概要
1987年に、創業40周年を記念して造られたスペチアーレ(スペシャルモデル)である。
超巨大なリアウイングと各所のNACAダクト、固定式とリトラを組み合わせた2段式のヘッドライト、メッシュのリアガーニッシュから覗くエキゾーストと、どこまでもスパルタンな外観が目を引く。
ミッドシップで搭載された2936cc・V型8気筒ツインターボエンジン(ちなみにターボチャージャーは日本のIHI製)は478馬力を発揮し、最高速度は公称で324km/h。当時世界最速の市販車であった(最高速200マイル=約322km/hを初めて突破した市販車でもある)。
この時代のスーパーカーは盛りに盛ったスペックで「フン…出ねーヨ」な物も多いが、谷田部高速周回路でテストした際、上記の速度には届かなかったもののかなり近い数字を出したという。
更にハイパフォーマンスバージョンのコンペティツィオーネでは最高出力780馬力、最高速380km/hというバケモノじみたスペックを謳った。
販売価格は日本の正規輸入車で4650万円。生産台数は1日1.5台。
当初、生産台数は350台と予定されていたが、世界中からオーダーが殺到したために増産を繰り返し、最終的には1131台という、スペチアーレとしては多い生産数となった。
このため、事実上の限定車であるにもかかわらず生産は1992年まで5年に渡り、途中でマイナーチェンジも施された。
当時はバブル景気まっただ中であったこともあり、並行輸入を含めかなりの数が日本向けに出荷された。
特に並行輸入では短納期の代償に価格が暴騰し、正規輸入の5倍以上にもなる2億5000万円で販売された例もある。
後の値上がりを見越した転売目的で買った人も相当数いたようで、「走る不動産」とも称された。
(当時は土地が継続して値上がりしていたため、借入・土地購入・転売を繰り返して金を稼ぐ「土地ころがし」が横行していた。自動車は動産であるが、F40は土地と同じような投機対象と見なされてこのように呼ばれたのである)
しかし後にバブルが崩壊したことで相場と需要が急落。新車を温存していた投資家たちが相次いで手放し、結果として2000年代に突入しても新車が手に入ったり、再度海外に流出する事態となった。
創業者エンツォ・フェラーリが最後に携わった車ということもあり、フェラーリファンの間でもひときわ特別視されるモデルである。
世界的に有名なモデル故、日本でも知名度が高く、多くの模型メーカーが製品化している。
評価
レーシングカーをそのまま市販車に落としこんだようなスタイリングは世代を問わず感銘を与え、今なおスーパーカーの中でも非常に高い知名度と人気を誇る。
ただしメカニズム的には旧態依然としたもので、後発のスーパーカー(特にマクラーレン・F1)の台頭もあり、実際にレースに出走した実績は少ない。
日本では1994年から1995年にかけてJGTCに参戦し、1勝を収めている。
ABSやトラクションコントロールといったハイテクデバイスを一切搭載しておらず、その上エンジンはパワーバンドで急激に出力が増大する、いわゆるドッカンターボの特性が強く、かなり扱いの難しいクルマであると言われる。
F1レーサーでありテストドライバーのゲルハルト・ベルガーに「雨の日はガレージから出すな」と言わしめた逸話もある。
創作での登場
主に中川圭一の所有車として登場。大破するか、めちゃくちゃな改造をされる展開が多い。本来2シーターだがアニメ版では運転席後部にも人が乗っているような描写も。
クロウディア・マッキェネンの愛車として登場。
シリーズ2作目の14番目の標的に登場。旭が新規オープンさせた海上レストランに展示されるが、犯人が仕掛けた爆弾によって海の藻屑に。更にはヒロインの蘭がタイヤに足を取られて脱出できず危機一髪に陥る。