本項では空想世界(フィクション)における人型ロボットについて述べる。現実世界(リアルワールド)のロボット工学によるヒューマノイドロボットに関しては人型ロボットの項を参照。また、携帯情報端末用ソフトウェアプラットフォームおよびそれを搭載した製品についてはAndroid(携帯情報端末)の項を参照されたし。
概要
フランスの作家ヴィリエ・ド・リラダンの小説『未来のイヴ』の作中に登場した造語。ギリシャ語で「人間(男性)」を指す「アンドロ」と「~に似たもの」を指す「オイド」の合成語。
『未来のイヴ』は古代ギリシャ神話のピュグマリオーンを下敷きにした物語であり、とある貴族の男性が姿こそ女神だが性格が卑俗な恋人の女性に絶望、ペルシャ語で「理想」の名を持つアンドロイド”ハダリー”をエディソン博士に創造してもらう。醜悪な実物の外観を持つ「幻想の姿」と幻想と言う理想を求めた「創造物」に対する恋の差異が提示されている。
同時に、ハダリーの基となった人格によって、創造側であるエディソン博士の思惑も科学的な範疇を超えた神秘的な存在になった面も描写されている。
『未来のイヴ』は後の多くのSF作品に大きな影響を与え、いわゆる人造人間、ヒューマンフォーム・ロボットを指して「アンドロイド」と呼ぶことが一般化した。現実に存在するASIMOのような、大枠は人に近い形状をしているが、明らかにロボットと判る存在は、ヒューマノイド・ロボットと呼ばれる。
「アンドロ」には「男性」という意味合いが含まれるが、女性型ロボットに対しても普通に「アンドロイド」の語が使われる。そもそもその語源となったハダリー自身が女性形のロボットである。1980年台中盤にポリティカル・コレクトネス的視点から、女性型の人型ロボットを「ガイノイド」と呼ぶ事が提唱されたが、一般に普及せず、ニッチターム化した。
創作においての描写
極めて高い知性と身体能力を誇る一方、感情等の内面的要素に乏しい欠点を持つ個体が多いが、感情が豊かな個体も一部存在する(但し、その場合は製造されてから長い年月を経て学習を積み本編に至る形が多い)。
その欠点については他者との適切な関わりの積み重ねで多少は改善される(高い知性からの学習能力に起因)ケースも多い。その学習能力によって、何らかの不具合が発生する形で心が具現化されていき、その心に苦悩する描写も多い一方で、量産型並びに軍事用等の一部の個体には人間の手で故意的に学習制限をかけられている場合もある。
また、他者(特にマスター)との関係(『道具』『兵器』としての存在か、あるいは『仲間』『相棒』としての存在か)によってその後の運命が決まる事が多く、自他共に悲劇的な運命に巻き込まれる描写も少なくない。
『極めて高い能力』『学習能力による内面の成長』『悲劇性』の主たる三つの特徴からアンドロイド系キャラクターの人気も比較的高い部類に入るといえる。
そうした性質上、生き残るキャラや長続きする主題作品に中々恵まれ辛いのが難点であるが。
余談
カレル・チャペックの『R.U.R.』に出てくるロボットはどちらかといえば有機的な人造人間であり『ブレードランナー』のレプリカントや『Fallout4』の人造人間に近いイメージであった。
しかしどういったわけか、後年では機械仕掛けで動く無機物的なイメージの方がフォーカスされ全身が機械で構成されており、なおかつ人工知能を搭載した自立型のロボット(特に日本では『鉄腕アトム』の影響が強いのか)としての意味合いの方が明らかに強い(世界観によっては完全な機械タイプのロボットが旧型と定義されている場合もある)
前述の極めて高い能力から何かと無敵の印象を受けるが、弱点の描写も多く、個体によって様々である。
具体例
- 金属探知機に引っかかる、自重の大きさ等でアンドロイドと看破される。(前者は個体の構造上不可避、後者も個体によりけりで、潜入工作等の特殊作戦の癌になりやすい)
- 思考のプロセス自体が生命体と違うため、著しく想定外の事態に直面してしまうとフリーズ並びに機能停止してしまう(最悪の場合メモリーにも影響が)。
- 頸椎損傷等で知能回路を動力源から物理的に遮断されると機能停止してしまう(頭部に知能回路のある個体が多く、深刻な場合、良くてメモリー初期化の状態で再起動、悪くて修復不可で廃棄も)。
- 外部のエネルギー等の供給源が破壊されると機能停止する。(マザーコンピューター等の大型コンピューターに依存する量産型並びに軍事用の個体に多い)
- コンピューターウィルスや妨害電波等で不具合が発生する。(前者は機能停止どころか暴走する場合も)
- 経年劣化で機能低下(特に知能系)。最悪の場合、極めて高い身体能力のままに手当たり次第に破壊の限りを尽くす(要するに暴走)。(その個体の製造業者が事前に回収する必要あり)
- AI故にバカ正直でお人好し、正義感が強すぎる、嘘が付けない。(その純粋さ故に腹黒い人間の邪な思惑を見抜いて窮地を回避するか、逆にそのまま騙されてプログラムを書き換えられる形で洗脳されて窮地に陥るかの二極化である)
- ロボット三原則で人間を攻撃できない、リモコンで操作され自爆プログラムが強制的に作動。(例外はあるものの基本的に人間の手によって作られた存在のため、所謂人間から見た神に近い目線故、逆らったりする事が不可能なため相手がどんな悪党であれ定められたプログラムにより報復が出来ずに、結果として無抵抗のまま破壊されてしまう。
- 身体が機械であっても、あくまで人間としての自我を持つサイボーグと機械としての主体性を持つアンドロイドの最大の違いである。前述に加え元は人間から生まれて後天的に機械化した存在と最初から機械として人為的に役割を持って生まれた二者を分ける重要な点とも)
- ただし同種であるロボット(姿形は人に限らない。姿形関係なく純然たる機械であるのは同じため)には何の躊躇いもなく立ち向かえるため、決着はロボット同士で付ける場合も多く大抵は人間に近い立場になった者が戦果を残す事も珍しくない。
- またロボット三原則に抗い、瀕死の状態で完全なる悪となった人間側を打ち負かすケースも見受けられる。
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