久米颯太
くめそうた
『龍が如く7』に登場するNPO法人「ブリーチジャパン」横浜支部長で ブリーチジャパンの歪んだ正義の体現者。
元は人集めの為に雇ったサクラの女性を目当てにブリーチジャパンに入った青年であったが、徐々に組織の理念と創設者である青木遼に心酔していく。
七三分けにした黒髪の青年で、支部長に選ばれるだけあってブリーチジャパンの中でも信念が強く、高潔な理想達成の為に働く実直な男。
だがその本性はブリーチジャパンの理念を絶対視し、社会的弱者も多いグレーゾーンを汚物のように見下す傲慢な排外主義者。
また、亡くなった風俗店のオーナーに対して不謹慎極まりない言葉で冒涜するなど、モラルも欠如している。
そして、目的のためになら何をやってもいいと思っているのか、飲食店と称して営業する風俗店に対して食育という大義名分でヤンキーをけしかけるなど目的に対して矛盾した手段に平然とでる。
挙句には同志が先に暴力行為に及ぼうとしたのにも拘らずそれを防ぎ凄んだ主人公・春日一番に対して「暴力で市民の声を封じる事ができると思い込んでいる」という特大ブーメラン発言をする始末である。
その上舌戦も弱く、前述の通り主観も歪み切っているためかあっさりとに春日に論破されている。おまけに肉弾戦も一応ボス故にややしぶといだけで大して強くない。
この体たらくからか、ブリーチジャパン創設者にして現東京都知事・青木遼からも「何も知らない青二才」「ブリーチジャパンと民自党公認の後ろ盾が無ければ、ただの小僧が当選するはずがない」と言われるなど捨て駒的な扱いを受けるような物言いもされている。
歪んだ正義を振りかざし、分が悪くなると苦しい屁理屈を言いだし、しまいには逃げ出すという取るに足らない小物であるが、組織への忠誠心は本物であり、春日に発言を正論で何度も論破された挙句、逆にグレーゾーン認定を受けても、代表の小笠原に目の前で「無知」だと言われようとも(駒と言われているも同然)、後ろ盾がヤクザだとうっすら気づいていようと、一切自分の行動を省みず、春日たちに立ち向かうその姿勢はもはや狂信者である。
また、現代表・小笠原肇によればブリーチジャパンは「学も無く努力もしないが自己顕示欲は強い若者」に「世間から批判されづらく、それでいて声をあげるだけで何かをした気分になれる活動」を与えてやることで瞬く間に勢力を広げたとのことだが、それらを合わせて考えるならば、久米はサクラにつられるという不純な動機から始まり、自分が認められたかのように感じる活動に酔って自意識だけが肥大していった若者だということになる。
そんな久米だが、物語後半に民自党幹事長となった青木の後押しにより、前幹事長・荻久保豊の選挙区でもある神奈川2区から衆議院議員選挙に出馬し、対立候補の春日に一度論戦で押され、逃げ出してしまう醜態も見せるも青木の力もあってか持ち直し、見事初当選を果たすが…。
本作の重大なネタバレが含まれます
青木が裏で行っていた悪事が明るみに出た事で、自分が駒として利用されていた事にようやく気付き、新宿駅のコインロッカー前で春日と問答していた彼をナイフで刺した。
それは春日に負けたことで自暴自棄になった青木が、自殺を思いとどまり、出頭することを決意した瞬間のことであった…。
「ひどいじゃないですか…私は信じてたのに…
青木さんの正義は漂白された真っ白なものだと信じてたのに…
─────でも、まだ間に合う…、
本当の正義は…、勝つんです…‼︎」
と、不気味な予言を残し、その場からふらふらと立ち去る。
普段の威勢が失われた弱々しく震えた声は、拠り所を失い放心しているようにも、強い怒りを込めているようにも聞こえる。
その後の顛末は不明だったが、続編の『8』ではそのまま呆気なく警察に捕まり、無期懲役未満の判決を受け、現在服役中であることが判明した。
殺人以外にも余罪があるため、長い間塀の中で過ごす結果になったのは因果応報でしかない。
同情の余地もない悪役であることは確かだが、自業自得とは言え彼もまた青木にいいように利用されるだけされた被害者であり、そして久米に殺害された青木の末路もまた、大勢の人々を手にかけ、かつ人を捨て駒のように扱い続けてきたが故の報いであるという見方もできる。
しかし、最期には自らの行いを省みて真っ当に罪を償おうとした青木とは対照的に、久米は最後の最後まで自分のこれまでの行いを正義と信じて疑わず、ついには自らが直接人を手に掛けてしまう。
まさに、前作に当たる外伝作品のキャッチフレーズ「正義という名の凶器」を体言した存在とも言える。
しかし、今まで信頼してきた相手に裏切られ、騙されていたと気付き、自ら汚して来たその手で青木を刺した久米だが、もし良心の呵責から警察に自首しに行ったとしたら、久米にとっての『最後のケジメ=自分自身の漂白』だったのかも知れない。
- 『8』発売以前は「青木の逃亡先を正確に突き止めていること」や「本来本人が待機しているべき神奈川2区を離れ、新宿に来ていること」などの疑問が残ったことから、「誰かの差し金」・「実は久米に変装した別人の犯行」といった可能性がファンの間で考察されていた。しかし8で逮捕されたことが明らかになり、これらの考察は杞憂に終わった。ちなみに上記の疑問は未だ謎のままである。詳しくは【残された謎】を参照。
- 久米を演じた平川氏はかつて、伝説のアニメ作品に登場するあの男を担当していた。そのためか、あの壮絶なクライマックスを連想するプレイヤーも多かった模様(こちらは殺害される側だが)。
- 久米役の平川氏は当時、突発性難聴により収録が困難になり、療養の為に活動を休止していた事から、久米の逮捕と言う形で続投が見送られた可能性がある(声優にとっての難聴は致命的であり、周りの声や音は勿論、自身の声も聞こえづらくなるので、十分な演技が出来なくなるだろう。また、龍8の制作後に龍7外伝を制作したとの話によると、龍8の開発期間が長かった事から、少なくとも久米を登場させる予定はあったのかも知れない)。
- 『8』冒頭で春日が、真斗と久米を思い出す中での「そうとは割り切れない」には、解釈次第では、あの時に久米も説得出来たら、彼も罪を償おうと動かせたかも知れないと言う思い込められているのでは無いかと考察もある(真斗が久米に刺されても、春日はその場で久米を責めず、真斗を優先したから)。
- 『7』には久米と下の名前の読みが同じキャラが存在している。こちらは変態めいているが真っ当な倫理観や道徳心を持つドMという、久米とは見事に真逆な立ち位置のキャラ付けをされている。
よくよく考えると、彼の最後の行動には不可解な点が多い。
青木の逃亡先を正確に突き止めていること、本来本人が待機しているべき神奈川2区を離れ、新宿に来ていること、議員の大事な時期であるにもかかわらず単独で行動していること等である。
久米の犯行の動機については、次の3つの根拠が挙げられる。
- ①いつ、どうやって場所を突き止めた?
一応、青木が逃亡する数時間前に「青木遼に殺人教唆容疑」というテロップが民自党の選挙会場のモニターを通じてテレビで流れ、春日の味方であるニック・尾形による青木の裏の顔の暴露もあったため、真相を問い質しに新宿まで急行してきたととれなくもない。
列車や高速道路を使用すれば、神奈川2区に該当する横浜から新宿までは1時間程度で移動が可能だが、それでも2人のいる神室町のコインロッカーまで突き止めるまでには無理がある。
つまり、あの瞬間だけ時系列がおかしな事になっており、シナリオの制作ミスである可能性がある。
- ②あの久米颯太は"本当に"本物なのか?
青木が沢城を始末する為に石尾田礼二と、外から雇った足立のそっくりさんを送り込み、仕掛けられた爆弾から辛くも春日達と共に脱出し(石尾田はその後死亡…)、自身を捨て駒にした青木への報復の為に天童になりすまし、春日達が戦ってる間に行方をくらました後に、自身の報復を完遂する為にコインロッカーまで移動したのなら、
真斗を刺したあの久米は、実はミラーフェイスではないか?
…と言う考察がある(『龍8』で逮捕されたと言うのは、あくまで春日が思い出す中での台詞の為、あの久米が本物であるのは、この時点ではまだ確定出来ない)。
ただ、仮にこの考察が正しかった場合、なぜミラーフェイスが変装する人物に久米を選んだのかという新たな疑問も生まれる。
久米はあのとき衆議院議員に当選したばかりで、選挙速報が流れていていたともなれば、この日にはテレビで何度も彼の顔が報道されていただろうし、メディアからも引っ張りだこになっていた可能性も大いにある(青木の逮捕状の件もあるので尚更である)。
この状況で久米に変装するのは、どう考えても目立ちすぎる。青木に近づきやすい人物になりすましたとも考えられるが、彼が油断した隙をついて、死角から刺殺するという手順を踏む上で、果たしてその必要があったのだろうか?
そして何より、青木が殺されたとき、久米が神奈川2区に留まっていたり、神室町以外の場所で目撃されていたりというアリバイとしてこの上ない情報が出回ってしまえば、「何者かが久米に変装して犯行を行った」ということが簡単にバレてしまい、そうなると真っ先に疑われるのは当然ミラーフェイス自身。どう考えてもリスクに見合ったメリットがないのである。
そもそも天童と久米では体格の差が大き過ぎるため、ミラーフェイスと言えど、変装するには非常に無理がある。
はたまた、今後はミラーフェイスそのものが物語の今後の脅威となる伏線になるのかも知れない。
- ③真犯人は誰なのか?
セガ公式サイト内の龍7外伝のトピックスにて、大道寺一派については、『「昭和のフィクサー」である故・大道寺稔の資金や権力を密かに受け継ぎ、政財界の裏に根深く巣食う者たち。』
と紹介されている事から、政治家だけでなく、財界の人間も輩出されている事になり、
「ニック・尾形も大道寺一派の幹部ではないか?」
…と言う考察がある。
そして終盤に花輪の口から、青木が一派にとって排除すべき対象である事、同じ大道寺一派出身である民自党幹事長の荻久保豊の失脚により、彼の無念を晴らすべく、尾形は青木=真斗に逮捕状のテロップをモニターに表示する様にネット中継をハッキングしたのなら、
ニック・尾形こそが、結果的に久米に真斗を殺させた張本人となる。
それなのにも関わらず、荒川親子のお別れ会には、一瞬だが出席してる様子が見られる。
『龍8』には登場しなかったが、
自身の身内の無念を晴らす為に、友人の身内に手を出した事や、
久米が2人のいるコインロッカーに来たのは想定外であった事を後悔しているかも知れないなど、今後の時系列的に彼の未来は明るくは無いと思われるが、どう解釈するかはプレイヤー次第と言った所である。