エゾヒグマ
えぞひぐま
概要
北海道の山や森林地帯に生息する。
北海道の山に生息するが、人がヒグマに襲われたり、町に現れては作物が食い荒らされたりする等気性が荒いため、北海道においては危険生物に当てられる。また現在日本列島で確認されている中では、最大の肉食動物でもある。
特に日本最大の獣害被害である三毛別羆事件などで有名。
北海道におけるエゾヒグマの扱い
北海道ではメロンやカボチャなど農作物の被害や、市街地に出没するなどして警戒が呼びかけられる事態が現在も頻発しており、過去には人間の死傷事件も度々引き起こしている。
中でも1915年に起こった「三毛別羆事件」は7名が喰い殺されるという惨事になった。この事件は後に小説家・吉村昭氏により小説「羆嵐」(くまあらし)として作品化、さらに東映、よみうりテレビによって映画化もされている。
人間を襲い、人肉の味を知ったヒグマは、人を喰らうのが習慣になる危険性が高いため、自治体が猟師に依頼して射殺される。また、家畜や人間の食べ物の味を知ってしまった個体も同様である。
類似の例としては近年では家畜が襲われる事例が報告されている。
また2019年8月には札幌市南区の住宅地である藤野地区に連日ヒグマが出没し、大騒ぎになった。(最終的に14日に山中で射殺)
子連れの母グマの場合、連れている子も同様に駆除されることもあるが、まだ人肉の味を覚えておらず動物園に空きがあり子グマの月齢や性格的にも飼育が可能と判断された場合のみ、子グマのみが動物園で終生飼育される場合もある。これに該当する個体で現在存命なのは旭山動物園の「とんこ(既に他界した夫の「くまぞう」も同様の境遇)」、上野動物園のポロ・ポンの兄弟熊である。
アイヌの人々はヒグマの事を「キムンカムイ」(ずばり「山の神」と言う意味。「金毛神」と言う当て字がある)と呼び、狩猟で得られる獲物の中でも最高位か、或いはその立ち位置に極めて近いものとして敬った。豊富に獲れていたせいで、神が袋から地上へ投げ下ろしていたというぞんざいな扱いを受けていたエゾシカとは大きな違いである。
一方で、人殺しを経験したヒグマに対しては、邪悪な魔物として扱う傾向もあったため、場合によっては狩り殺すこともあったという。
一部のアイヌ伝承では「山の奥に棲むヒグマ神は気性も穏やかで神としての位も高いが、山の端に棲むヒグマ神は気性が荒く、神としての位も低い」とする描写がある。
ヒグマを意味する俗語に「山親父」と言うものがあるが、これは「地震・雷・火事・親父」の語句に見られる厳格な父親像をヒグマに仮託しての命名と思われる。
もちろん、「火事」との語呂合わせっぽい親父なんかより、山親父の方がはるかに危険である事は言うまでもない。
エゾヒグマと出会わないために
基本的にクマは人間と会うことを嫌うので、人間が近づいてくることに気付くと、隠れて静かにやりすごすのが普通である。しかし、好奇心旺盛な若いクマは、興味から人間に近づいてくることがあり危険である(事故を起こすのは人を恐れない若クマが多い)。山に入る時鈴などをつけておけばクマの側も早いうちに気付きやすいので遭遇のリスクを減らせると言われているが、絶対ではない。
また、犬は嗅覚に優れているので、ヤブの中に隠れているクマに興奮して吠えかかり、ヒグマを怒らせることがある。なので、犬を連れて山に入ってはいけない(これは本州の山も同様であるが、北海道の場合は犬連れで山に入るのは特に危険。ヒグマ狩りの猟犬はヒグマの注意を人間からそらす訓練を受けている)。
また、冬眠あけ(春)や繁殖時期(6月頃)のクマは活発に行動するので、この時期は山に入るのを避けたほうがよい。