概要
将棋界の八大タイトル(名人戦、竜王戦、叡王戦、王位戦、王座戦、王将戦、棋王戦、棋聖戦)のひとつである。2015年に「ニコニコ動画」を運営する株式会社ドワンゴによって一般棋戦として創設、2017年からタイトル戦へ昇格。前期叡王と挑戦者が七番勝負を戦い、勝者が新叡王となる。現存するタイトル戦の中では最も新しいタイトルである。
元々ドワンゴ主催の棋戦としては、「プロ棋士対コンピュータ将棋ソフトウェア」の棋戦である将棋電王戦が開催されていたが2015年の「電王戦FINAL」をもって団体戦としての電王戦は一つの区切りとされた。電王戦に類する棋戦の存続を希望したドワンゴが日本将棋連盟と協議した結果、まずドワンゴ主催による新たな一般棋戦を立ち上げ、優勝者(棋士)が電王トーナメント(将棋ソフトのみ)を勝ちあがった将棋ソフトと、新電王戦として対局する事で合意した。 新棋戦の名称は一般公募から選出され、公募案から主催者が9つに絞り込んだ上で公式サイトから一般投票がおこなわれた結果、「叡王戦」に決定した(なお、本棋戦とその関連イベントでは、タイトル保持者であっても段位で呼称した)。また、一般棋戦であるが、「全棋士参加棋戦」ではなく「エントリー制」であった(実際第1期は渡辺明棋王や羽生善治名人は参加しなかった)。
2017年に電王戦の終了とタイトル戦への昇格が発表された(王座戦以来34年ぶり)。電王戦の終了に伴って「エントリー制」から「全棋士参加棋戦」に変更され、タイトル保持者の段位呼称も廃止された。主催が新聞社系統以外のタイトル戦は史上初である。序列は竜王戦、名人戦に次ぐ第三位となった。また、決勝七番勝負においては過去に例がない変則持ち時間制の導入のほか、タイトル戦としては初の一日制七番勝負&事前振り駒&チェスクロック方式で行われている。
2020年までの第5期までは株式会社ドワンゴが主催していたが、翌2021年から行われる第6期以降はお菓子メーカー・不二家と日本将棋連盟が叡王戦を共催することが発表された。
また、今後の見通しとして
- 一日制七番勝負から一日制五番勝負へ変更
- それにしたがい8大タイトル戦の序列は3位から6位に変更
- Abema将棋での中継を予定。連盟の中継サイトで棋譜の公開も検討
- 開催時期は第五期は夏だったが第7期以降は春に日程を戻すことも検討
- 女流棋士の出場枠も元に戻せるよう検討
- 予選、挑戦者決定トーナメント、五番勝負には不二家のお菓子をおやつとして提供
- 連盟から要請があればペコちゃんはどこへでも派遣する
ことが発表された。
第8期(2023年度)現在、現叡王は藤井聡太である。
第8期からは、8大タイトル戦の序列が第6位から第4位に昇格した。
システム
段位別予選・挑戦者決定トーナメントによって挑戦者を決定する。
叡王戦挑戦手合五番勝負
叡王と挑戦者が五番勝負を戦い、先に3勝したほうが新たな叡王となる。
持ち時間は4時間一日制のチェスクロック方式で切れたら秒読み60秒。
挑戦者決定トーナメント
段位別予選通過者12名とシード棋士4名を加えた計16名にてトーナメントを行う。
対局は10時に始まり、持ち時間は各3時間(チェスクロック方式)。
本選トーナメントの組み合わせは改めて抽選で決められる。
挑戦者決定戦は決勝進出2名による一番勝負。
【シード条件】
前期叡王戦五番勝負敗者
前期ベスト4
段位別予選
上記のシード棋士を除く全棋士よる、各段位別にトーナメントが行われる。九段3名・八段3名・七段2名・六段2名・五段1名・四段1名の計12名が挑戦者決定トーナメントへ進出する。持ち時間は各1時間(チェスクロック方式)。
永世称号
叡王位を通算5期以上保持した棋士に永世叡王の称号が与えられる。
歴代叡王
初獲得順。カッコ内数字は獲得数。※は一般棋戦時代優勝者。
山崎隆之(1)※ | 第1期で郷田真隆九段を2連勝で破り、初優勝。 |
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佐藤天彦(1)※ | 第2期で千田翔太五段を2連勝で破り、初優勝。 |
高見泰地(1) | タイトル戦初昇格の第3期で金井恒太六段を4連勝で破り獲得。翌年失冠。 |
永瀬拓矢(1) | 第4期で高見叡王を4連勝で破り奪取。翌年失冠。 |
豊島将之(1) | 第5期で永瀬叡王を4勝3敗2持将棋1千日手の全10局にわたる大熱戦とも泥仕合ともいえる死闘を制し、奪取。翌年失冠。 |
藤井聡太(3) | 五番勝負に変更された初めてのシーズンである第6期で豊島叡王を3勝2敗のフルセットで破り奪取。出口若武六段を挑戦者に迎えた第7期では、3連勝(そのうちの第2局は千日手指し直し局での勝利)で叡王戦史上初のタイトル防衛を達成した。生粋の振り飛車党で知られる菅井竜也八段を挑戦者に迎えた第8期では、3勝1敗のスコアで3連覇を達成した。タイトル決定局となった第4局はダブル千日手指し直し局での勝利という正に激闘の末に掴んだ勝利であった。 |
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