概要
2022年の第94回アカデミー賞授賞式の際、俳優のウィル・スミスがプレゼンターを務めていたコメディアンのクリス・ロックに対してステージ上で平手打ちをくらわすという事件を引き起こし、視聴していた世界中のファンに衝撃を与えた。
原因は、脱毛症に苦しんでいた妻のジェイダ・ピンケット・スミスをクリスが揶揄するようなジョークを言ったためであり、よほど腹に据えかねたのか、ウィルは自席に戻った後も、Fワードも交えた罵詈雑言をクリスに対して浴びせ続けていたほどだった(当然、テレビ中継は中断される事態となった)。
当然、主催者である映画芸術科学アカデミーは、一連のウィルの行動をアカデミーの行動基準に反しているとして問題視しており、厳正な措置を取るとしている。
現時点では情報が錯綜している面もあるので不明な点も多いものの、主催側はウィルに退席を求めたがウィルはこれを拒否、最悪の場合暴行罪で警察に逮捕させる話も上がったものの、殴られたクリスが「事態をこれ以上大事にしたくない」という理由で断ったため、警察沙汰にならなかった……とされている。
なお、ウィルはこの年主演男優賞を受賞しているが、状況によっては受賞が取り消される可能性も浮上している。後にウィルは自身のSNSを通じて謝罪、後日アカデミーの会員を辞任することになった。この際、「どのような処分が下されてもそれを受け入れる」と表明している。
行動の賛否
この一件については、「世界中の人が視聴している中、妻を侮辱されたのだから当然の反応」とウィルを擁護する意見が一定数ある一方で、「原因が何であれ暴力に訴えるなど言語道断」「少なくとも大人のやり方ではない」とウィルの行動を非難する意見も相当数ある(上記の通り、主催者側は後者の立場である)。
ちなみに、どちらの意見が多いかは国によって価値観や文化が異なるために差異があると言われている。
例えば、本国アメリカでは権力と富がある人、政治家やセレブリティーをコメディアンがネタにする「スタンダップコメディ」の文化があることや「許される暴力」という考え方が存在しないことから「手を出したウィル・スミスが完全に悪い」という声が多い。
一方、家族や家庭を重んじる風潮が強く、古くは仇討ち(敵討ち)の風習などもあった日本では「最愛の人を侮辱されたのだからウィルが憤慨しビンタしたのも当然(あるいは理解できる)」とウィルに対して同情的な意見が多いと言われている。
また「健常者が病人を笑いものにするのは良くて、それに親族が腹を立てるのはいけないことなのか」とその掲げられた元来の理念に反し、免罪符の如くバッシングの口実として振りかざされる風潮から、昨今悪い意味で世間に浸透しつつあるポリティカル・コレクトネスにも触れた意見もある。
またその他、日本にウィル擁護派が多い背景について
・ウィルが親日家であり、複数の来日経験があること
・ウィルとクリスでは、圧倒的にウィルの方が知名度および人気が高いこと
・日本では妻は夫に守られるものという家父長制文化が根強い
・ウィルの日本語吹き替えをタレントや司会者としても人気なベテラン声優の山寺宏一が多く担当していること
・事件の数日前まで、Twitterなどの各種SNSにおいて『Will Smithのすべらない話』と称して“ガソリンが切れ、おまけに財布を忘れたウィルがファンに取った行動を語る”といった内容の動画を翻訳したものが「面白い!」「スターはこうでなくちゃ!」と拡散されており、とウィルがユーモアに富んだ好人物として幅広い層に認知が広まっていた状況下であった
・上記の親しみやすさなどのバイアスもさることながら、「ジョーク」という言葉を用いずに「妻を侮辱された」という報道の仕方のメディアが非常に多かったこと
・本国アメリカをはじめとした海外ではFワードを発することはとてつもない侮辱行為であり、それも公衆の面前で使用するのは厳禁であるものの日本にはFワードに相当する言葉が存在しないことなどから当然そういった認識が薄く、暴言そのものが軽視されていること
などが理由として推測されている。
関連イラスト
pixivでは、一連の様子をパロディ化したイラストに付けられる。
関連項目
蝶野ビンタ:こちらは専ら言いがかりやとばっちりで被害を受けるネタ
桂歌丸:こちらはハゲネタ弄りに対し非暴力的な方法でやり返すことが多かった(一応相手を突き飛ばすなど手が出たこともある)
ジム・キャリー:クリス・ロックと同様スタンダップ・コメディの経験者であり、今回の件についてウィルを厳しく非難した。また奇しくも吹き替えを多く担当しているのはウィルと同様山寺宏一である。