概要
Windows xp(ウィンドウズ エックスピー)とはMicrosoftが2001年に発表したWindowsシリーズのOS。Windows2000/WindowsMeの後継。
「xp」は商標名で、正式なバージョンはWindows NT Ver5.1。
以前は、業務用であるWindowsNTと家庭用であるWindows9xが並行開発・販売される状態が続いていたが、Microsoftにとっては大きな負担であった。そもそも、9x系は構造上脆弱であり、限界が見え始めていた。特にMeはシステムリソース(NT系におけるデスクトップヒープに相当)が不足しやすくクラッシュが多発し、98SEの改良バージョンでありながら最も不安定なWindowsという烙印を押されていた。
そこでMicrosoftは、かつてNT系と9x系の統合を試みたWindows2000をベースに、Meの機能を取り込む形で拡張されたのがWindowsXPである。このOSの成功により、NT系と9x系の統合がなされ、マイクロソフトは長年の懸案であった 9x系の終息をなすことができた。
本バージョンの登場時期は、ブロードバンドインターネットの普及期に当たる。そのため、インターネットを通じてコンピュータウイルスなどの悪意のあるソフトウェアや、不正アクセスもかつてない規模で蔓延し、その多くがWindows固有の脆弱性を標的にしていた。当時のWindowsにはセキュリティ対策ソフトの導入は必須と言われ、「Macにはコンピュータウイルスがほとんど無い」ことを理由にMacintoshに乗り換える法人や個人ユーザーが出てくる始末だった、とされるが、実はMicrosoftにとってこれ自体は大した問題ではなかった。
Microsoftがセキュリティ対策に追われていたのは事実だが、この頃、問題となっていたのはOS自体に存在するセキュリティホールよりも、データ実行の脆弱性であった。要するに、データファイルのフリをして侵入したウィルスが、CPUに破壊的命令を出してしまう、というものだった。実際、「昔の」Macintoshはこれに強かった。と言うのも、大多数を占めるMicrosoft製OSとそれを動かすx86系CPUと、MacOS(Classic MacOS)と68k系及びPowerPCのCPUとでは、メモリ構成が全く異なったためである。ところが、Macはこの当時、PowePCとx86系とでクロック周波数で大きく水を開けられていたことから、マーケティング上の不利を理由にIntel製x86に移行してしまった為、その脆弱性もWindowsと共有してしまった。それどころか、Intelはx86を近い将来にクローズするソリューションと位置づけていたため、この対策を怠っていた。一方、AMDはx86_64を実装するK8(初代Optelon、Athlon64FX、Athlon64)は、この対策を充実させていようとした時期だったのである。
Windows XPが思いの外長居してしまった最大の理由は、32bitマイクロプロセッサの限界のためである。メインメモリは最大4GB、ストレージは1ファイルあたり4TBまでしか管理できなかったが、2004年頃になると、ミドルクラスのPCでも2GB程度のメインメモリをと1TB程度のHDDを標準搭載するようになり、先が見え始めていたのである。逆に、この壁を超えられない限り、OSをメジャーアップデートする意味は薄かった。
Microsoftはこのため、Intelに対して、速やかな64bitマイクロアーキテクチャの実用化を要求していたが、Intelが開発していた複数の64bitマイクロアーキテクチャは、どれもいくつかの致命的な問題を抱えており、実用段階に進んでいなかった。
そんな中、AMDがx86-64(後のx64、AMD64)を実装したAthlon64を圧倒的なコストパフォーマンスで発売。MicrosoftはIntelに対しIntelが開発していた64bitマイクロアーキテクチャによる開発の中止を通告し、x86-64に一本化されることになった。これにより、ようやくMicrosoftのOSの開発は本格的に動き出す。
とはいえ、2007年にようやく登場した後継のWindowsVistaも、高機能なGPUを要求し当時のローエンドのパソコンでは満足に動かなかったため、Windows7が登場するまでXPが実に10年近くもの間パソコンOSの事実上の主力として君臨。当時、延長サポートの対象外だったHomeEdition・MediaCenterEditionも延長サポートの対象とされ、XPのサポートは2014年4月9日まで継続された。一般消費者のPC向けOSのサポートが12年半も続くのは極めて異例のことであり、Windowsの中では3番目に長いサポート期間となった(1番長いのはWindows1.0で16年、2番目に長いのはWindows2.0で14年)。
Microsoftの公式サポート終了後も、スタンドアローン(ネットに接続しない)で使用されていることがある。但し、例えネット接続していなくとも、USBメモリ経由などであっという間に感染するので注意(これはウィルス防護の仕組みが後発のOSよりも根本的に劣るのが大きな理由)。用途によっては、Linuxをインストールすることでマシン自体を再利用することもできる(必要なデータは事前に別のマシンへ必ず移しておくこと)。
XPは「経験、体験」を意味する eXPerience に由来する。開発時のコードネームは Whistler(ウィスラー)と呼ばれていた。
Pixivでは「OSたん」、「OS娘」、「擬人化」タグなどと一緒に付けられることが多い。
種類
主に以下の3種類が日本国内では広く使われた。
Home Edition
一般家庭での使用を前提とした物で基本的な機能を使用可能。イメージカラーはグリーン。
Professional
上級ユーザーあるいはビジネスでの利用を想定したHome Editionの上位に位置するタイプ。ファイルシステムの暗号化など高度なセキュリティ機能を備えている他、リモートデスクトップのホスト機能などを備える。イメージカラーはブルー。
Embedded
組み込み用途向けエディション。専用の構築ツールを利用することで必要なOSの機能をカスタマイズでき、搭載製品の構成や用途に応じたOSパッケージの作成が可能。なお通常のパソコンにインストールすることも出来ないわけではないが、非常に手間がかかる上、入手も難しいので個人用パソコンで使うことはまず無い。但しOSのファイルサイズは非常に小さい。
Home、Professionalのサポートは既に終了しているが、こちらEmbeddedはサポートが継続されているのでアーケードゲームの基板、POSシステム、ワンマン運転用運賃表示モニターなどで今も広く使われている。
旧OSからのアップグレード
WindowsXPのアップグレード対象は、WindowsNT4.0・Windows98(SE含む)・WindowsMe・Windows2000である。
但し、HomeEditionへは98・Meからしか出来ない。
また、Windows95は対象外なのでセットアップすら起動せず、CDから起動する必要があるが、パッケージによっては95からセットアップを起動し、新規インストール出来るものもある。
98・Meからアップグレードした場合、アンインストールして旧OSに戻すことが出来る。
アップグレード版を使用して新規インストールする場合、途中でアップグレード認証が必要なので、上記のアップグレード対象のCD(通常版・アップグレード版問わず)を用意する必要がある。
なお、上記の対象OS以外にも、WindowsNT3.51・Windows95のCDも使える。アップグレード認証とはなんだったのか…。
ちなみにアップグレード認証には、Windows95CompanionCDやWindows98SecondEditionUpdateCDなどといった格安CDも使用できる。
新OSへのアップグレード
WindowsXPからは、WindowsVista※1・Windows7※1・Windows8※2にアップグレードすることが出来る。
但し、7へは新規インストールしか出来ないので注意。
9x系からXPアップグレードした環境をVista以降にアップグレードすると、9x系の環境は削除されるので注意(システムファイルを強制的に9x系非対応のNTFSに変換されるため)。
どのOSにアップグレードしてもアンインストールしてXPに戻すことは出来ないので注意。
※1…SP2を適用する必要がある。
※2…SP3を適用する必要がある。
余談
実は64bit版(Windows XP Professional x64 Edition)もあったが、OEMとDSP版だけで一般向けには販売されず、当時のパソコンの性能では32bit版でもこと足りたことと、互換性にも問題があったため、あまり広くは使われなかった。
XPは2014年4月9日にサポートが終了したが、その後も利用者が多いためか、深刻な脆弱性が見つかると例外的に更新プログラムが提供された。今のところ例外的に提供されたのは、2014年4月26日・2017年5月15日・2019年5月14日の3回。
擬人化
関連タグ
Microsoft/マイクロソフト Windows XP OS
Windows2000・WindowsMe→WindowsXP→WindowsVista