「サルガミは去るのみ~…」
演/CV:大杉漣
概要
妖怪軍団に与する妖怪の1体。サングラスを掛け、ミュージシャン風の衣装に身を包んだ猿の獣人と言うべき姿を持つ。人間態は没落した霞流忍術道場の25代目師範・霞大五郎なる壮年の男性。
猿だけに猿真似や猿芝居が上手く、劇中ではカクレンジャーの技を盗む為にドロドロと共に盛大な一芝居を打った。尚、後者に関しては貴公子ジュニアからそう評された際に「名演技と呼んで頂きたい」と苦言を呈する等、相応の自信を抱いていたらしく、相手も「アカデミー賞物の名演技」と訂正している。
昔の「猿神」は化け猿の親分らしく、「攫った若い娘の着物を着て喜ぶ」という変な妖怪だが、劇中ではそれらしい事は何もしていない。また、名前に「神」と付いてはいるが、これも単に「神の名を騙った猿の妖怪」と言うだけである。詳しくは下記にて後述する。
活躍
ドロドロ達の化けた虐めっ子のサッカー少年に忍術を馬鹿にされる霞大五郎とその一家を装い、お人好しのサイゾウを騙して利用する。
「再興の為の人寄せ」としてカクレンジャー5人の技や、果てはカクレンジャーボールまで披露させる事でその技をまんまと盗むと、次の街へ行こうとする5人の前にドロドロを率いて出現。先程の技の猿真似を繰り出して撃退する事に成功する。
だが、アジトである道場で貴公子ジュニアとの会話を道場に忍び込んでいたジライヤに知られ、騙されていた事にサイゾウが憤る中、サスケは相手を騙し返す為の一芝居を考え付く。
斯くして、5人はサルガミに襲われて大怪我をした振りを装い、本人の扮する大五郎の前に現れると、カクレンジャーボールを上回るニューバージョン必殺技の開発への協力を依頼。
騙されているとも知らず、カクレンジャーに協力する事にした大五郎は採石場まで赴き、その体得を目論むも、それ自体が真っ赤な嘘だった為に逆に自分が大ダメージを負って負傷、敗北を喫する。騙されたと知って憤るサルガミに対し、ブルーから「騙す奴は騙されんだ!思い知ったか、猿真似野郎!」、レッドから「このインチキザルめ、こっちは正統派の流れを組む『猿飛』の猿だい!」と、それぞれから意趣返しとばかりに一蹴される。
直後に妖怪エネルギーの落雷を浴びて巨大化すると、巨大戦では猿らしい身軽な動きで獣将ファイターに応戦するも、バトルサルダーのサルダークローとバトルロウガンのロウガンクローを受け、怯んだ所へ止めのファイタークラッシュを喰らい爆散。上記の台詞と共に梵字の形になったまま昇天して逝った。
余談
妖怪モチーフは猿神。
原典の猿神は本来、日吉神の様な太陽神の使者とされる猿の化身であった。
これは日の出と共に騒ぎ出す猿の性質から、太陽と関連付けられて生じた物とされている。
また、中世から近世にかけて流行した山王信仰でも猿は神の使い、或いは山の神としても尊ばれている点も見逃せない。他の動物と比べても猿は人間に似た異形で、それでいて身体も小さい山の生き物である故、神聖視されるのも自然の流れであろう。また、インド神話のハヌマーンの存在も、その信仰に間接的に関わっている点も見逃せない。
豊臣秀吉の幼名が日吉丸で仇名が「猿」だったのも、母が男子を授かる様に日吉神に願った事から来ており、これも日吉信仰やそれに連なる猿神信仰と関りがあるとされている。こうした点から、猿神が神であると言う点は決して間違いでは無い。
然し、その一方で猿神は中世以降になると人に害を為す妖怪として見られる様になり、こちらが現代のサルガミのルーツになった物と思われる。『今昔物語集』巻26「美作國神依猟師謀止生贄語」や光前寺の「早太郎伝説」に見られる様に、山に棲む大猿が人間の女性を生け贄に求めて猟師や僧侶、犬と言った第三者に退治されると言う話は各地に残っている。神格を失った猿神は悪役の妖怪に成り下がり、とかく人間からぞんざいに扱われる様になった訳である。
こうした猿の妖怪化の背景には、人間の猿への侮蔑があるとされている。猿は人間に似た生き物でありながら、人間程進化していない生き物である為、馬鹿にして侮る感情が人々に生じたのも、妖怪としての猿神誕生の背景には間違い無く有るだろう。
人間態と声の両方を演じた大杉氏は今作がスーパー戦隊シリーズ初出演で、俳優としてその後も多くのドラマに出た名優である。後の仮面ライダー映画でも地獄大使役として出演していたが、2018年に亡くなった為、これが最後の戦隊出演となった。