- 英国の魔術師アレイスター・クロウリーに「法の書」の知識を授けた高次知性体。本記事で詳しく解説する。
- 1を基にしたとある魔術の禁書目録の登場キャラ。20世紀最高の魔術師アレイスター=クロウリーに「法の書」の知識を授けた高次知性体。本記事で詳しく解説する。
- 1を基にした女神転生に登場する仲魔。種族は幻魔。
史実・魔術史におけるエイワス
英国の魔術師アレイスター・クロウリーがエジプトのカイロでホルス召喚の儀式を行った際に、「声」により「法の書」を授けた高次元生命体。
クロウリーはエイワスを自身の「聖守護天使」とみなした。同時に「秘密の首領(シークレットチーフ)」「地球外生命体」「ホール・パアル・クラアト(ホルス)の使者」でもある。
聖守護天使
近代西洋魔術結社『黄金の夜明け団』マグレガー・メイザースが翻訳して広めた「術士アブラメリンの聖なる魔術の書」において聖守護天使という概念が登場する。
古来よりオカルト・宗教の世界では、人間が内包する神聖的な一面(例えば「高次の自己(ハイヤーセルフ)」「ジーニアス」「アウゴエイデス」等)が提唱されていた。
聖守護天使はそれらとほぼ同じ概念で、個々人にとって唯一無二の霊的存在、神聖面の一欠片にして高次元との媒介者である。異論はあれど『黄金の夜明け団』では聖守護天使をハイヤーセルフあるいはジーニアスとして扱っていた。
新旧問わず魔術師(オカルティスト)と呼ばれる者達は各々の聖守護天使の知識と対話し、「真の意志」を見出す事を目標に掲げている。
クロウリーはエイワスをこの聖守護天使だと確信していたが、後年になるとクロウリーの見解には変遷が見られ、自己とは独立した別個の存在として扱われるようになった。
クロウリーは聖守護天使エイワスを「秘密の首領(シークレットチーフ)」(アストラル界から人類を導く究極の高次元存在の総称)とも見做しており、その全体像が完全に固まっていない。
なおトマス・アクィナスが成立させた「守護天使」とはまた別の概念である。
法の書
1904年、クロウリーとその妻ローズ・ケリーの旅行の際に行われた空気の精シルフの召喚作業で、ローズに謎の高次元存在が憑依した。その名も「エイワス」(Aiwass,Aiwaz)。現代の米国の魔術師は「アイワス」または「アイウォシュ」と発音する。
この時に聞いた「声」の内容を不審に思ったクロウリーは、三日かけてさらなる啓示を得ることに成功し、霊界通信の内容を書き留めている。
Had! The manifestation of Nuit.
ハド!ヌイトの顕現よ。
The unveiling of the company of heaven.
天上の一団がヴェールを上げる。
Every man and every woman is a star.
全ての男女は星である。
Every number is infinite; there is no difference.
全ての数は無限。そこには如何なる差異も無し。
Help me, o warrior lord of Thebes, in my unveiling before the Children of men!
我を助けよ、おおテーベの戦将なる君主よ、人の子らの前でヴェールを脱ぐ事を!
Be thou Hadit, my secret centre, my heart & my tongue!
我が秘密の中枢たる汝 ハディートよ、我が心臓そして我が舌となれ!
Behold! it is revealed by Aiwass the minister of Hoor-paar-kraat.
見よ! それはホール・パール・クラアトに仕えるエイワスによりて啓示された。
...
~法の書(リベル・エル・ヴェル・レギス)より抜粋~
エイワスの知識(法の書)はクロウリーの新興宗教「テレマ」の土台となり、テレマの神秘体系において、エイワスからの啓示があった1904年は新たな時代「ホルスの時代(アイオーン)」の幕開けと考えられた。この時よりクロウリーは「新時代の預言者」を自称し始めた。
それまでの旧時代はキリスト教の奴隷であるオシリスの時代(アイオーン)、原始宗教が蔓延るイシスの時代(アイオーン)等と呼ぶ。
エイワスとの接触は、クロウリーの人生を左右する運命の分岐点であった。
神秘の世界で霊的存在との接触が重要な事は歴史が証明している。かつてエリファス・レヴィが魔術師アポロニウスの霊と接触したり、「黄金の夜明け団」ウィリアム・ウィン・ウェストコットが秘密の首領アンナ・シュプレンゲルに結社設立許可を貰ったように(ただし後者は…)。
コロンゾン、30ものアエティール、アブ・ウル・ディズ、アマラントラ、ラム。クロウリーに影響を与えた数ある知性体の中でも特に重要な存在なのは間違いない。
マートのアイオーン
クロウリーの思想に影響を受けた人物は数多く存在するが、中にはそれが高じて新たなアイオーンを宣言した人物もいる。
その内の一人フラター・エイカドは「銀の星」やクロウリー色に染まった「東方聖堂騎士団」(O.T.O.)の一員、ブリティッシュコロンビア州におけるグランドマスターで、一時期はクロウリーの魔術的な「息子」となるくらい認められていたが後に関係は悪化し、最終的にクロウリーの時代を否定している。
エイカドは、まるでエイワスそのものが邪悪な存在であるかのように非難し、ホルスのアイオーンは到来せずに「マートのアイオーン」が到来した事を1948年に宣言。エイカドはクロウリーの価値観を自分の提唱した新たなアイオーンに置き換えたのである。
当然クロウリー派のセレマイトはこれを受容しなかったようだが、意外にもマートのアイオーンはその後の魔術業界に潮流が残った。
クロウリー系の魔術師にしてマート魔術の創始者ソロール・ネマの「ホルス/マートのアイオーン」も存在する。もっとも、こちらの見解では上記とは別にホルスと次なるマートのアイオーンが重なって(二重に)進行している。
セトのアイオーン
悪魔崇拝者にして米国の元陸軍マイケル・アキノ中佐、彼によるとクロウリーに法の書をもたらした聖守護天使エイワスは「セト」と同一存在であるらしい。
1975年6月21日、アキノは「悪魔教会」(アントン・ラヴェイ)と袂を分かった後、自らの指針を仰ぐべくサタンの召喚を実行したのだが、実際にアキノの前に現れたのはサタンの姿を装った死と破壊の神「セト」であった。
セトはアキノに新たな時代「セトのアイオーン」の到来を宣告。これを受けてアキノは「Temple of Set」(セトの寺院)という新興団体を設立した。
新時代の起源は一九〇四年まで遡ることができる。
セトはこの時、アレイスター・クロウリーの守護天使アイワスに化け、カイロにいた彼の前に現れた。そしてクロウリーを「太陽神ホルスの永劫(アイオーン)」の幕開けの布告者と宣言した。
一九六六年、ラヴィはサタンの永劫を導いた。それは耽溺を象徴する中間段階である。その後にセトの永劫が訪れ、教化をもたらすのだ。
...
~「黒魔術のアメリカ」(邦訳版P204)~
上記の経緯はアキノにより「セトの寺院」の聖典『The Book of Coming Forth by Night』(夜に現れしことの書)にまとめられた。
セトによって新たな時代の指導者に選ばれたアキノは、自身をクロウリーとその悲運の弟子ジャック・パーソンズの正当後継者「第二の獣(セカンドビースト)」と称している。
出典
「法の書」
「英国魔術結社の興亡」
「霊視と幻聴」
「アレイスター・クロウリーの魔術日記」
「黄金の夜明け」
「現代魔術の源流 黄金の夜明け団入門」
「図解 クトゥルフ神話」
「図解 近代魔術」
「クロウリーと甦る秘神」
「黒魔術のアメリカ-人はなぜ悪魔を信じるのか」
「封印された黒聖書(アポクリファ)の真実」
とある魔術の禁書目録のエイワス
声優は宮本充
名前の初出は7巻、登場は19巻。アニメでの登場は3期17話
魔術師アレイスター=クロウリーに「法の書」の知識を授けた高次元存在。聖守護天使、シークレットチーフの真なる者、地球外生命体、ドラゴンなど様々な称号で呼ばれている。ただし、本人曰くドラゴンのほうが本質により近いらしい。
史実通り、1904年アフリカ旅行中にクロウリーの最初の妻ローズ=ケリーに憑依、彼女の口述から「法の書」が執筆されている。
同書はテレマ僧院、そしてテレマ僧院を科学に擬態させた「学園都市」を始めとする魔術師クロウリーの科学思想の土台となった。
クロウリー曰く、十字教が支配する「オシリスの時代(アイオーン)」は「法の書」が世に投下された1904年に崩壊し、現在は人類が真なる目覚めを果たす新たな時代「ホルスの時代(アイオーン)」を迎えているらしい。
テレマと同じ「93」の数価を背負う聖守護天使エイワスの召喚は、クロウリーにとって最大の転換点でもあった。
魔術(運命)に反旗を翻したクロウリーにとって、エイワスがもたらした反十字教的な魔術思想は魅力的で、その思想は作中時代に至るまでのクロウリーの足跡にも残っている。
恐らく「法の書」以外で最も有名なのが「トート・タロット」だろう。これはクロウリーが晩年に編纂した物で、十字教の誕生からハルマゲドンの到来、すなわちエイワスの接触があった1904年を起点に次の時代を謳歌する配列が組み込まれている。
作中では「ドラゴン」のコードネームで匿われる謎の存在として初登場。ヒューズ=カザキリ(風斬氷華)を製造ラインにして、この世界に再び現出。「オシリスのアイオーン」の力に囚われたアクセラレータを叩きのめした。
その後、なんと携帯電話らしきものを使ってアレイスターと通話している。
科学の世界(純粋なる物理法則の世界)
新約18巻で『魔神』オティヌスにより、エイワスが最下層の世界「純粋なる物理法則の世界」に佇む天使ということが明かされている。
オティヌスは新約9巻で「科学の世界」と呼んでいた。科学的とは、クロウリーにとって「霊的・物理的問わず物事の順序を筋道立てて説明できること」、つまり純粋なる物理法則こそがクロウリーの定義する科学となっている。
あらゆる魔術的な異世界(重なった位相)の一番下の世界に、テレマの聖守護天使である筈のエイワスがいる理由は未だ不明。
何度も書くようだが、本作の学園都市はテレマ僧院を科学に擬態させた巨大機関である。
強さ
詳細不明。新約18巻オティヌス曰く「理論値で魔神に対抗出来る」とか。
少なくとも素の状態で上条当麻の「中の人」(成長途中の不完全な状態?)を戦闘開始早々潰せる程度には強い。
新約19巻コロンゾン戦の描写によると、どうやら地球から離れると力が解放されていくらしい。地球外生命体説とは一体…。
性格
見た目も価値観も超然としているが「全ての命は幸せになるための努力を怠ってはならない」という考えを持っており、命ある者への態度はやや暑苦しく意外とフランクな事もある。
予め身籠っていたローズに憑依し、クロウリーの娘「ニュイ=マ=アサヌール=ヘカテ=サッポー=イザベル=リリス」の生命力を位相に退避させ、救ったのもエイワスだった。この時の彼のセリフにその熱が感じ取れるのではないだろうか。
作者はあとがきにて「エイワスは善人ではない」と言っていたが、これが何かの布石でないことを祈りたい。主にクロウリーと読者のメンタルのために。
対の様な立ち位置の存在の大悪魔コロンゾンに対してはかなり口が悪い。
毎回汚い物や酷い物に例えて呼び、事あるごとに貶して詰るなど、徹底的に蔑んでいる。