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エゾヒグマ

えぞひぐま

エゾヒグマとは、北海道に生息するヒグマの亜種である。
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概要

食肉目クマ科に分類するヒグマの最小亜種。
北海道の山や森林地帯に生息する。
雑食性で主食は、サケや果実、昆虫やエゾシカ等。
北海道の山に生息するが、人がヒグマに襲われたり、町に現れては作物が食い荒らされたりする等気性が荒いため、北海道においては危険生物に当てられる。また現在日本列島で確認されている中では、最大の肉食動物でもある。

特に日本最大の獣害被害である三毛別羆事件などで有名。

遺伝的に3系統が確認されていて、同一地域にこれほどの系統が存在するのは世界でも極めて珍しい。それぞれが異なる時期に異なるルートで北海道にやってきたが、そのうちの一つは本州・四国・九州経由で到達したことが判明している(つまり、ヒグマは昔は本州にもいた)。本州以南では、絶滅の原因は不明だが、北海道と同様、温暖化によって草原の減少、餌となる大型動物の減少または小型化が起こり、その状態でツキノワグマとの競合(本来なら生息環境と餌が異なるので共存できるのだが、温暖化に伴う環境の変化で競合関係となったと思われる)、または人間との接触で絶滅したものと考えられる。これは世界でも同様であり、かつては地中海沿岸やアフリカにまでいた。また、同じ北海道でも礼文島利尻島では絶滅している(海を渡っている個体が時々見つかる 直近では2018年5月に利尻島で確認されている)。

北海道は、エゾヒグマ生息地としては例外的に人口密度が高く、かつヒグマの生息密度も高い(これは、エゾヒグマが島嶼化によって小型化した事と、沢山の人間とヒグマが共存できるほど、北海道の自然の恵みが豊かであるということを示している)ため、市街地の近くの山にも、普通に棲息している。ただ、北海道においてもヒグマと実際に遭遇したことのある人は少ない。それは、ヒグマは人の目に触れるのを避けて山中に潜んでいるためである。

本来は草原と周辺の森などに生息するが、氷河期が終わった後の北海道では草原が減り、オオツノジカナウマンゾウなどの大型動物が絶滅し、さらに近代に至ってオオカミが絶滅したため、直接の捕食だけでなく、おこぼれの死骸にありつける機会が減った事も小型化に無関係ではないだろう。河川や海岸にも、チョウザメイトウニホンアシカウバザメ、何より大型鯨類などがほぼ絶滅したり激減したので、これらの死体などを摂取するチャンスも減っただろう。山の実りも同様である。

しかしエゾヒグマは、ツキノワグマより巨体であり力も強いため、人間と遭遇した時は惨事になる危険が大きい。ヒグマ対策は、ヒグマが人里に出ないようにすること、山野に出た人間がヒグマに出会わないようにするのが基本である。近年は、駆除政策の転換により警戒心の薄れたクマが増えているといわれ、たまに市街地近辺に出てくるクマもおり、よく騒ぎになる(特にヒグマ生息地である山と隣接した札幌のような都会で問題になる)。また、人間の側も、攻撃性を示さないヒグマに餌を与えるなどの行為が目立つようになり、不測の事態が発生しかねないために社会問題になっている。

エゾヒグマは大陸のヒグマよりも小型で植物食傾向が強く、特に山菜果物、木の実などを好む傾向が強い。これは、餌となる生物が限られていることが大きい。知床のエゾヒグマは秋になると川を遡上するを好んで捕食するが、その他の地域の川では遡上する鮭を人間が捕ってしまうためヒグマが食する機会は少ない。ただし、エゾヒグマの植物食傾向が定着したのは内陸部の開発が進んだ江戸時代末期以降であり、それ以前のヒグマは動物性の食物もかなり摂っていたようである。大型動物は積極的には狩らないとされていたが、これも近代以降シカが激減したためであるらしく、シカが増えている近年の北海道ではシカを襲うこともよくある。

ヒグマとしては様々なものを食べるが、個々のクマは特定の季節にはそればかりを好んで食べる偏食の傾向があるとか。人の食べ物の味を覚えると人の生活圏に頻繁に侵入する恐れがあるため、ヒグマがいる地域では、決して生ゴミを安易に投棄してはならない。餌やりなどはもってのほか。冬は穴の中で冬眠するが、適当な穴が見つからないなどで冬眠しそこねたヒグマは穴持たずとなり、凶暴化すると言われている。

最近は、人に慣れて街に出没するケースも増えてきた。知床半島の番屋の漁師たちにはヒグマの親子連れが積極的に接近して近くで過ごす。これは、雄を避けるためとされており、世界でも他にはない例である。

人間との関係

北海道ではメロンカボチャなど農作物の被害や、市街地に出没するなどして警戒が呼びかけられる事態が現在も頻発しており、過去には人間の死傷事件も度々引き起こしている。
中でも1915年に起こった「三毛別羆事件」は7名が喰い殺されるという惨事になった。この事件は後に小説家・吉村昭氏により小説「羆嵐」(くまあらし)として作品化、さらに東映、よみうりテレビによって映画化もされている。
人間を襲い、人肉の味を知ったヒグマは、人を喰らうのが習慣になる危険性が高いため、自治体が猟師に依頼して射殺される。また、家畜や人間の食べ物の味を知ってしまった個体も同様である。
類似の例としては近年では家畜が襲われる事例が報告されている。
また2019年8月には札幌市南区の住宅地である藤野地区に連日ヒグマが出没し、大騒ぎになった。(最終的に14日に山中で射殺)
子連れの母グマの場合、連れている子も同様に駆除されることもあるが、まだ人肉の味を覚えておらず動物園に空きがあり子グマの月齢や性格的にも飼育が可能と判断された場合のみ、子グマのみが動物園で終生飼育される場合もある。これに該当する個体で現在存命なのは旭山動物園の「とんこ(既に他界した夫の「くまぞう」も同様の境遇)」、上野動物園のポロ・ポンの兄弟熊である。

アイヌの人々はヒグマの事を「キムンカムイ」(ずばり「山の」と言う意味。「金毛神」と言う当て字がある)と呼び、狩猟で得られる獲物の中でも最高位か、或いはその立ち位置に極めて近いものとして敬った。豊富に獲れていたせいで、神が袋から地上へ投げ下ろしていたというぞんざいな扱いを受けていたエゾシカとは大きな違いである。

一方で、人殺しを経験したヒグマに対しては、邪悪な魔物として扱う傾向もあったため、場合によっては狩り殺すこともあったという。

一部のアイヌ伝承では「山の奥に棲むヒグマ神は気性も穏やかで神としての位も高いが、山の端に棲むヒグマ神は気性が荒く、神としての位も低い」とする描写がある。

ヒグマを意味する俗語に「山親父」と言うものがあるが、これは「地震火事親父」の語句に見られる厳格な父親像をヒグマに仮託しての命名と思われる。
もちろん、「火事」との語呂合わせっぽい親父なんかより、山親父の方がはるかに危険である事は言うまでもない。

対策

クマと出会わないために

基本的にクマは人間と会うことを嫌うので、人間が近づいてくることに気付くと、隠れて静かにやりすごすのが普通である。しかし、好奇心旺盛な若いクマは、興味から人間に近づいてくることがあり危険である(事故を起こすのは人を恐れない若クマが多い)。山に入る時などをつけておけばクマの側も早いうちに気付きやすいので遭遇のリスクを減らせると言われているが、絶対ではない。

また、犬は嗅覚に優れているので、ヤブの中に隠れているクマに興奮して吠えかかり、ヒグマを怒らせることがある。なので、犬を連れて山に入ってはいけない(これは本州の山も同様であるが、北海道の場合は犬連れで山に入るのは特に危険。ヒグマ狩りの猟犬はヒグマの注意を人間からそらす訓練を受けている)。

また、冬眠あけ(春)や繁殖時期(6月頃)のクマは活発に行動するので、この時期は山に入るのを避けたほうがよい。

シカのような大型の生物の死体を見つけた場合はそれにも近付かずに立ち去るべきである。これは海岸に漂着したイルカやサメなどの死体でも同様。野生動物の屍肉はヒグマにとって貴重な食糧であるが、これは裏を返せば所有物として執着の対象となりやすいということである。もし近付けば食べ物を横取りする存在とみなされ、どこからともなく襲撃されるおそれがある。彼等は時速60kmで走ることができる

クマと出会ったら

北海道で活動する知床財団サイトでは、距離別・状況別で対応策がまとめてある(もしも…出会ってしまったら!~ヒグマ対処法)。

クマと出会おうとしない

ヒグマを間近で見たいなら動物園へ。言うまでも無いが、こちらから野生のクマと出会おうとしてはならない。
が、車でヒグマに近付こうとする者、道路上で遭遇したのに走り去ろうとせずに停車して近くでみようとする者、写真撮影するために接近する者が後を絶たない。ヒグマを見たり撮ろうとする者が引き起こす渋滞は「ヒグマ渋滞」と呼ばれ社会問題化している。

注意する看板を立てようがお構いなし。車から降りる人々まで存在している(参考)。前述の通りヒグマは時速60kmで走行でき、しかも多少の障害物や傾斜ではろくに失速してくれない。あちらがやろうと思えば虚を突かれた一瞬で生死が決まってしまう。
(恐らくこういう人々が勝手に脳内で関連づけている)サファリパークでも死亡事故が起こっているが、ほとんどは車の外に出たことによる。ヤバいと気付いてから車に戻る、では間に合わない。
では車に乗っていれば安全かというとそのような保証はない。ヒグマより小型のアメリカクロクマですら、車の窓ガラスなどたやすく割ってしまう(参考)。

ヒトと出会わせないために

餌付けを絶対にしない。ヒグマをヒトに近付けさせないためには、ヒグマの餌になるものを置き去りにしないことが必要。餌を得た場所に居着くだけで、その段階の時点で脅威である。

例えば釣りで釣った魚や魚釣りのための餌を置き去りにする。一匹数匹の魚どころか、ペール缶の内側にへばりついた餌の残りだろうと弁当トレーの匂いだろうと、ヒグマはつられてやって来る。
人間の食べ物の味を覚えさせれば彼等は人の住む場所に吸い寄せられる。釣り場やハイキング先の場合も、人間が利用できる(ほかの人が利用する機会のある、人が行ける範囲である)場所にヒグマを居着かせるわけであり、いずれも危険極まりない。

人の食べ物の味を覚え、人里に現われるようになった個体は駆除しなければならなくなる。
その実例は既に存在している(森の動物にエサを与えないで 1本のソーセージが招いたヒグマの最期)。

関連タグ

クマ科 ヒグマ 北海道

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