ゲートル
げーとる
足首から脛に掛けて着用する保護具。一般的に、捻挫等の怪我の予防や異物の侵入の防止、巻き込み事故の予防に用いられる。
歩兵向けの装備品や、登山者の装備品としては、編上靴の普及以前には全高の低い靴とゲートルと言った組み合わせが一般的であった。
現在では、登山靴や軍靴の改良が進み、軍用としては専ら儀礼用と山岳用の装備を除き使用されなくなっている。
当記事では形状による分類の「レギンス型」と「巻脚絆」を解説する。
大日本帝国海軍の兵用第一種軍装着用時の例。巻脚絆の描き忘れではない。
レギンスを参照。
軍用としてはアメリカ軍、イギリス軍が歩兵用として採用していたほか、大日本帝国海軍など各国海軍でも兵用の装備品として、儀礼用、陸戦用に支給していた。
現在では、陸戦にあたる兵士には半長靴が支給されるため、儀礼用として兵士が礼装を着用する際に使用される。
日本では海上自衛隊の海士の制服に名残が残る。
産業用としては、溶接作業、機械作業、土木工事現場等で用いられる。
また、登山用に小石、水、雪が登山靴に入らないようにする為に用いられる。
イギリス軍における着用例。フォークランド紛争の頃まで使用された。
幅およそ5cm程の包帯状の布製である。片端に着用時に端面を固定する為の紐が付く。
長さは1.5~3mほどで、靴の上からズボンの裾を押さえるように巻いたり(イギリス軍、フランス軍)、足首からひざの下まで覆うように巻く(大日本帝国陸軍・海軍陸戦隊及び日本国内の肉体労働者)等、用途や組織によって着用方法に差異が見られる。
大日本帝国陸軍においては、初期にはレギンス型の脚絆を使用していたが、日露戦争中に巻脚絆へと改められた。
陸上自衛隊においては山岳戦が想定される部隊や施設科等は支給されていたが、現在では姿を消している。
民間では戦前から昭和中期に掛けて土木作業の従事者、国鉄職員、登山者などが着用した。
巻き方
日本では、兵役や各種学校における軍事教練等で軍隊式の巻き方を習得する者が殆どであった。
そのため、軍隊式の巻き方は、軍隊のほか工事現場や鉄道の連結手、保線工手、機関士(機関助士)、登山者等の民間分野でも用いられた。
- 1 靴を履き、軍袴(ズボン)の裾を靴下の中に収める。
- 2 靴の履き口の部分を覆うように2~3周きつく巻く。巻き方が強すぎると血行が悪くなり、緩いとゲートルが解けて転倒の危険がある。
- 3 2~3周上向きに巻いた後、ふくらはぎの辺りで、膨らみに合わせる形で折り返す。折り返しは、脛の部分で、ゲートルがへの字状になるようにする。これを2回繰り返す。前面から見ると筍の皮のような状態になる。
- 4 膝の下辺りまで巻き上げる。特に最後の1~2周はきつめに巻く。
- 5 末端に縫い付けられた紐で解けないように固定する。陸軍では営内巻きと呼ばれる紐全体を膝下に巻いて済ませる巻き方と、戦闘巻きと呼ばれる脛の部分で紐を交差させる巻き方の2種類があった。