走るごとに強く、勝つごとに逞しく。
勇者の名を持つ駿馬は、闘いを重ねて真の強さを鍛え上げた。
実戦で己を磨く野武士のように、強く、逞しく。
世代の頂点を極めてなお、挑む気迫をみなぎらせて。
人馬一体、さらなる激闘の先にある栄光へと走り行く。
≪「ヒーロー列伝」No.63≫
前へ進め
始まりの夏
心躍らせた秋
そして胸はずむ春
たとえ歩みは遅くとも
自身の熱情と人の想いを力に
悪路をわたり巌を越えれば
素晴らしき眺望と出会えるだろう
その高揚をかみしねたなら
すぐにまた前を向け
次なる目的地へと進むのだ
≪名馬の肖像2022年皐月賞≫
概要
2003年3月7日生まれ。父・オペラハウス、母・マイヴィヴィアン。通算27戦9勝。瀬戸口厩舎⇒高橋成忠厩舎。
2005年デビュー3戦目で初勝利。2006年スプリングSを勝つも、皐月賞前までは伏兵扱いだった。しかし皐月賞・ダービーと連勝し、春の2冠馬に輝く。鞍上のベテラン・石橋守にとってもデビュー22年目にして初のGⅠ勝利であった。前年のディープインパクトから2年連続三冠馬か?と騒がれたが(2年連続三冠馬誕生となれば、1983年のミスターシービー・1984年のシンボリルドルフ以来22年ぶりとなっていた)、菊花賞はソングオブウインドの4着に敗れ3冠はならなかった。
そして有馬記念にも出走したが、この競走を最後に引退したディープインパクトにちぎられ5着。
2007年は史上4頭目の天皇賞春秋制覇(同一年)を達成するが、年度代表馬はアドマイヤムーンに阻まれる。
2008年は春の天皇賞と宝塚記念で連続2着となり、36年ぶりの馬インフルエンザの影響で1年延期となった海外の凱旋門賞に挑戦するが、スタートで挟まれる道中も包まれ動けずなどの不利もあり10着。
寒い時期が良くないのか有馬記念は3年連続、5着・8着・8着と好走出来ていない。
種牡馬になってからは、重勝3勝したデンコウアンジュなどを輩出している。
前記のアドマイヤムーンとは3勝2敗。同期であり古馬になってからも同じ路線を歩み続けたライバルとも言えるドリームパスポートとは6勝8敗。
デビュー前は700万円の安い馬だった。
評価
クラシック二冠に加えて同一年天皇賞春秋連覇を達成し、稼いだ賞金も10億を超えたことで間違いなく名馬と言える成績なのだが、ゼンノロブロイと同様に不当に過小評価されている。
その理由として、一つ上の世代にはディープインパクト、一つ下の世代にはウオッカとダイワスカーレットがおり、彼らに負け越していることが過小評価されている要因である。
ディープインパクトの引退レースとなった第51回有馬記念は有終の美を飾ったディープインパクトに対して5着に敗れ、三冠馬と二冠馬の力と格の差をまざまざと見せつけられた。この点は、第30回有馬記念(1985年)で三冠馬シンボリルドルフに突き放された二冠馬ミホシンザンにも通じる。