曖昧さ回避
- 鉄製の仮面、及びそれを被った人物。
- 歴史上において、17世紀フランスにおいて実在したある囚人のことを指す。
- 1.から転じて無表情、または表情の変化が乏しい人を指す比喩表現。
- 日産自動車から1981年より生産・販売されていた6代目スカイライン(R30)の、1983年から1985年まで生産されていた後期型RSのフロントフェイスを指しての通称。
- RPG『テイルズオブアライズ』の主人公アルフェンが自身の記憶を取り戻すまでの名前。
本記事では主に2.について解説する。
概要
その男は、フランス・ブルボン朝最盛期のルイ14世治世下の人物であった。
ルイ14世の大臣からピネローロ監獄の監獄長サン・マールに預けられた囚人だが、その顔は常にベールで覆われ、本人がそれを外そうとしたら殺すよう周囲は命令されていたため、誰も素顔は知らなかった。
しかし、衣食に関しては非常に優遇され、ギターを弾く自由も与えられていたという。
また、その世話は監獄長らが自ら行い、陸軍大臣や軍司令官も彼に対しては恭しい態度で臨んだと記録される。
バスティーユ牢獄に収監されていた1703年11月19日に急死。
医師の診察も仮面を被ったまま行われ、死亡者台帳にも『無名』と記載され、そして彼の所有物は全て破棄された。
彼は4ヶ所の牢獄で約34年間の獄中生活を過ごしたが、かなり長距離の移送に際しても素顔が民衆の目に決して触れないように配慮されたという。
マスメディアが未発達の当時、民衆誰もが知っている人物というのは非常に限られているため、色々な憶測が飛び交った。
様々な有力者がその正体の候補に挙がっているが、ルイ14世の双子ではないかという説が有名。
これらのことから興味を持たれ、文学作品などのフィクションの題材になることが多い。創作物において鉄仮面をかぶった人物が描かれる場合、ほぼ例外なくその異様性を際だたせた怪人物として演出される。
以下がその例。
- アレクサンドル・デュマ著『ダルタニャン物語』の登場人物。
- 『スケバン刑事Ⅱ 少女鉄仮面伝説』の主人公。2代目麻宮サキこと五代陽子(演:南野陽子)。
- 『機動戦士ガンダムF91』の「鉄仮面」ことカロッゾ・ロナ。
- 『マジンガーZ』において、Dr.ヘルやあしゅら男爵の部下で戦闘員的存在。鉄仮面軍団とも。
- 『ソウルハッカーズ2』に登場するキャラクター。→鉄仮面(ソウルハッカーズ2)
なお、形状が鉄仮面を連想させることから、下記のものにも使われている。
- 国鉄101系 / 103系電車の俗称。
- 南海電鉄(南海)50000系の俗称。鉄人28号とも。→ラピート
- 名古屋鉄道(名鉄)6000系9~10次車、6500系1~5次車、6800系1~2次車の俗称。6500系6次車、6800系3次車以降は大幅なモデルチェンジが行われ「金魚鉢」と呼ばれる。
- 日産自動車 6代目(R30型)スカイライン後期型RSの俗称。
- 日本ハムファイターズで、1993年から北海道に移転する2003年まで使われていたペットマークに描かれていた鉄兜・鉄鎧を着たキャラクターの通称。
また、RPGでは防具の一種として登場することもある(ドラゴンクエストシリーズのてっかめんなど)。
正体?
近年の研究では、マザラン枢機卿の会計係であったユスターシュ・ドゥージェという人物が有力視されている。
カリフォルニア大学サンタバーバラ校のポール・ソニーノ教授によれば、マザランは当時イギリス王室から莫大な金を騙し取っており、ドゥージェはそのことに勘付いてしまったがために、口封じで投獄されたのだという。
また、着用していたのは鉄仮面ではなくベルベット製のベールであり、また常時着用していたわけでもなかったようである。
顔を隠す囚人という怪しさが文人の興味をそそり、フィクションで面白おかしく脚色されるうちに、史実と混同されていったものと思われる。