概要
はじめに
混合水栓はおもに『冷水と熱湯を混ぜ合わせて水温調整を行う上水道設備』として使われるため、本記事の解説でも「水温調整を行える上水道設備」という前提にて記述する。
仮に、青の栓が冷えたサイダーで、赤の栓が冷えたコーラだとしたら「冷えているそれぞれサイダーとコーラの混合比を調整する配管設備」に置き換えて読む必要がある。
当記事の混合水栓の名前はあくまで通称のひとつである。業者によって混合水栓の名称が異なることがある。
解説
『混合栓』(こんごうせん)は、2つ以上の液体か流体を内部で混ぜ合わせて流すことが可能な構造をしている配管部品の一つ。そのうち、冷水と温水を混ぜて吐出する用途に特化した「水栓金具」の一つが『混合水栓』である。
混合水栓において、冷水と温水はレギュレーター(回転式の調整機構)直結の栓から先の「スパウト」という吐出口側の整流配管の根本のあたりで混ぜられる。両方が開栓されている時に、片方の流体の圧力によってもう片方の流体を押し戻してしまう『逆流』を防ぐため、両方の栓から上流側か下流側かどちらか片方に「逆止め弁」(反対向きの流れを検知すると弁が閉まる仕組み)という安全装置を本体に内蔵するか、あるいは別途接続しておく。
冷水と温水が完全に別体の物と違い、「容器に冷水を溜めてから、そこに温水を溜めて希望の水温まで上げた温水溜まりを作る」工程が必要ないため、その分温水を素早く使えるしごみや害虫などの混入が起こる可能性も少なくて済む。
水の大まかな温度が一目でわかるよう、色や文字で表した標識が栓のハンドルかその近くに設けられている。JIS規格で冷水と温水を区別する安全色は決まっていないため、業者や製品によって表示はまちまちである(白黒や青ないしCが冷水、赤や黄ないしHが温水を示すことが多い傾向がある)。
氷点下まで気温が下がる気候下に設置する機種は、内部に残った水が氷結して膨張することで配管を破壊することを防ぐために、「水抜き弁」が装備されている。混合水栓を使わない間は冷水レギュレーター弁と温水レギュレーター弁を両方とも閉めた上で水抜き弁を開け、スパウトやホースに残った水を排出しておく(この場合ホースを混合水栓より低い位置に落としておく必要がある)。
一般的な住宅において、混合水栓は主に温水と冷水の使い分けを要する台所や脱衣所、浴室の洗い場に設置されるのが普通である。
「混合水栓」は文法上、日本語の造語で固有名詞、および四字熟語(故事成語や慣用句としての四字熟語ではない)に分類される。水道業界の専門用語かつ商品名の一つであるが、上水道のトラブルの際に業者に事情を説明できるよう、混合水栓の通称を覚えておくか、メモなどで記録しておくと良い。
混合水栓の型式
2ハンドル混合栓
冷水と温水の側それぞれに止水弁を設け、別々に開閉弁を操作する方式。基本的に「右側の青が冷水」「左側の赤が温水」という配置で、反時計回りに回して吐水、時計回りに回すと止水する構造を採用することが多い。
温度の調整は冷水弁と温水弁それぞれの開き比率で決める。決めた温度のまま流量を増やしたいなら冷水弁と温水弁の両方をほぼ同じ回転角度分開く側に動かす。止水したいなら両方の栓が回らなくなるまで閉める側へ回す。
機構が単純なため故障が起こりにくく、加えて単水栓と部品を共用している機種ではメンテナンス性にも優れる。また冷水弁だけ開けている際は温水弁側へ、温水弁だけ開いている場合は冷水弁側へと水が逆流しないため安全性が高い利点がある。一方で開栓のたびに毎回温度を設定しなおす必要があり、温度調整に手間を取られて水を無駄遣いしがちなこと、栓の構造上左利きの者は扱いにくいことが欠点。
浴室に設置するものは、吐出側にスパウトとシャワーホースどちらか片方を選択するか止水するか選べる「分配器」が付いている。
冷水専用の単水栓と温水専用の単水栓の吐出口から先の配管を結合し、擬似的に混合水栓として機能させる工法もある。
サーモスタット式混合水栓
冷水と温水の混合比率を直接変えられる弁機構「サーモスタット」を装備する方式。水栓を開けてから、サーモスタットに繋がるツマミやレバーハンドルで温度調整を行い、温水の使用を開始する。
2ハンドル混合栓にない特長として、混合比率を保持したまま開栓と閉塞の操作ができることが挙げられる。一方で精密部品のサーモスタットを搭載するがゆえ故障に弱い、勢いよく止水してしまいやすい(水撃作用に起因する水道管破損の原因)、専用部品を使用するため部品の生産終了で修理が困難になるなどメンテナンスの利便性も劣る。
2ハンドル型サーモスタット式混合水栓
液体の流れを制御する水栓レギュレーターと、サーモスタットのレギュレーター部分が別々になっているもの。
正面から見て左側にある、青黄赤ないしCHの表示があるツマミが「サーモスタットレギュレーター」である。これを赤(H)の側へ回すほど温水の比率が上がり、温度の高い水が出てくる。反対に青(C)の側へ回せば冷水となる。
一方、水栓レギュレーターの配置は製品によって異なるが、だいたい正面と右側に配置されている。上記イラストに小さく描かれているのはシャワー側とスパウト側で水栓レギュレーターが独立しているタイプ。右がシャワー栓で、手前がスパウト栓である。
サーモスタットと水栓の操作部分が分かれていることから、水栓とサーモスタットの設計の自由度が高い。特に片手操作のときに「栓を閉めようとする際に誤って温度設定をも同時に変えてしまう」という誤操作が起こらない利点から、温度設定ミスが命取りになりやすい用途(浴室の洗い場が典型的)ではこの機種の施工が基本となっている。
単水栓同様、「自閉水栓」(使用者が手を離すと、ばねや水圧で自動的に水が止まる栓)を複雑な機構を用いることなく搭載可能。これは水の無駄遣い防止や、給湯量が予め決まっている洗面桶や浴槽への給湯にきわめて都合が良く、銭湯の洗い場で多用されるし、一般住宅向けでは浴槽への給湯用途特化の製品も存在する(例:東陶 TMF47ARRシリーズ)。
1レバー型混合水栓
水栓とサーモスタットの操作機構を一つのレバーに合体させたもの。
レバーを軸方向から見て手前に引き出すと混合水が出、奥に押し戻すと止まる。反時計回りに回すと冷水に調整され、時計回りに回すと温水に調整される。使用者が火傷しないように、冷水のみと温水混合との境目に接点を設け、温水混合か否かを使用者に音と感触で警告する機種も製造販売されている。
一つのレバーの三次元の動きで温度調節と吐水制御が同時に、そして素早く行える。このことから台所や洗面台などの、浴室以外の洗い場でよく用いられる。一方で水栓とサーモスタットの操作部分の構造が複雑化する。また、意図しない上下左右動がどうしても多くなりがちで、またてこの原理がハンドルから栓本体に働いて強い圧力がかかると破損しやすい。
pixivでは
2024年2月4日現在pixivでは、作品に付けるタグとしての使用はない。ただし洗い場の光景を描いた作品では、混合水栓がやや高い頻度で登場する。詳細を調査する余地が残っているが、どちらかというとサーモスタット式混合水栓のほうが優勢の模様。