概要
「主が、『おまえの名は何か』とお尋ねになるとそれは答えた。『我が名はレギオン。我々は、大勢であるがゆえに』」
隕石によって飛来した地球外生命体。名前は上述の新約聖書内の悪霊に由来しており、札幌にてガメラに群がって攻撃するソルジャーレギオンの大群の姿を見た自衛隊員が「大勢/多数」の意味で名付けた。映画では「マルコによる福音書」5章9節を引用している。
正式名称は「Symbiotic Legion」。
自らの苗床となる「レギオンプラント」(劇中での呼称は草体、また1部媒体ではレギオンフラワーとも)を中心に、母体である「マザーレギオン」(劇中での呼称は巨大レギオン)と雑兵として働く「ソルジャーレギオン」(劇中での呼称は小型レギオン、1部媒体では群体レギオンとも)による蟻や蜂のような社会を形成して活動する生命体。
このマザーレギオンと、ソルジャーレギオンは、体がケイ素化合物(シリコン)によって構成された珪素生物であり、節足動物のような外骨格を持ち、ソルジャーレギオンには筋肉が無く、高圧酸素によるガス圧で行う。
これらは共生関係にあり、基本的に「レギオン」は「マザーレギオン」を指すものの、劇中ではこの共同体全てを指してレギオンと呼ぶこともある。言ってしまえば、マザーレギオン・ソルジャーレギオン・草体、これらをひっくるめた一つの生態系が”レギオン”である。
非常に攻撃的で獰猛な生命体。
特に、マザーレギオンとソルジャーレギオンは電磁波によって交信するが、これを阻害する電磁波を探知すると、排除すべき敵と認識して、優先的に攻撃を仕掛ける習性を持つ。
そのため、餌となるはずのシリコンを含んだ土壌の多いエリアよりも、むしろ電磁波の強い繁華街を攻撃し、繁殖地として選ぶ習性を持つ。
人類、と言うより、地球の生態系と相容れない”侵略する生態系”であり、共存することは不可能。レギオンが育てる草体は高圧酸素を誘爆させ巨大な種子を宇宙に打ち上げることで繁殖するのだが、その爆発の威力は核爆発並であり、放っておけば地球を更地にしてしまうことになりかねない。
歴代ガメラシリーズでも最強クラスの怪獣で、ガメラを草体の大爆発によって仮死状態に追い込み(同時に仙台駅から半径数キロを壊滅、というよりは消滅させている)、最終的にはウルティメイト・プラズマの使用にまで踏み切らせるなど、ガメラと人類を極限まで追い詰めた。
次回作の怪獣であるイリスよりも劇中時の強さは上。(ただしイリスは未だ成長過程であり、他の生物を取り込むなどして更に成長していた可能性があるため、最終的な強さ関係は不明)
また、ガメラ2~3までの「ギャオス大量発生」「イリス覚醒」といった事態はウルティメイト・プラズマの使用によるマナの大量消費によって起こったとされており、滅びた後にも人類とガメラに禍根を残す厄介さをみせた怪獣である。
マザーレギオン
レギオンの女王(女王蟻・女王蜂)に当たる存在。
複数の昆虫類と甲殻類を掛け合わせたような外見をしている。
また、胴体にあたる部分に常時同族を生み落す事が可能な器官「エッグチャンバー」を抱いている。
電磁波・マイクロ波による強力な攻撃が武器で、角を開いて放つ「マイクロ波シェル」は広範囲を一瞬で炎上させる威力を持ち、前作ではギャオスの超音波メスでも傷付かなかったガメラの甲羅すら、容易く抉る威力を見せ、自衛隊の戦車大隊をほぼ一撃で損耗50%に追い込んでいる。
また、頭部の周りにパラボラ上に備わった干渉波クローと呼ばれる爪は、強力な電磁波を発生させ、戦闘中、防御の為に使用。ミサイルの誘導をジャミングしたり、ガメラのプラズマ火球に電磁波を浴びせる事で(火・プラズマも電気的な現象であるが故か)中和・無力化することまでやってのける。
シリコンで出来たボディ自体も非常に頑強であり、干渉波クローなどのもろい部分を除けば、人類側の兵器ではダメージを与えられない。また、角や巨大な足による格闘攻撃は強力で、特に大鎌状の後脚(サイズレッグ)は、飛行するガメラを叩き落したり、ガメラの腹部を容易く貫くなどの威力を見せ、ガメラと同等以上の格闘能力も持つ。
角を失うとマイクロ波シェルを発射できなくなるものの、その代わりとして頭部から「マイクロ波ビュート=レギオン・ビュート、赤熱鞭(レッドロッド)とも呼ばれる」を放つ事もできる。紅く発光する無数の電磁波のムチであり、触れた物体を一瞬で焼き切る。ガメラの甲羅すらも一瞬で貫通してしまう程。
また、エッグチャンバーより1時間に100匹のソルジャーレギオンを生産し指揮する能力を持つ。
目立った弱点は存在しないものの、強いて挙げれば干渉波クローなどの部分が脆い。対戦車ミサイルの炸裂程度でも千切れてしまうほどの強度しかない。
作中では、ガメラを援護するために放たれた対戦車ミサイルの波状攻撃を捌ききれずに被弾・破壊されてしまった。(しかしそれ以外の箇所は戦車砲が当たると「カン カン」と音がするほど硬い。)しかし、その隙を突いて放たれたプラズマ火球は弱った干渉波では防げなかったものの、ボディにはほとんどダメージが無かった。
マザーレギオンの卵は、レギオンプラントの種子に内包されており、他の星に落下した後に孵化する。
幼体と呼ばれる成長前の形態は、成長後と比べて小さいが羽を持ち、マッハ1で飛行可能。
劇中での活躍
北海道恵庭市郊外に種子と共に落下し間もなく孵化する。
ソルジャーレギオンを生産しつつ北上し、札幌を繁殖地として定め、やがてすすきので種子を発芽させる。
しかし、飛来したガメラに種子発射を阻止されると、幼体のままで地下から飛び出し逃走。
津軽海峡上空でF-15Jのミサイル攻撃を受け消息を絶つ。
巨大な翅が回収されたことから死んだと考えられたが、完全にマザーレギオンへと成長すると、仙台において種子を再び発芽させる。
再び飛来したガメラを霞野飛行場で襲撃すると、人類を庇って防戦一方のガメラを圧倒し、種子発射まで足止めをする。しかし、結果としてガメラは満身創痍ながらも済んでのところでレギオンプラントを破壊。爆発によってガメラは炭化して仮死状態に追い込まれるものの、宇宙への種子発射はまたも失敗する。
2度の種子発射の失敗をうけて仙台からなおも南下し、とうとう首都圏を標的に定めると、栃木県足利市の山中から出現して進撃を開始する。
人類側の抵抗を押し切って進むものの、復活したガメラが飛来。
人類とガメラの共同戦線の前にソルジャーレギオンの指揮を奪われ、干渉波クローを失い頭部の角をもがれるなど、大きなダメージを負うが、マイクロ波ビュートによって再びガメラを追い詰める。
しかし最期には、ガメラのウルティメイト・プラズマの前に灰になって消し飛び死亡した。
レギオンプラント
レギオンと共生関係にある巨大植物。ビルを突き破って開花するほどの巨大な花。
「レギオンフラワー」とも呼ばれる。劇中では「草体」と呼称される。
大規模な爆発を起こして、種子を宇宙空間に飛ばすという特殊な繁殖方法を持っている。
この種子発射こそが、そのままレギオンにとっての繁殖方法でもあり、マザーレギオンは発射前にこの種子に卵を植えつけておくことで、他の惑星へと繁殖していく。
また、強力な電磁波のゆがみを発生させており、草体の周囲では緑色のオーロラが出現する。
レギオンプラントは、マザーレギオンが繁殖地と定めた場所へと運ばれ、レギオン達によって管理され発芽する。また、レギオン達がシリコンを生成する上で発生する高濃度酸素によって、種子の発射力(爆発規模)を高めている。
その破壊規模は、単一の草体の爆発でも、コンピュータによる試算では6km四方が壊滅するとされた。複数の草体が同時炸裂した仙台の例では、仙台駅周辺そのものが消滅、クレーターと化す被害を出した。
完全に成長し切る前ならば焼却する事も可能(高濃度の酸素に引火する危険性はあるが、火器による破壊効果も上がる)。根っこを爆破すると、活動を停止・遅滞させることができるようで、電磁波の放射も停止する。
平成ガメラシリーズの監督である金子修介は、ウルトラQの劇場版で是非ともジュランを登場させたかったが、結局企画が没になってしまい、そのリベンジとして本作で巨大な花を登場させたという。
ソルジャーレギオン
いわゆる働きアリに相当する小型レギオン。
体は黒く、巨大な一つの目玉と小さな六つの目玉を持つ。
マザーレギオンの腹部・エッグチャンバーから大量に生産され、その指揮に従う。
種子の発芽や、繁殖地の確保など、多種多様な役目を帯びて活動する。
マザーレギオンのように自在に電磁波やマイクロ波を操ることは出来ないが、ガラスなどの化合物を一瞬で分解し、シリコンを吸収する能力を持つ。
羽を持っており、大群で飛行することもある。
また、刺々しい角や足を多く持っており、非常に攻撃的。劇中では地下鉄の運転手から機動隊まで多くの人間を惨殺している。
ただし電磁波を発生させる物や、ガラス・シリコン製品等を持っていなければ、こちらから攻撃しない限りは間近にいても襲っては来ない。
外骨格はそれなりに丈夫だが、関節部分等の強度は脆く拳銃弾でも十分貫通可能。前述の通りガス圧で体を動かしているので、穴が空くとガスが抜けて動きも鈍る。
大型の敵に対しては、大群で群がって一斉に電磁波を発生させ、電子レンジのように相手を蒸し殺そうとする攻撃を行う(これは、ミツバチなどが天敵に対して行う実際の行動がモチーフとなっている)。この戦法は非常に強力で、一度はガメラを退けた上に、最終決戦でもソルジャーレギオンの群れに襲われたら、ガメラに勝ち目はないとされるほどであった。
反面、知能は低く、異常な電磁波の排除を優先するあまり度々自滅する。が、人類側の対空砲火に対して、散らばって飛行して弾幕をすり抜けようとする行動も見せた。
草体の種子発射直前には姿を消す。
劇中での活躍
恵庭市への種子落下後、種子とマザーレギオンを運び札幌へと向かう。
途中、光ファイバーケーブルやビール工場のビンをシリコンに分解して食い荒らし被害を出す。
やがて札幌の地下へ到達すると、種子の発芽とマザーレギオンの成長を促すが、その内に地下鉄へと出現。
電磁波を発生する機器を持っていた乗客や、突入してきた機動隊を敵と見なし、激しい攻撃の末多大な被害を出す。その後、草体排除に動く自衛隊とは一進一退の攻防を展開する。
自衛隊によって地下鉄構内が爆破され、さらに飛来したガメラによって草体が破壊されると、地下から大群で出現しガメラに群がってダメージを与え敗走させる。だが、このとき戦闘したソルジャーレギオンは、変電所の送電線に群がって感電し、あるいは飛行するガメラから海へと落下して、全てが死亡した。
その後、新たに生産された思われる個体群は仙台で種子を再び発芽させる。このとき、パチンコ屋のネオンに群がって感電死したのが目撃された。
最後に生産されたのは、マザーレギオンが東京へと進撃を開始した際に生み出された個体群。
これらの個体は最初から飛行しており、戦闘機部隊や高射砲部隊と交戦するが、ガメラ出現によってマザーレギオンの元へと呼び戻される。
しかし、名崎送信所からの電磁波におびき寄せられてしまい、送電線に群がったところを、自衛隊のAH-1Sのロケット弾攻撃で一掃された。
ガメラとの最終決戦の最中、マザーレギオンのエッグチャンバーがガメラのエルボークローによって破壊されたため、以降生産されることは無くなった。
余談
ちなみにマザーレギオンは、平成シリーズの完全オリジナルな新怪獣というわけではなく、元ネタはリメイク候補に挙がっていた昭和シリーズの怪獣ギロン。
当初、平成ガメラシリーズ2作目の敵怪獣候補としてギロンが上がっていたのだが、「今時こんなかっ飛んだデザイン使えるか」という意見によってこれは早々に却下された。
だが、宇宙怪獣、角が主な武器、無機物によって構成された体、などの特徴の多くが元となってマザーレギオンが作られることになった。
そのためファンからは魔改造とまで言われているという。
……という通説がファンの間でまことしやかに語られていたが、これはガセであり、金子監督自身によって否定された。参照
金子監督によれば、樋口真嗣監督と相談してスケッチやデザインを検討し、脚本の伊藤和典氏が設定考証して生まれた、ガメラ2のオリジナル怪獣であるとのこと。
このようなガセが生まれたのは「頭の尖った宇宙怪獣で、多彩な技でガメラを苦戦させ、しかも名前が似ているなど共通点が多い」「『手足が生えた包丁』という他の追随を許さないギロンのインパクトが強すぎる」など、いくつか理由は考えられるものの、監督自身が否定している以上は無関係である。
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