概要
アジア大陸の東北部、沿海州に位置する満州を発祥地とする民族であり、満州からロシア領のシベリア・極東にかけての北東アジア地域に住む、『ツングース系民族』の一つとされている。
『満州民族』『満州族』とも呼ばれ、古くは『女真族』とも呼ばれた。
ヌルハチによって統一されたのちに自ら民族名として満州を名乗り、女真という他称は二代目ホンタイジによって禁止された。そこにはかつての女真族に加えて同地に住む蒙古系や漢族まで含まれることになった。満州人は軍人から農民に至るまで8つの集団に分ける八旗という制度によって統治され、国号として清を名乗った。
清が滅亡した明の故地を征服すると、八旗は北京に集団移住させられて、支配民族として位置づけられた。彼らは独自の文化を守り互いに通婚して民族の独自性を守ることが期待される。しかし、被支配民族の漢民族は圧倒的多数であり、統治の都合上政府高官にも多くの漢人が登用されていた。こうして次第に八旗は漢化していく。さらに満州には漢民族の移住が禁止されていたが、これも清の弱体化や北からのロシアの侵略等によって有名無実化した。こうして満州にも大量の漢人が住んで多数派を形成する。清王朝の滅亡時には満州人の独自性はすっかり失われてしまっていた。
やがて日本が満州に進駐して満州国を建て、五族協和の名において満州人の復権が叫ばれる。しかしそこで「満語」とされたのは北京官話であって満州語ではなかった。満州国皇帝の溥儀たちにも、既に満州語を話す満州人を集めることは出来なくなっていたのだ。そして日本の敗戦によって満州国も崩壊し、満州人たちは漢奸、すなわち侵略者の手先として追われることになる。中国共産党は少数民族の集団が自治州を形成し形式的な自治を行うことを認めたが、満州族の自治州は認められていない(自治県はいくつか存在する)。さらに文化大革命によって満州人は存在そのものが支配階級として糾弾されることになった。
こういった歴史を経て、現在も少数民族としての満州人が暮らしている。新賓満族自治県では陰暦4月18日に満州族の祖先に祈る祭礼が行われ、満州人伝統信仰のシャーマンが残っている自治県もある。しかし、満州語を母語とする人々はほとんど残っていないという。共産党政府は少数民族として登録することで優遇する保護策を打ち出し、登録上の満州人は約1000万人にも上る。だがこれは、優遇の利益を狙って満州人として登録することで見かけ上の人口を増やしているだけで満州語話者の増加にはほとんどつながっていないともいう。
創作における満州人
ラストエンペラー、蒼天の拳に愛新覚羅溥儀が登場するなどしているが、日本の創作においてはラストエンペラー序盤を除けば西洋化が進んだ20世紀の姿しか描かれていないと言っていい。中国ドラマでは西太后がドラマの主人公になるなど、19世紀以前の姿が描かれる機会は比較的多い。その習俗は霊幻道士シリーズでキョンシーの着用する埋葬服として満州服が登場しているほか、清王朝時代を舞台とするカンフー映画に辮髪の主人公が登場するなどしてごく一部ながら目にすることができる。