概要
- 将棋界の八大タイトル(名人戦、竜王戦、王位戦、王座戦、棋王戦、叡王戦、王将戦、棋聖戦)のひとつである。1950年、名人戦の契約を朝日新聞社に奪われた毎日新聞社が1950年に一般棋戦として創設。翌年にタイトル戦へ昇格した。前期王将と挑戦者が七番勝負を戦い、勝者が新王将となる。
- 第69期(2019年度)のみは、外食チェーンである「大阪王将」を運営しているイートアンドが特別協賛に加わり、正式名称を「大阪王将杯王将戦」として開催された。また、第71期以降は綜合警備保障(ALSOK)が特別協賛に加わり、正式名称を「ALSOK杯王将戦」として開催されている。
- 第73期(2023年度)王将は藤井聡太である。
システムについて
一次予選・二次予選・挑戦者決定リーグによって挑戦者を決定する。2022年度の第72期より、七番勝負以外の持ち時間の計時方式がチェスクロック方式となっている(七番勝負は引き続き1分未満切り捨てのストップウォッチ形式)。
なお一次予選通過者の人数は、二次予選シード者の人数によって変化するため必ず下図の通りの人数になる訳ではない(第72期王将戦では二次予選シード者が8名しかいなかったため、一次予選通過者は10名となっている)。
王将戦挑戦手合七番勝負
王将と挑戦者が七番勝負を戦い、先に4勝したほうが新たな王将となる。七番勝負は全国各地の旅館や料亭などで催されることになっており、2012年からは第1局を静岡県掛川市の掛川城(二の丸茶室)で行うことが恒例となっている。また、栃木県大田原市でも2006年から開催されている。持ち時間は各8時間(2日制)。
挑戦者決定リーグ
- 二次予選通過棋士3名とシード棋士4名(前期王将戦敗者と残留者3名)の計7名による総当たりのリーグ戦を行う。成績最上位者が王将戦の挑戦者となる。成績最上位者が複数出た場合は、原則としてシード順位で上位の2人によるプレーオフが行われる。持ち時間は各4時間。
- 成績上位者4人が次年度の挑戦者決定リーグに残留し、その順位に従いシード権を得る。勝ち星が並んだ場合は当年度のシード順位が優先される。二次予選通過者同士で勝ち星が並んだ場合は、リーグ残留の場合は次年度も同順位となり、4位で並んだ場合は残留者決定戦が行われる。
二次予選
- 一次予選通過棋士とシード棋士による計18名が、3ブロックに分かれてトーナメントを行う。持ち時間は各3時間。
【シード条件】※順番は優先順位
- 前期挑戦者決定リーグ陥落者(二次予選2回戦からの参加)
- タイトル保持者(上位3名は二次予選2回戦からの参加)
- 順位戦A級在籍者(タイトル保持者が3名以下の場合、上位棋士は二次予選2回戦からの参加)
- 永世称号呼称者(資格保持者は除く)
- 一次予選通過者(下記シード人数を差し引いた人数)
一次予選
上記シード棋士を除く、順位戦B級1組以下の棋士がトーナメント形式で行われる。各組のトーナメント勝者が二次予選に進む。持ち時間は各3時間。
永世王将
王将位を通算10期獲得した棋士には、永世称号である「永世王将」が与えられる。2020年4月1日現在の永世王将は大山康晴十五世名人、永世王将資格保持者は羽生善治九段である。またその条件の厳しさから、最も永世称号を取りずらいタイトルのひとつである。
余談(エピソード)
指し込み制
- 王将戦は、発足当初に「指し込み制」が適用されていた。これは3勝差がついた時点で王将戦の勝負が決定し、次の対局から香落ちと平手戦を交互に行い、必ず第7局まで実施するシステムである。当初将棋連盟内では升田幸三八段を筆頭に「名人が指し込まれる可能性がある」と慎重論があった。最終的には木村義雄名人の「名人が指し込まれることはあり得ない」という発言により主催側の提案通りに施行する事となった。
- しかし皮肉にも、第1期王将戦で、升田八段が木村王将(名人)を4勝1敗で指し込むこととなった。その後升田は香落ち戦となる第6局の対局を拒否し、事態を重く見た連盟から一時1年間の対局禁止の裁定も下された(直後に取り消される)。この「陣屋事件」は将棋界のみならず、世間の大きな注目を集めた。
- なお、現在も規定上では「指し込み制度」は存在しており、制度変更後以降で名人在位者に対する「指し込み」を達成したのは羽生善治と藤井聡太のみである(羽生の場合は1999年度佐藤康名人と2004年度森内王将(名人)の2回でともに4連勝で防衛・奪取であり、藤井の場合は2021年度渡辺王将(名人)に4連勝で奪取となり、史上4人目の五冠を達成した)。
勝者罰ゲーム
- 番ごとの勝者はスポーツニッポン紙面掲載用に記念撮影を行なう。パティシエに扮してロールケーキをつくったり、安来節を踊ったり、海岸で将棋を指したりとユニークな写真が多く、「勝者罰ゲーム」の異名を持つ。しかし当のスポーツニッポンは「決して罰ゲームではありません」と否定している。それもそのはずで、この撮影は開催地のPR目的で始められたものである。
- しかし第67期は両対局者から「緩い」との指摘があり、これを受けたスポーツニッポンは第68期での企画強化を宣言したが、その68期がこの手のことにノリノリで応じる渡辺明のストレート勝ちであったため、半ば肩透かしに終わっている。69期は藤井聡太が挑戦にリーチを掛け、初タイトル戦があわや罰ゲームつきになりかけたが、挑戦ならずで持ち越しとなっている。
- 第71期で藤井が遂に挑戦し、しかもストレートで奪取。当時まだ未成年だった藤井に配慮したのか、例年に比べると比較的緩めだった。
七冠独占達成
- 羽生九段による七冠独占の偉業は、王将戦によって達成された。第44期(1994年度)王将戦では谷川浩司王将に3勝4敗で敗退するも、翌年全てのタイトルを防衛した上で第45期(1995年度)王将戦の挑戦権を獲得。シリーズも谷川王将を圧倒。4連勝のストレートで王将位を奪取し、七冠独占を達成した。
最年長タイトル獲得
- 永世王将の大山十五世名人は、第29期(1956年度)王将戦で加藤一二三王将から4勝2敗で王将位を奪還、第31期(1981年)まで王将位3連覇を果たした。58歳のタイトル獲得は、2020年時点において史上最年長記録となっている。
第73期(2023年度)王将戦
挑戦者決定リーグ
※対局結果は2023年11月22日現在
※◎は挑戦権獲得・△は残留・▼は陥落
順位 | 氏名/順番 | 対局結果 | 勝敗 | 結果 |
---|---|---|---|---|
1 | 羽生善治九段 | ○近藤 ○佐々木勇 ●豊島 ○渡辺 ●菅井 ○永瀬 - | 4勝2敗 | △残留 |
2 | 豊島将之九段 | ○佐々木勇 ●近藤 ○羽生 ●永瀬 - ●菅井 ●渡辺 | 2勝4敗 | ▼陥落 |
3 | 永瀬拓矢九段 | - ○菅井 ○渡辺 ○豊島 ○近藤 ●羽生 ●佐々木勇 | 4勝2敗 | △残留 |
4 | 近藤誠也七段 | ●羽生 ○豊島 - ○佐々木勇 ●永瀬 ○渡辺 ●菅井 | 3勝3敗 | △残留 |
5 | 渡辺明九段 | ●菅井 - ●永瀬 ●羽生 ●佐々木勇 ●近藤 ○豊島 | 1勝6敗 | ▼陥落 |
5 | 菅井竜也八段 | ○渡辺 ●永瀬 ○佐々木勇 - ○羽生 ○豊島 ○近藤 | 5勝1敗 | ◎挑戦 |
5 | 佐々木勇気八段 | ●豊島 ●羽生 ●菅井 ●近藤 ○渡辺 - ○永瀬 | 2勝4敗 | ▼陥落 |
関連タグ
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