「第二次大解散。真の意味での、極道の解体です」
CV・モデル:長谷川博己
概要
『龍が如く8』に登場する横浜・伊勢佐木異人町を拠点とする極道組織「横浜星龍会」の若頭。
服役中の三代目会長・高部守に代わり組を仕切っている。
ハワイの宗教団体「パレカナ」の代表を務めるブライス・フェアチャイルドとはビジネスパートナー。
桐生一馬が表舞台から姿を消すに至った経緯を知っているようで、暴露系Vtuber・多々良ひそかの動画に沢城丈と共に登場し、「桐生一馬の死はでっち上げだった」、「警察の一部も捏造に加担していた」と語っている。
また、動画で横浜星龍会の解散も宣言するなどの不穏な動きが見られるが……?
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以下、重大なネタバレ注意
「ヤクザの未来? そんなものがあるわけないだろう ゴミはゴミとして粛々と処分されていくんだ」
本作における桐生側のラスボス。
実は彼の父親は荒川真澄。
つまり、彼は春日一番の異母兄弟。海老名姓は養子として引き取られた先のものである。
人物
春日一行が突然星龍会本部へ殴り込んで来た際にも顔色一つ変えずに対応するなど、常に冷静沈着に物事を進めるやり手。
しかし、裏では部下を滅多刺しにして殺害する、自身を裏切った沢城を動けなくなるまで痛めつけるなどヤクザらしい凶暴性も秘めている。
桐生一行に自身の計画を甲高い笑い声を上げながら喜々として語るなど、どこかサイコパス染みた一面も見せるが、彼の根底にはヤクザという存在そのものへの強い憎悪が渦巻いている。
劇中の動向
彼の母親は、荒川によって壊滅に追い込まれた東城会系三次団体「氷川興産」の組長の娘・氷川百合子。
百合子は当時氷川興産の組員だった荒川に惚れていた。
組長もまた優秀な荒川を気に入り、自分の娘と荒川に婚姻を迫っていた。荒川にその気は無かったものの、親が白と言えば黒いものでも白になる極道の世界で組長の意向に正面から背く訳にもいかず、百合子と関係を持っていた。
しかし、既に心に決めた女性との間に子供がいた荒川はその縁談を断る。面子を潰された組長は激怒し、荒川を半殺しにした上にプロの殺し屋に茜の殺害を依頼した。
荒川は茜を救うため単身氷川の事務所に乗り込み、その場にいた組員を全滅させ、丸腰の組長に対し荒川は茜の殺害依頼を撤回するよう迫るが、組長は荒川の拷問に屈することなく、そのまま死亡した。
一方その頃、百合子もまた荒川との間に子供を身籠っていた。
しかし妊娠が発覚する前に組長死亡により組が潰れ、彼女を家族と慕っていた組員たちがあっさりと他の組に鞍替えして去って行ったことで、彼女は一人で正孝を育てることに。
その後元々体が弱かったこともあって大病を患い、正孝が中学生の頃に静かに息を引き取る。
生まれた時から父親がおらず、若くして母親を看取った正孝は、ヤクザの息子として過酷な人生を歩むこととなった。
こうした経緯から、自分の人生を滅茶苦茶にしたヤクザという存在自体への怒り、そして何より、実の父親に利用され、愛する男に裏切られ、家族と嘯く組員たちに見捨てられ命を落とした母親の無念は遺された自分が晴らさなければならないという考えに囚われるようになる。
そして彼は、この世の全てのヤクザに復讐するという不可能とも思える計画を、最初から破綻している事を自覚した上で企てた。
こうして生きる目的を見つけた彼は最初、警察の官僚としてヤクザの根絶を目指すが、東城会と近江連合の同時解散に先手を打たれ、ヤクザたちは散り散りになってしまう。しかもその混乱の中でよりにもよって親の仇である荒川真澄が死んでしまったことで、彼への復讐が永遠に果たせなくなった。
一度は望みを絶たれたがまだ諦めてはおらず、今度は東城会と近江連合亡き後の大看板である星龍会を利用してヤクザを一箇所に集めることを計画する。
星龍会に入るとそこで金稼ぎの才能を発揮し、盃を受けてから数年で若頭にまで出世。会長の高部を嵌めて警察に逮捕させて星龍会の実権を握った。
そして、「極道の社会復帰」という甘い言葉で、元暴五年条項に苦しんでいた元ヤクザたちを続々と集める。
(ただ、これは「ヤクザを逃がさない」という意識が先行しすぎた結果考え無しに行なっていたようで、「集めたはいいが、その後どうするかを考えていなかった」と決戦時に明かしている)
その後、同じヤクザへの復讐という目的で繋がっていた三田村英二がブライスの核廃棄物処理ビジネスの話を持ってくると、星龍会の組員たちをネレ島へ送って「外部からの機密性が保たれ、逃れることのできない空間で元暴たちに死ぬまで苦痛を与え続ける」ことを思いつき、これ幸いとその話に乗る。
英二の情報を使い沢城を出所させると、星龍会に迎え入れた(これには、まだヤクザになって日が浅くネームバリューに乏しい海老名が自分に「同時解散による抗争で名を馳せた沢城を従えた男」という肩書きや箔を付けるという目的があった)。
沢城も当初は彼の言う事を信用していたが、きな臭さを感じ取り「目的は第二次大解散ではない」事を把握。その上で大解散の計画を海老名から奪取する機会を狙っていたが、沢城の目論みを察していた海老名はあえて彼を泳がせていた。
物語終盤、元東城会本部での会議の際に言ったヤクザを正当化する発言が癪に触ったからか若頭補佐の楢崎雅史を憂さ晴らしに殺害。
更にそのまま彼の遺体に火を放ち、本部ごと全焼させる。
『龍が如く』シリーズの象徴であった東城会のかつての拠点が炎と共に消えていく瞬間である。
その後、価値のなくなった沢城を拷問、人質にしてミレニアムタワーで桐生一行を待ち受ける。
自身のこれまでの経緯を語ると、ヤクザという存在の罪全てを引き受けるという桐生とその仲間たちと激突する。
激闘の末、桐生以外の仲間に足を付かせ、桐生と決着をつけるため殴り合うが、敗北。
自身が生きている限り極道を人類のために利用する未来は変わらないと主張し、桐生に自身を殺すよう懇願するが、「どんなクズでも生きなければ罪を償うことはできない、だから彼らを殺さないでやってほしい」という桐生の涙ながらの説得と謝罪を受けると、返す言葉を失った。
その後の動向は描かれていないが、潔く警察に逮捕された模様。戦いが終わった後、趙天佑は、「計画が無謀だったとしても、後戻りできず、誰かに止めてもらいたかったのかもしれない」と思い返している。
戦闘
「綺麗事並べても所詮ヤクザ…ただのクズの集まりだろう!!」
「その程度でケジメがつくとは思っていないでしょうねぇ?」
徒手空拳がメインであり、追いつめられると日本刀を使っての戦闘に切り替わる。病気で衰えている桐生を含め、ソンヒ、趙、紗栄子、ナンバら5人と対等と戦う実力を有している。
なお、戦闘開始時に「横浜星龍会若頭」といった肩書きが表示されないが、これは星龍会がこの時点で解散している為であると考えられる。
戦闘時には上裸となり、無間獄卒の刺青を彫っているのが確認できる(ちなみに、『龍が如く』シリーズの刺青デザインを担当しているKazuaki Kitamura氏のSNSにこれと類似したものが存在する)。
ヤクザが嫌いな彼が何故刺青をしているのか不明だが、獄卒は地獄にて亡者を様々な責め苦で苦しめる鬼。極道たちを地獄のような場所で死ぬまで苦しめようとする復讐の鬼には相応しい刺青と言えよう。
戦闘では高火力な格闘技を繰り出してくる他、非常に瞬発力が高いため適正レベルでは味方2人が行動するごとに海老名の順が回ってくることもザラである。おまけに能力上昇効果が強めの今作において、『修羅の笑み』で能力上昇効果を全て打ち消した上で挑発を付与するなど、確実にプレイヤー側の行動を制限してくる。
刀を持ち出した2段目はストーリーの終幕に相応しい凶悪な技のオンパレード。早い行動順の中で新システムである移動を無視した距離無視高威力の全体攻撃『宵桜』で立て直しを強制してくる他、距離無視のランダム対象6連攻撃『五月雨斬り』は運が悪ければ体力最大でも削り切られることもある。適正レベル以下では回復がすぐに間に合わなくなり、適正レベル以上でも油断すれば一気に全滅することも多い。
加えて麻痺を付与する『臓腑突き』や、RPGにおけるボスの凶悪な行動筆頭である体力回復&能力低下解消の『血煙舞い』も交えてくるため、後手に回ればすぐにジリ貧となる。
評価
「極道を憎む者」という、これまで居そうでいなかったキャラクター。
本シリーズにおいてスター扱いされてきた桐生を始めとする極道たちへのアンチテーゼとも言える。
一方で桐生との関わりが薄く、義兄弟である春日のラスボスにするべきではという声も多い(実際、この意見について制作陣もインタビュー記事にて触れている)が、極道以上に荒川やその関係者への憎悪に支配されている彼が春日の言葉に耳を貸すか怪しいことを考えると、極道の代表格とも言える桐生が極道の被害者である海老名と戦って憎しみを受け止める展開になるのはある意味必然であると言える。
また、極道を憎んでいるにもかかわらず、立派な刺青がある事や、使ってくる技名が任侠あふれるものになっていたりする点に疑問を感じるユーザーも少なくない。
さらに、「極道によって傷つき、人生を滅茶苦茶にされた被害者」という割には、「母親を亡くした」以外に回想シーンがほとんどないため、少々説得力に欠けるという意見もある。
その上、前作『7』の実質的なラスボスで、一人で大人数を相手に異常な強さを見せた天童陽介は有名な元プロボクサーという設定がある為その強さには納得がいくが、海老名にはそのような設定がなく、なぜあんなに強い人間なのかも触れられなかった。(一応元警察なので警察学校で学んだ可能性がある)
そのため、極道に振り回された海老名の過去やその苦悩などが今後の『ONLINE』の補完エピソードで明らかになることを望む声も多い。
余談
- 荒川真斗との比較
前作でラスボスの真斗と海老名は父親が荒川真澄という共通している点があるが、真斗は父親を都合の良い道具と見下しているのに対して、海老名は母親を見殺しにしたクズ野郎と恨んでいた。
さらに真斗はヤクザ組長の息子というレッテルがあったのに対して、海老名はヤクザの息子であるという事を周囲は知らない。
真斗はヤクザを道具として利用するつもりで残すつもりだったが、海老名はヤクザを生かしておいても害しか及ばさないゴミとしか思っていない。
実際、部下である楢崎を殺害した際に「ゴミは粛々と処分されていくんだ」と軽蔑している。
決戦も対照的であり、真斗は春日とサシだったのに対して海老名は桐生だけでなく彼の仲間たちとも戦っている。
さらに末路も対照的なもので、真斗は春日に説得されて改心し、警察に自首しようとした際に真斗の狂信者に刺殺されたのに対し、海老名は桐生に自分を殺すように頼んだが、桐生に説得されて逮捕された。
- 春日一番との比較
春日と海老名はどちらも父親が荒川真澄という共通点がある。
ただ、春日はハローワークで元暴に親身になって相談に乗っていたのに対して、海老名は殺しても問題のないゴミと思っている。さらに海老名は父親である荒川を上記の通り他のヤクザと同じようにゴミ同然に思っているのに対して春日は男の中の男と信奉している。
また、海老名は春日の事を「カルト宗教の信者と変わらない」、「反吐が出る」と語っている。
さらに前職も対照的で、下っ端ヤクザの春日に対し海老名は警察官僚という社会のエリートだった。
- 発売前時点での正体の考察
本作発売前には海老名こそが後に東京都知事になる男に戸籍を奪われた『本物の青木遼』であるという考察もされており、根拠として以下の二つが挙げられていた。
①海老名の年齢
龍が如くスタジオ代表である横山昌義氏の「出演者と登場人物の年齢はほぼ一致させている」との発言から、海老名は演者の長谷川氏と同じ1977年生まれとなり、あの男と同い年だと考えられる。
戸籍を奪うなら生まれた月日が近い人物の方が都合がよく、海老名はターゲットにされた可能性が高い。
②海老名がヤクザになった理由
戸籍を奪われた者には裏社会で生きる以外の選択肢がなく、ヤクザを憎む海老名もまたヤクザであることの説明がつく。
そして、「青木遼」に成り代わっていた真斗が殺された事で戸籍を奪われたことへの復讐が不可能になり、裏社会全体や真斗の実父である沢城に怒りの矛先を変えたのではないか。
しかし、本編で上記の経歴が明かされたためこの考察は外れる事となり、『本物の青木遼』がどうなったのかは未だ謎のままである。
- 3人目の『最後の敵』
海老名は桐生の最後の敵とされるキャラクターだが、「桐生一馬の最後の敵」と銘打たれたキャラクターはあと2人いる。
そのためユーザーからは「何度目の最後だ」と突っ込まれることも。
(ストーリーとしては海老名が現時点での最後の敵であることは確かではあったが)
- まさかのネタバレ
発売前のプロモーションビデオで、上半身を脱いだ姿と刺青が写った映像が挿入されている。
近年の龍が如くスタジオの作品はネタバレを特に徹底している傾向にあるのだが、これは少し意外である。
関連動画
The End of Denial(戦闘曲)
真の関連タグ
三田村英二…彼と同じく本作に登場するヤクザに人生を狂わされた人物で、海老名とは協力関係にあったが、自身のしてきた事のツケを受けてそれを実感し、孤立したが彼は海老名の腹違いの兄弟に説得されて警察に自首している。