将棋の棋聖戦
概要
棋聖戦は、産業経済新聞社主催のタイトル戦(竜王戦・名人戦・王位戦・王座戦・棋王戦・叡王戦・王将戦・棋聖戦)のひとつ。挑戦者と前期棋聖で五番勝負を行い、勝者が棋聖のタイトル称号を得る。1951年に開始した一般棋戦の産経杯が源流棋戦である。産経杯は1954年に準タイトル戦の早指し王位決定戦となり、さらに1960年からはブロック紙三社連合の協力を得てタイトル戦の王位戦に格上げとなった。1962年に産経新聞は王位戦を離脱し、新たに棋聖戦を開始した。当初は年2回(前期・後期)開催だったが、1995年からは年1回に変更。2018年4月からはヒューリックが特別協賛に入り、正式名称を「ヒューリック杯棋聖戦」とすることとなった。
システム(第81期以降)
1962年の創設当初から1994年度までは、タイトル戦の中では唯一1年に2期行われていた(五番勝負は6~7月と12月~2月)棋戦である。現行の年1期制となったのは1995年度からである(ちょうど羽生善治が七冠独占を果たした年度に当たる)。
2010年度の第81期より挑戦者決定のシステムが変更され、一次予選・二次予選・決勝トーナメントの3段階で挑戦者を決定するようになった(それ以前は三次予選・最終予選が存在した)。
決勝トーナメント
二次予選の勝ち抜き棋士8名と決勝トーナメントのシード棋士8名(人数変動あり)の計16人が参加する。持ち時間は各4時間。トーナメントの勝者が前期棋聖と五番勝負を戦う。
決勝トーナメントのシードは優先順に前期のベスト4以上、タイトル保持者、永世棋聖資格保持者である(シード人数は最大で8人であるため、それを超えた分は二次予選からの出場となる)。
二次予選
一次予選の勝ち抜き者8人と、二次予選シード棋士によりトーナメント形式で行われる。持ち時間は各3時間。棋聖戦五番勝負出場経験者や前期決勝トーナメント進出者はC級1組以下であっても二次予選からの出場となる。81期よりシード人数が変動することになり、勝ち抜け枠は8人以上で毎年変動するようになった。
一次予選
シード者以外の棋士(原則順位戦C級1組以下の棋士)と、女流棋士2人によりトーナメント形式で行われる。8人が二次予選に進む。第81期より持ち時間が3時間から1時間(チェスクロック方式)に短縮され、1日に2局指す場合もある(2017年現在、タイトル戦では他に叡王戦がある。テレビ棋戦以外の一般棋戦では朝日杯将棋オープン戦、女流タイトル戦では女流王将戦がある)。
棋聖戦挑戦手合五番勝負
棋聖と挑戦者が五番勝負を戦う。他のタイトル戦と同様、五番勝負は全国各地の旅館・ホテルや料亭などで実施される。1996年以降、毎年1局がホテルニューアワジで開催されている(2020年はコロナ禍の影響で会場変更されたため行われなかった)。持ち時間は各4時間の1日制である。
永世棋聖
永世称号である永世棋聖は、棋聖位を通算5期以上保持した棋士に与えられる。永世棋聖は故・大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人、故・米長邦雄永世棋聖が該当し、永世棋聖資格保持者は羽生、佐藤康光九段が該当する(2022年4月現在)。また、谷川浩司十七世名人は棋聖を通算4期獲得しており、永世棋聖獲得まであと一歩であった。
余談(将棋棋聖戦)
かつて年に2回行われていたこともあり「初タイトルが棋聖」という例も他のタイトルより多く、第88期(2017年)までに11人が初タイトルを棋聖で獲得している。第89期(2018年)の豊島将之新棋聖も含めると、12人が初タイトルを棋聖で獲得している。
1989年度の第55期棋聖戦では屋敷伸之四段が17歳10か月24日での最年少タイトル挑戦を樹立、2020年度の第91期棋聖戦では藤井聡太七段が17歳10か月20日で最年少タイトル挑戦記録を、その後17歳11か月25日で最年少タイトル戦獲得記録を更新するなど、最年少記録が多い棋戦である。
第94期(2023年度)棋聖戦【将棋】
※内容・結果は2023年7月18日現在
挑戦手合五番勝負
本戦出場者
◎は挑戦者、☆はベスト4進出者(次期本戦シード)、▼は敗退者
段位戦 | シード棋士・予選突破棋士 |
---|---|
本戦シード | 永瀬拓矢王座☆ / 渡辺明名人☆ / 久保利明九段▼ / 佐々木大地七段◎ |
予選通過者 | 羽生善治九段▼ / 糸谷哲郎八段▼ / 中村太地八段▼ / 牧野光則六段▼ / 松尾歩八段▼ / 斎藤明日斗五段▼ / 藤井猛九段▼ / 広瀬章人八段▼ / 佐々木勇気八段☆ / 井上慶太九段▼ / 大橋貴洸七段▼ / 冨田誠也四段▼ |
囲碁の棋聖戦
概要
棋聖戦は、読売新聞社主催のタイトル戦(棋聖戦・本因坊戦・名人戦・碁聖戦・王座戦・天元戦・十段戦)のひとつ。挑戦者と前期棋聖で七番勝負を行い、勝者が棋聖のタイトル称号を得る。
1957年から日本最強決定戦が源流棋戦。その後名人戦を主催していたが、日本棋院からの契約金増額要請に読売新聞が一切応じなかったことから、日本棋院では名人戦の朝日新聞社への移管を進め、1974年末に契約打切りを読売新聞に通告した。
読売新聞はこれに反発し傘下メディアを通じて日本棋院の対応を批判し続け、1975年8月には日本棋院を相手にした訴訟を起こした。同時に水面下の交渉を行い、日本棋院顧問岡田儀一による「名人戦は朝日と契約」「読売は序列第一位の新棋戦、最高棋士決定戦・棋聖戦を新たに契約」(岡田私案)とする斡旋案で、同年12月10日に和解した。この経緯は「名人戦騒動」として知られ、将棋の名人戦契約にも大きな影響を与えた。棋聖戦は、この「名人戦騒動」の渦中から生まれ1976年にスタートした。
システム(第40期以降)
棋聖戦では第40期以降、棋聖戦4段階リーグ方式を採用している。
決勝トーナメント
挑戦者決定トーナメントでは、Sリーグ優勝者と準優勝者・Aリーグ優勝者・Bリーグ1組と2組の優勝者によるプレーオフ勝者(Bリーグ優勝者)・Cリーグの優勝者によるパラマストーナメントで行われ、挑戦者決定戦はA2位~C優勝者からの勝者とSリーグ優勝者によってSリーグ優勝者に1勝のアドバンテージがある変則三番勝負を行う。
4段階リーグ
S・A・B(1組・2組)・Cの4段階のリーグとCリーグ入りを目指すファーストトーナメント(FT)をお行う。Sクラス・Aクラス・Bクラスは総当たりリーグ戦、Cクラスはスイス式トーナメントで原則5回戦を行い、5連勝した棋士が優勝。3敗した棋士はFTへの陥落が決まり対局打ち切りとなる。アマチュアもネット棋聖戦最上位のSAクラス4強入りでFTに出場ができるようになった(第45期棋聖戦では、第6回ネット棋聖戦で優勝した栗田佳樹アマがFTを突破し、アマチュアとして初めてCリーグ入りを果たしている)。
4段階リーグ規定
クラス | 定員 | 方式 | 決勝T進出人数 | 昇格人数 | 降格人数 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
Sクラス | 6名 | 総当たりR | 2名 | - | 2名 | |
Aクラス | 8名 | 総当たりR | 1名 | 2名 | 4名 | |
Bクラス | 14名(各7名) | 総当たりR | 1名 | 4名(各2名) | 6名(各3名) | 1組・2組のリーグで行う。 |
Cクラス | 6名 | スイス式T | 1名 | 6名 | 16名(3敗した棋士) | トーナメント方式 |
棋聖戦による昇段規定
棋聖戦は囲碁界最高峰のタイトル戦であるため、昇段規定が存在する。
規定 | 可能段位→昇段段位 |
---|---|
Sリーグ昇格 | 六段以下→七段 |
棋聖挑戦 | 七段以下→八段 |
棋聖獲得 | 八段→九段 |
名誉棋聖
棋聖を5連覇、または通算10期以上獲得した棋士は、永世称号の「名誉棋聖」が与えられる。名誉棋聖は藤沢秀行名誉棋聖・小林光一名誉三冠、名誉棋聖資格保持者は井山裕太四冠である(2022年4月現在)。
余談(囲碁棋戦)
1998年までは毎年、1999年からは原則2年に一回(第1局)は海外で行なわれている。
第43期までに棋聖を獲得した棋士はわずか9人。そのうち名誉棋聖(資格保持者)の藤沢、小林、(井山)と、名誉棋聖にあと一歩まで届いた趙治勲名誉名人と山下敬吾九段の5人で全34期分を制している。
第47期(2022年度)棋聖戦【囲碁】
挑戦手合七番勝負
挑戦者決定戦
※変則二番勝負(Sリーグ1位の棋士は1勝分のアドバンテージ)
挑戦者決定トーナメント
※Sリーグ1位の棋士は挑戦者決定戦で1勝のアドバンテージ
関連イラスト
関連タグ
囲碁 将棋 将棋タイトルホルダー一覧 囲碁タイトルホルダー一覧
将棋のタグ
藤井聡太 ・・・現(第93期)棋聖位【将棋】
囲碁のタグ
井山裕太 ・・・名誉棋聖資格保持者【囲碁】
一力遼 ・・・現(第46期)棋聖【囲碁】