現する道しか見いだせなかった鉄仮面としての姿を「人類の10分の9を抹殺しろと命令されれば、こうもなろう」と口にしている。
ネオ・サイコミュ
サイコミュが『感応波』というオカルト的観測しかできなかったが故に、投薬や脅迫催眠というメンタル手法でしか達成できなかった過去の強化人間施術(カロッゾは「麻酔みたいなもの」と評した)とは決定的に異なり、スウェッセム因子という明白な対象を、外科的手法を含めて増強。これをバイオ・コンピュータと接続して、フィールド・ワークさせることで、人間の意志力をシステマチックに強化する、生体とエレクトロニクスの両面からのアプローチによる総合技術。
宇宙世紀0090年代にはアナハイム・エレクトロニクス社ですら、インテンション・オートマチックという人型機械のコントロール“程度”しか達せられなかった完全思考制御を、遥かに膨大な情報量に対してより確実に処理する事が可能となっている。
カロッゾが被るプラチナ製の鉄仮面は、ラフレシアのインターフェースと直結するためのコネクタを有しており、光ケーブルのような高密度情報伝達素子によって物理的に接続する事で、「無敵」の欠陥を克服する仕様となっている。
極論になるが、ラフレシア・プロジェクトを要約すれば「カロッゾ・ロナが「無敵」になるための技術体系」であり、ナディアに見限られた“男性”たる彼の自己顕示欲を満たすためのシステム以外の何物でもない。
バグ
ラフレシア・プロジェクトの付帯物。
ラフレシアに必要不可欠な、攻撃端末兼センサーユニットであるテンタクラーロッドを研究する過程において開発された、自動殺戮機械。
ただただ効率を求める“科学者”としてのカロッゾが、コスモ貴族主義の実現のために不可欠となると判断し、マイッツァーに無許可で(許可を得ようとすれば却下されると解っていた)開発を進め、実用化させた。
なおカロッゾは、フロンティアⅠの30万の人間を対象に「最終運用テスト」を行い、これが成功した暁には、マイッツァーを隠居させる計画を立てていた。加えて、このような無人機械を開発しておきながら尚、ラフレシアという自分の手足の完成に拘ったという幾重もの矛盾は、カロッゾがどこまでも一人の人間であるという証拠なのだが、彼は最期までそれに気付けなかった。
立体物
- ガシャポン「SDガンダムフルカラー」シリーズにラインナップ
- プラモデル「Gジェネシリーズ~ボーナスキットキャンペーン~」のキャンペーン製品としてラインナップ。
- 1/100MGガンダムF91のスタンドとしてラインナップ。
- FG GUNDAM CONVAGEシリーズにラインナップ。