コンバットブーツは、軍隊などで戦闘、行軍、野外作業などに用いられる靴の総称。
靴の「種類」ではなく「用途」を意味する言葉なので、時代や地域などによって様々な様式のものが存在する。
概要
兵士らに頼りにされつつも憎まれたりもする相棒。
新兵は新しい靴の革の硬さに苦しめられ、やや時が経つとロードワークや武装行軍の際に重さに泣き、靴が足に良い具合に馴染む頃には水虫を促進させる非道い奴だが、それでも兵士らを足の怪我から守る影の立役者である。
現在最もポピュラーなもの
一般的に脚首の保護や異物の侵入を阻止する為にハイカットの編上靴が用いられる。
現在広く用いられているものは、革と合成繊維を組み合わせたもので、特に摩耗が多いつま先などは摩耗に強い革、足首など屈曲する部分はしなやかで繰り返しの屈曲に強い合成繊維が用いられ、従来の総革製のものよりも軽く、快適性が向上したという。
コンバットブーツは長らくの間、耐久性と生産性を重視していたために靴底や側面などにクッションが無く、例えば同じような形・用途である登山靴と比べると疲れやすい傾向があった。現在では、兵士の総数の削減や人間工学の積極的な導入、生産技術の向上から、クッションが内蔵されるなど以前よりも快適性は向上している… が、脚型が合わない人にとってはやっぱり地獄である。
近年ではゴアテックスなどの防水透湿素材が奢られる事もあるというが、靴そのものの厚さや、最外部の材質を考えれば、従来よりもややマシという程度で大して意味が無いような気もする。
かつて主流だったもの
かつては、分厚い革で出来た重厚な造りのブーツが主流であった。
しかしながら、前述の通り見事な作りでも疲れやすく、特に新品で革が硬いうちは履いて軽く走るだけでも大変だったという。
第二次世界大戦の頃までは、ゴム製の靴底のものは少なく、革製の靴底に鋲が打ち込まれたものであった。
ミドルカットブーツ
高さが足首の高さのもの。『アンクルブーツ』とも。
第二次世界大戦の頃までは大きなシェアを誇っていた。旧日本陸軍の軍靴もこの様式である。
ハイカットブーツやロングブーツに比べて材料が少なくて済む一方で、足首の保護や異物の侵入には弱く、兵士らは靴を履いた後ゲートル(スパッツ:脚絆)を締める必要があった。
現在では、ミドルカットのブーツは主力ではないものの、脅威度の低い任務やトレーニングで使用する事があるという。
2バックルブーツ
上記のミドルカットブーツに足首を絞め上げる革製の部品を取り付けてゲートル(スパッツ)を不要としたもの。
横から見るとバックルが縦に2つ並んでいるように見えるため、この名がついた。
第二次世界大戦期のアメリカ軍、戦後のフランス軍や東欧諸国で使用された。
日本では戦後、アメリカ軍を範とした警察予備隊、保安隊で使用されたほか、アメリカの物資支援を受けた警察でもこの種のブーツが用いられた。現在でも、警察では当時に似た様式のもの使用されている。
特殊な用途のもの
砂漠・熱帯向け
1950年代以降のヨーロッパのアフリカ諸国の紛争への介入や、ベトナム戦争に伴って、大部分を布製としたコンバットブーツが登場した。
これは、ハイカットやミドルカットの従来の総革製のブーツの外観を踏まえながら、大部分をスニーカーのように丈夫な布で作ったものである。
それまでの総革製のブーツの場合砂漠地帯では、酷暑のために靴の中の蒸れが酷くなり、兵士らの体力を奪い疲労の原因となった。
また、熱帯では酷暑のほかに、湿地帯や川などを横切る際に靴が水に浸かる事になるが、総革製のブーツであれば、履いた状態で乾くことはまずあり得ず、やはり兵士らにとって大きなストレスとなった。
一方で布製であれば、運が良ければ一日中履きっぱなしでも夕方には不快にならない程度に乾き、仮に乾燥が不充分でも1晩寝ている間には乾かせる事ができる。総革製のブーツには無い利点であった。
ベトナム戦争で米軍が使用したものは「ジャングルブーツ」と呼ばれたほか、現在でも中東地方で活動する兵士らには、「デザートブーツ」と呼ばれるこの種のブーツが支給されている。
ジャングルブーツ。非常に柔らかいので普段履きし易い。
空挺部隊向け
パラシュート降下で着地する際の強い衝撃から足首を守るため、通常のものよりも鳩目の数を増やしてよりタイトに絞め上げることができるようになっている。このため、通常のものよりも足首が頑強に固定される。
特殊部隊向け
一口に特殊部隊と云っても、特定の建物に立て篭もる犯罪者を排除することに特化した治安機関系の対テロ部隊から、無人の原野を長期間徒歩で移動する軍や諜報機関の特殊部隊など多種多様な部隊があり、それぞれの任務に最適化したものが使用される。