概要
CV：中尾隆聖
毛利小五郎や妃英理の古くからの友人で、仏料理店「ラ・フルール」のソムリエ。36歳。
物静かで温和な性格だが、ワインに対する知識と情熱は非常に深く、突然差し出されたワインの銘柄をいとも簡単に当てるなどソムリエとしての実力は一流である。いつか自分の店を持つのを夢としており、資産家・旭勝義から娯楽施設「アクアクリスタル」内のレストラン経営を打診されている。
趣味はワイン収集で、自宅のワインセラーには宝物のシャトー・ペトリュスを筆頭に、高級ワインを数多く所持している。実家は山梨県で果樹園を経営しており、ワインセラーに数百本のワインが貯蔵されている。
小五郎の友人であり、かつ「公」に「8」が含まれる彼を連続襲撃事件の次の標的と懸念したコナン一行と「アクアクリスタル」へ同行することになる。
関連項目
名探偵コナン 毛利小五郎 宍戸永明 14番目の標的 劇場版名探偵コナン
ネタバレ注意
本作で発生した一連の事件の真犯人。
3ヶ月前にバイクで仕事から帰宅途中、小山内奈々の前方不注意を原因とする転倒事故に遭い（奈々の車と接触こそしなかったが、危険な運転が明らかに転倒を誘発し、また奈々は沢木を救護せず逃走した）、その後遺症で味覚障害になってしまう。
残された視覚と嗅覚を頼りにソムリエの仕事を続けること自体はできたものの、それは「完璧なソムリエでありたい」という彼の美学に反していた。やむなく仕事と夢を諦め実家のある山梨へ帰ることを決意するが、その無念と怒りは凄まじく、将来自分の店を開く時のために取っておいたシャトー・ペトリュスを自宅の床に叩き付けて割り、憎しみの矛先を事故の直接の原因を作った奈々に向ける。
また、医師から「味覚障害はストレスが原因の可能性もある」と診断されたことから、以前からストレスの原因となっていた辻弘樹、旭勝義、仁科稔も怨嗟の対象となった。それぞれに対する動機は以下の通り。
辻：彼が自宅で開いたパーティに沢木が呼ばれた際、余興でソムリエとしての品格やプライドを嘲笑った。
旭：莫大な財力にものを言わせて貴重な高級ワインを買いあさっていた上に管理も杜撰だった。
仁科：知識も経験もないのにワイングルメを気取って知ったかぶりのエッセイを出し、ワインに関する誤った知識を読者に植え付けた。ちなみに劇中の描写では、ソムリエとしての腕は沢木の方が味覚障害のハンデを負った状態でも仁科より上だった。
復讐の方法を思案していたところ、元トランプ賭博のディーラーで偶然仮出所したばかりの村上丈と出会う。彼と小五郎との過去を聞き、自分と標的全員の名前に数字が入っていることに気付き、自身の犯行をトランプの数字になぞらえて村上の犯行にカモフラージュすることを思いつく。更生を決意し小五郎に謝罪したいと述べた村上を殺害したうえで、村上を装って小五郎の関係者と本来の対象とを、トランプの数字順に標的として次々と襲っていった。
まず辻をヘリコプター事故に見せかけて殺害しようとしたが、これはコナンの機転で未遂に終わった。続けて「アクアクリスタル」にて旭と奈々を殺害した後、カナヅチの仁科を溺れさせるためだけに海中レストランを爆破し、コナン達もろとも海に沈めようとした。
当然、無関係の死傷者が多数出る可能性の高い方法だった。そもそも、小五郎の関係者はもちろん、完全に無関係なピーター・フォードと宍戸永明を事件に巻き込んだのも、足りない数字を揃えるためだけの単なる数合わせに過ぎなかった。
仁科の殺害もまたコナンの機転で失敗に終わり、その流れで「眠りの小五郎」に真相を暴かれ、最後の標的を示す「A」のカードを隠し持っていたことが決定的な物証となり真犯人と判明する。
全ての罪を認めた沢木は卑劣で独善的な本性を露わにし、最後の抵抗として「アクアクリスタル」に仕掛けた残りの爆弾を爆発させ、衰弱していた蘭を人質にとり逃走する。
殺し損ねた辻の元へ向かうためあらかじめ呼び寄せておいたヘリコプターに乗ろうとするが、パイロットが「アクアクリスタル」の爆発と崩落、さらに蘭を人質に取った沢木を目撃したことで緊急事態と判断されヘリは降りず、立ち往生となったところへコナン達と目覚めた小五郎が駆けつける。
追い詰められた沢木は白鳥の拳銃をコナンに持って来させるよう要求するが、拳銃を受け取ったコナンは蘭の足をかすめるよう狙って発砲。これによって蘭がしゃがみ込んだことで身動きが取れなくなり、その隙を小五郎の一本背負いで取り押さえられ逮捕される（この時のコナンの行動は、かつて妃を人質に取った村上丈に対して小五郎がとったのと全く同じであった）。
目暮に手錠をかけられた直後、「アクアクリスタル」崩壊の衝撃で海に転落しそうになり「放せ！死なせろ！」とわめき散らすが、「てめぇに自分の犯した罪の重さを解らせてやる！」と凄む小五郎に救助され、そのまま警察に連行されていった。
考察
奈々と辻に関しては、犯行動機に同情の余地もある。
特に奈々については、相手を転倒させてしまうほどの交通事故を引き起こしたにもかかわらず、救護を放棄し逃走。その後も乱暴な運転を改める気配すらうかがえず、もはや天罰が下ったとしか言いようがない。救護義務違反も立派な犯罪だが、通話しながらの危険運転は(当時は明確な法規定がなかったがその後問題視され現在の法律下では)更に重大な犯罪であり、被害者としての同情の余地は乏しい。
辻を殺害しようとする動機に関しては、作中ではあまり同情を得られていなかったが、引き金となった辻の行動は（沢木視点の回想シーンで見る限り）酒が入っていたとはいえ明らかにやりすぎで、沢木の価値観を考慮すれば激しい侮辱以外の何物でもない。味覚障害との関連性は定かでないとはいえ、道徳的には非常に問題が大きく、辻にも十分な落ち度があると言える。ただ、すぐに真摯に謝罪していれば標的にまではならなかったかもしれない。
一方で、それ以外の犯行動機はやや弱く、旭も仁科も沢木に対して直接的に加害しておらず、自身の完璧主義をただ押し付けただけの一方的な言いがかりであるという意見も少なくない。
また無関係な人物を多数巻き込んでいる点は明らかに悪質である。小五郎の関係者、ピーターと宍戸は、命に関わる事態にこそ至らずに済んだものの、沢木の被害とは完全に無関係なのに巻き込まれている。そして村上丈に至っては、せっかく更生していたにもかかわらず、そもそも無関係であったのに、ただ犯人に見立てるためだけに実際に殺害されてしまっている。
以上より、沢木に同情できるかという話になると正直微妙なところである。仮に奈々1人を狙っていればまだ視聴者が感じるものは変わっていたかもしれない（無論、それでは映画にならないが）。
また、頭部の強打で脳を損傷し人格が変化してしまったという見方もできなくはないかもしれない。コナンが蘭の脚を撃つシーンをよく見ると、沢木は立てなくなった蘭を乱暴に放り捨てず、優しく床に横たえさせるようにしている。コナンは犯人が沢木である可能性が高まった際に「えっ！この人が！？」と意外そうな表情を見せて驚いている。小五郎も蘭を人質に取った沢木が「ダメだ！ヤツを殺して俺も死ぬッ！この女も道連れだッ！」と狂ったように笑い出す姿を見て衝撃を受けている。
なお、中の人はフリーザやばいきんまんで有名な中尾隆聖氏。その熱演ぶりは歴代の数ある犯人の中でも特筆に値するほど際立っており、温厚な態度から豹変し凶悪な本性が露わになった際の変貌ぶり、狂気じみた言動は凄まじい。悪役の好演に定評のある中尾氏ということで、第一声を聞いた時点で犯人ではと感づいた人も少なくなかったと思われる。
ちなみに妃英理の毒入りチョコの件も、彼が犯人であると疑うことができる一因ではある(小五郎夫妻が彼の勤務先で食事した際の思い出話の中でチョコの銘柄に触れている、使用されていた毒は農薬系であり実家が農家である沢木なら難なく用意出来るなど)。また爆弾に関しても、実家の果樹園で使っている化学肥料をくすねて作ったのかもしれない。
関連タグ(ネタバレ)
相棒：日本の刑事ドラマ。本作のSeason5第9話「殺人ワインセラー」では沢木と同様にソムリエの夢を断念した過去が原因で犯罪に走った人物が登場している（なお、このエピソードの脚本を担当したのは、のちに複数の劇場版コナンの脚本を担当する櫻井武晴氏である）。
ジュチ：同じく味覚障害が原因で闇堕ちした人物(こちらは料理人)。
