西洋における君主号の訳語としても用いられている。 ラテン語: Imperator, 英語: emperor; king of kings, ドイツ語: Kaiser, ギリシア語: Βασιλευς, ロシア語: император, トルコ語: İmparator
帝爵ともいう。
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漢字文化圏の「皇帝」
以後、中国王朝の最高の君主号として、清の第12代宣統帝が1912年に辛亥革命に伴い退位するまで継続した。以後も袁世凱らが皇帝たるを宣言したことがあるが、中国では実質的な王朝とはみなされていない。
名称の由来は中国神話の三皇五帝(さんこうとごてい)の天帝の称号「皇」と世界の支配者「帝」を始皇帝が合体させたもの(始皇帝に即位する前は秦の秦王だった)。
しかも始皇帝は三皇五帝(神)よりも尊い存在だと公言した。法治絶対主義国家の秦であったが、皇帝本人だけは唯一法に束縛されず好きなように行動することが許されるとみなされていた。
秦が短期間で滅亡し、代わった漢以降は「君主すら守るべき道がある」等とする儒教の勢力拡大で、むしろ皇帝の行動は厳しく儒教経典や慣習によって縛られることになった。とはいえ皇帝の命令(勅命)は絶対で、これに逆らう者はそれだけで死刑に値した(違勅の輩)。
法律もまた皇帝の意向で自由に改変できた。
実務を担当する高級官僚たちは皇帝の一存で庶民や奴隷から出世させることも、また一存でクビにするのも自由である。だが一方で皇帝である自分の権威は絶対であるため皇帝自身であっても基本的に撤回できないとされ、近代の独裁者のようにその時の気分や思いつきで命令を下した例は少ないとされる。これを一度吹き出た汗を引っ込められないことに例えて「綸言汗の如し」と言うが、酒乱の気があった呉の孫権が宴席で下した命令は無効とする取り決めを予めしていた例もある。また、王朝が動揺・衰退期に入ると皇帝の実権は衰え、有力な臣下から廃立されることや禅譲に追い込まれることも多くある。
天子とは天の最高神である天帝の代理人であり、地上の全てを支配する正統性を持った存在を指す。
このような経緯から世界の民は全て皇帝の臣下であり、諸国の王もまた皇帝の臣下であるという観念が漢民族に流布した。これが中華思想である。
皇帝が全世界の支配者である以上、万国は臣下として挨拶をしに来なければならず(朝貢という)、対等の外交などあり得ないとするわけだ。
当然、力を伴わなければこのような姿勢は他国から認められない。
歴代のなかでも軍事的には弱小だった宋王朝の場合、異民族の遼(契丹)・金王朝と交戦し敗北した後には「兄弟」・「叔姪」の関係として実質的には対等(あるいは下)の関係を受け入れることになった(そして最終的にはモンゴル系の元に征服される)。
しかし、明王朝がモンゴルの皇帝らを北に追って以降は再度中華思想が復活し、清が滅亡するまでこの態度が変わる事はなかった(ただし、ロシアとの対等条約締結や欧米諸国や日本からの外交官の立礼を許すなど、末期にはすでに綻びが明らかにはなっていた)。
易姓革命
皇帝が上記のような絶対最高の地位であるということから、逆に全ての中心である皇帝の治世で起こったこと(天災地変、飢饉、悪政など)は全て皇帝の責任であるともされる。
「それなら皇帝に責任を取らせて退ければいいじゃない」
ということで、王朝交代の名目とされることも多い。
中国の皇帝はそれぞれの姓を持つため、王朝が交代した場合は皇帝の姓が変わることになることから「易姓(=姓を変える)革命(=天の命令を改める)」と言われる。
訳語としての「皇帝」
漢字文化圏以外の君主号に対する訳語として「皇帝」を用いることが多いが、そもそもの概念の成立経緯が違う為に実態には大きな違いがある。
はなはだしくは明治~大正期の日本は外交文書の中で世界中のほとんどの独立国の君主を皇帝と呼んでいたことすらある。これは君主の称号に「格」があった東洋とは違って一国の主として対等の立場にある君主達が単に歴史的経緯から称していた皇帝・国王・大公などの称号を意味的に区別するためである(要するに日本で皇帝の意味がおかしくなった原因は大日本帝国が中国やヨーロッパ各国の社会を全く理解せずに言葉を内向きにいい加減に使った結果)。
元は東洋同様の区別をした結果、王国と帝国で外交対応に格差があることが判明し、どこぞの王国が激怒したのが理由ともされている。
加えて、1910年に日韓併合が行われた際、韓国皇族への身分保障として彼らに「王公族」の称号が与えられたことも影響している。この際、旧韓国皇帝に「王」、皇太子に「王世子」、その他の皇族に「公」と名を与えたため、いっそう海外王族との区別が不明瞭になった。彼ら王公族はあくまで日本の高位貴族の一種と見做されたため、独立していた海外君主を猶更「皇帝」として扱わざるを得なくなったのである。
1973年頃の官報まではこの制度が残存していた。現在のように国によって名称が変えられたのは日本以外で「emperor」号を有していたイラン帝国・エチオピア帝国が相次いで消滅し、「emperor」号を有するのが日本のみとなったから、と推定される。
現代でも本来ならば「王太子」と呼ばれるべき王位継承権者が「皇太子」と呼ばれるのもその名残である(例:チャールズ皇太子(英))。
一般的に「皇帝」と訳される称号
- ローマ皇帝 ヨーロッパ諸国における「皇帝」のルーツ。複数の役職の統合体であり、漢字文化圏の皇帝とは意味合いが大きく異なる。詳しくは該当記事を参照。
- エンペラー、カイザー、ツァー(ツァーリ) いずれもローマ皇帝に由来する称号である(それぞれ英語、ドイツ語、ロシア語。エンペラーは将軍を意味するインペラートルに由来。後2者は独裁官ガイウス・ユリウス・カエサル及びその養子で初代皇帝のアウグストゥスの家名カエサルに由来)。基本的に自国がローマ帝国の後継であることを誇示する意味合いがあり、特に神聖ローマ帝国でその意味合いが強かった。しかし後にナポレオンがローマを真似て国民の投票で皇帝に即位してしまったため、以後ヨーロッパ(およびその影響が強かった中南米)には皇帝が乱立しこの意味合いは薄れた。現在は欧米にこれらの称号を名乗る君主はいない。
- シャー イスラム圏の君主称号。インドのムガル帝国でも用いられた。王を統べる王、と言う程度の意味合いである。余談であるが、イギリス女王ヴィクトリアが得た皇帝号はこれに由来し、ヨーロッパの君主では珍しくローマ帝国と無関係な皇帝号であった。現在はイランのパーレビー朝が革命により断絶してしまったため、シャーを名乗る君主はいない。
- スルタン 同じくイスラム圏の君主称号であるが、国力や政体、時代により訳語にばらつきがある。一般に、かつてのトルコのスルタンは「皇帝」と訳されるが、現在単独のスルタンが君臨するブルネイなどは「国王」、複数のスルタンから互選で国王が選ばれるマレーシアでは「首長」と訳される。訳語を用いずそのまま「スルタン」としてしまう場合も多い。
- インカ皇帝(サパ・インカ) かつて南米に存在したインカ帝国の君主は一般に皇帝と訳される。また、現代のメキシコにあったアステカ帝国の君主も皇帝と訳されることがある。
皇帝タグのつく人物・キャラクター
架空の「皇帝」は大体において「武力で国を統一した者」であるか、圧政を布く暴君として描かれる。この傾向はSFで特に強いが、君主国である日本やイギリスなどでは名君としての皇帝を描く試みもある(星界シリーズなど)。
実在の皇帝
アジア
- 始皇帝:紀元前221年に現在の中国主要部を統一し、中国史上はじめて皇帝を称した人物。
- 曹丕:三国時代における魏の初代皇帝。実は文学マニアでもあった。曹操の息子。なおその曹操は存命時は皇帝には就いていない。
- 劉備:三国時代における蜀の初代皇帝。なぜかいい人として描かれる事が多い。
- 劉禅:三国時代における蜀の二代目皇帝。暗愚として有名であるが……。
- 孫権:三国時代における呉の初代皇帝。酒乱。
- 司馬炎:曹魏から禅譲を受けて晋の初代皇帝に。三国時代を事実上終結させた。諸葛亮のライバルとして知られる司馬懿の孫。
- 天皇:象徴君主または立憲君主。英文で「emperor」と表記されるため現状、世界で唯一の皇帝だとも日本で言われる。ただし欧米の伝統や一神教では、唯一の皇帝(sole emperor, one emperor)という言葉は「唯一神(sole God, one God)」を意味しており、日本とは価値観の食い違いが見られる。なお、戦前は「天皇」という称号以外に「日本国皇帝」と称したこともあり、一部の詔書等に記録が残っている。
- 征夷大将軍:室町幕府、江戸幕府の将軍は、対外的に皇帝を自称したことがある。当然中華帝国側は認めなかったため、中国向けには「日本国王」のちに「日本国大君」を名乗った。
- 袁世凱:中華民国の北洋軍閥の総帥。晩年に「中華帝国皇帝」を名乗ったが、他の軍閥が袁の支配に反発したため即位を取り消し、ほどなく病没した。皇帝即位の正当性を除けば中国史上最後の皇帝となる。
- 宣統帝溥儀:ラストエンペラーの名で知られる清朝最後の皇帝。実質的な中華王朝最後の皇帝。後に関東軍から満州国の君主に祭り上げられ、皇帝の座についた。ただし現在かつての満州国の領域を支配する中華人民共和国においては、その存在は認められていない。
など。
ヨーロッパ
- ガイウス・ユリウス・カエサル:古代ローマの軍人、政治家。名前や役職が西洋における皇帝に相当する言葉の語源となった。
- アウグストゥス:カエサルの養子でローマ帝国の初代ローマ皇帝。称号の一つ「プリンケプス(第一市民)」は「プリンス」の語源である。
- ナポレオン・ボナパルト:貧乏軍人からヨーロッパを跨いだ大帝国の皇帝になった地上最強の男。凱旋門を建てたり、統治の過程で3人の執政官による政体である統領政を採用したり、国民投票で皇帝になったりと当時の古代ローマブームの影響がみられる。
- ピョートル1世:ロマノフ王朝の初代ロシア皇帝(ツァーリ)。野蛮だったロシアにヨーロッパの先進的文化を取り入れた開明派。
- ヴィクトリア女王:19世紀において絶大な権力を誇った大英帝国を治めた女王。イギリス国女王と並んでインド皇帝を兼ねていた。
など。
ニックネームで「皇帝」と呼ばれる人物
- マリア・テレジア:神聖ローマ帝国の皇后。国政の実権を握っていたため、一般に「女帝」と呼ばれる。
- ミハエル・シューマッハ(F1ドライバー)
- エメリヤーエンコ・ヒョードル(格闘家)
など。
伝承・宗教での「皇帝」
- 唯一神:一神教では、「唯一神(one God, sole God)」が「唯一の皇帝(one emperor, sole emperor)」であり、「真の皇帝(true emperor)」であると信じられている。ほとんどはユダヤ教、キリスト教、イスラム教がその例。同義語としては、「王の中の王(king of kings; lord of lords)」など。
- 「諸王の王」、「王中の王」、「王の王」、「キング・オブ・キングス」、「ロード・オブ・ローズ」という表記もされる。
架空の皇帝
- パラメキア皇帝(FF2)
FF2に登場するボスキャラクターで、世界征服を企むパラメキア帝国の支配者。
皇帝(ファイナルファンタジー2)を参照。
- バレンヌ皇帝
ロマンシングサガ2のプレイヤーキャラ。
作中期間が幾世代にもまたがるので、複数が該当する。(画像は最終皇帝)
バレンヌ帝国の君主で、七英雄を倒して太平の世を築くべく世界各地を駆け巡る。
固有の関連タグ:最終皇帝
- シャルル・ジ・ブリタニア
コードギアスの登場人物。神聖ブリタニア帝国皇帝。
主人公ルル-シュの実父で、彼がルルーシュとナナリーを棄てたことから物語は始まる。
田中芳樹のSF小説「銀河英雄伝説」の登場人物で銀河帝国側の主人公。
ラインハルト・フォン・ローエングラム。旧姓ミューゼル。
軍功を重ねてゴールデンバウム王朝で元帥となり、門閥貴族連合を一掃し、フェザーンを制圧し、自由惑星同盟を無力化して、自ら帝冠を頭上に頂き、宇宙暦799年、新銀河帝国皇帝となりローエングラム王朝を開いた。
生まれながらの皇帝ではなく、実力によってゴールデンバウム王朝をなぎ倒し「皇帝になった」人物である。
治世はゴールデンバウム王朝の旧弊を一掃し、農民金庫を創設し、一定の枠内で言論の自由を認め、インフラ整備を行い、裁判制度を改め、フェザーンに遷都しわずか2年半の治世の間に帝国のみならずフェザーン、同盟領の大半を含め、当時の銀河系人類社会の様相を一変させた。
皇帝即位後は、兵士から「ジーク・カイザー!」の歓呼の声で迎えられ、戦神の如く尊崇され、逆に敵対者にはいささかの畏怖を押し殺す感じで、敢えて民主制の陽気を示すように「くたばれカイザー!」と言われる。
そのあまりに劇的で圧倒的な行動力を戦いに投じた生命力は、損耗を強い、命数を使い果たすようにわずか25歳で彗星が流れるように死去した。
コードギアスの主人公で、紆余曲折を経て神聖ブリタニア帝国99代皇帝となる。
即位時のフルネームは「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア」。
- 概念皇帝
石果世界の用語。ダール教の俗界における統治者の称号。南半球帝国の元首が祭皇から与えられて即位する。始祖はパクシオン偽眼帝。ヤイルバルク朝から遺伝した第三の眼を皇位継承権の証とする。
- 皇帝トリノミアス3世
銀河戦士バルロイの登場人物……もとい、宇宙戦士バルディオスの登場人物。S-1星皇帝。
放射能に汚染されたS-1星の現状を憂いたガットラーのクーデターによって、アフロディアに射殺されてしまうというチョイ役だったのだが、ふたば☆ちゃんねるの二次裏板(虹裏)に「お前達、もう寝なさい」の台詞と共に掲載され、「誰このジジイ」というレスが付き一気に知名度が上昇。以後、「陛下」として親しまれている。
またの名をダース・シディアス。
太古の時代に滅び去ったとされていた悪の宗教シスの精神を受け継ぐシスの暗黒卿であり、映画STARWARS六部作における全ての黒幕。
- 暗黒皇帝ガナサダイ
ドラゴンクエストⅨに登場した敵キャラクター。魔帝国ガナンの皇帝。シリーズ初の皇帝
フリーの戦略SLG『LostTechnology』に登場するキャラクター。
プレイヤー勢力の一つ、独裁軍事国家「ライナルト帝国」の皇帝。
『超光戦士シャンゼリオン』に登場するライバル。その正体はダークザイド幹部・暗黒騎士ガウザー。
終盤で東京を独立させて『東京国』の皇帝となったが…。
テニスの王子様の立海大附属中学校テニス部副部長。作中での通り名が「皇帝」。
ほか、該当する人物、キャラクターがいれば加筆をお願いします。
その他の「皇帝」と呼ばれる物
- 皇帝(エンペラー)
ジョジョの奇妙な冒険第三部の登場人物、ホル・ホースのスタンド名。拳銃の形をしたスタンド。
- ダッシュ1号・皇帝(エンペラー)
徳田ザウルスのミニ四駆漫画『ダッシュ!四駆郎』の主人公・日の丸四駆郎のマシン。
- シンボリルドルフ(競馬)
日本競馬史上初の無敗の三冠馬、かつG1七冠馬、生涯成績16戦13勝。語源(神聖ローマ帝国皇帝ルドルフ1世から)と圧倒的な強さから「皇帝」とあだ名される。
ONEPIECEに登場する四人の大海賊の称号。偉大なる航路の後半の海、新世界に皇帝のように君臨していることからそう名付けられた。一部では別の名称も生まれている。