概要
ニシキヘビ(漢字表記:錦蛇〈※a,b1,b2〉)には、以下の2つの語義がある。
- ニシキヘビ属(※b3)(genus Python|cf.Wikipedia) の通称。
- ニシキヘビ科(※b3)(familia Pythonidae|cf.Wikipedia|爬虫綱有鱗目ヘビ亜目ニシキヘビ科) に分類される大蛇の通称。
- ニシキヘビ上科 (superfamilia Pythonoidea) に分類される大蛇の通称。
ニシキヘビ類(ニシキヘビ属と近縁グループ)
アミメニシキヘビ、ボールパイソン、アフリカニシキヘビ (cf.Wikipedia) などの種が存在する。
英語(英語慣習名)では "python(パイソン)" という。この名はラテン語 "pȳthon(ピュートン)" 経由で、ギリシア神話に登場する大蛇の名を意味する古代ギリシア語 "Πύθων(Púthōn;ピュートーン)" を起源としている。なお、Πύθωνの原義は「デルポイの地竜」である。
ニシキヘビ類(ニシキヘビ属と近縁グループ)はボア科の下位部類(1亜科)とする説(※b1, b2)が長らく有力であったほか、ボア上科を設けてその下位分類(1科)とする説もあったが、現在では、サンビームヘビ科 (Xenopeltidae) およびメキシコパイソン科 (Loxocemidae) と共にニシキヘビ上科の下位分類(科)とする説が多くの支持を集めるようになっている。ニシキヘビ上科は、約6200万年前(新生代古第三紀暁新世ダニアン末期)に共通祖先 (cf.Wikipedia) を推定可能な近縁グループである。
なお、再分類は日本でも行われ、環境省も特定動物リストを見直した。
体は太くて長く、蛇の類でも最大級の種を含み、全長は2mから10m近くにまで及ぶ。
体色が派手で、黄褐色の地に赤褐色や黒褐色の斑紋をもつ種が多い。
オスの肛門の両脇に後肢の痕跡があり、肉食性。
一部では、メスが産んだ卵を自らの身体で巻き付け、保護する行動が知られている。
日本では多くのニシキヘビ科動物は特定動物に指定されているため、現在、ペットとして飼育することはできず(※c)、研究目的であっても特別な許可を必要とする。
ニシキヘビの危険性
ニシキヘビ属は最大9.9mという公式記録を持つ、世界最大の蛇である。さらにアフリカからインド、インドネシア、スリランカ、フィリピンなど広大な生息域を持ち、そのため人間と接触する機会も多い。
恐ろしいことに、インドネシアでは人が行方不明になった後で丸々と太ったニシキヘビが発見され、腹を裂いてみるとその人の死体が出てきた、という事件が実際に起こっている。これらはいずれも最大種のアミメニシキヘビによるものである。
こうした事故は1年に1度程度の割合で報告されており、樹上生活を送るアミメニシキヘビが森林開発により住処を追われ、餌に困って人を襲ったものではないかと推測されている。
ただし、ニシキヘビによる人身事故を総合的に見れば、その多くはペットとして飼われていた個体が管理不備により脱走して起こしたもので、被害者の死因はいずれも噛み付きによる失血か締め付けられての窒息である。
日本でもペットが脱走して周囲に危険を及ぼす事態は決して珍しいものではない。2021年5月にも横浜市で3.5mのアミメニシキヘビが脱走し、周囲に警戒を呼び掛ける騒ぎが起こるなど、飼育者の管理意識やモラルが問われている。
主な種類
- アフリカニシキヘビ (cf.Wikipedia)
- アミメニシキヘビ (cf.Wikipedia)
- インドニシキヘビ (cf.Wikipedia)
- ビルマニシキヘビ (cf.Wikipedia)
- ベーレンニシキヘビ (cf.Wikipedia)
- ボールニシキヘビ (cf.Wikipedia)
- アメジストニシキヘビ (cf.Wikipedia)
- ミドリニシキヘビ (cf.Wikipedia)
脚注
出典等
※a1 「錦蛇」 コトバンク > 小学館『精選版 日本国語大辞典』
※a2 「錦蛇」 コトバンク > 小学館『デジタル大辞泉』
※b1 「ニシキヘビ」 コトバンク > 平凡社『改訂新版 世界大百科事典』、松井孝爾
※b2 「ニシキヘビ」 コトバンク > 小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)(cf.Wikipedia)』、松井孝爾
※b3 「ニシキヘビ」 コトバンク > ブリタニカ・ジャパン『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』
※b4 「ニシキヘビ」 コトバンク > 平凡社『百科事典マイペディア』
※c 「昭和五十年政令第百七号 動物の愛護及び管理に関する法律施行令」 e-Gov法令検索