概要
2020年24号の週刊少年ジャンプから連載を開始され、14週という近年稀に見る速さで打ち切られた漫画作品タイムパラドクスゴーストライター。
本来は「タイムパラドクスゴーストライター」で「タイパラ」と略されるはずだったが、本作ではタイムパラドクスは起こらず、ゴーストライターも出てこない。
そのため読者の間では「タイパラ」は略称として不適切ではないかとの意見があった。
さらに連載が進むと、盗作というクリエイターにとって極めてデリケートな素材を雑に扱う内容や、他作品(特にシュタゲ)の低品質なパクリに批判が集まった。
そうした悪評によって元々の略称に加え、「タイパク」がより実態に則した略称として、あるいは単に蔑称として使われるようになった。
なお『タイムパラドクスゴーストライター』と、略称としても特に不都合はない。
中には悪気なく「タイパク」と略してしまう人もいる。そんな時は公式の略称「タイパラ」をそっと教えてあげよう。
なお海外での蔑称に、名作SF映画『Back to the future』を捩った『Fuck to the future』がある。
蔑称をつけられた要因
「タイパク」の背景には、本作に対するジャンプ読者の多大なるヘイトがある。
その凄まじさたるや、補正期間が終わった瞬間に掲載順が急降下しドベ常連になったほど。
また14週で打ち切られたことに対し「判断が遅い」、「現在のジャンプでは10週打ち切りはないことの証拠物件」とまで言われた。
そこまでのヘイトを稼いだ理由は以下の通りである。
主人公の人間性に問題がある
主人公・佐々木哲平は一見「才は凡庸だが、本誌連載という夢に向けて努力する好青年」のように描かれている。
それでは、彼のWK関連の主だった言動を文字に起こしてみよう
- ホワイトナイト(以下「WK」)を未来から盗作した
- 真実を伏せたままアイノイツキ(本来の作者)をアシスタントとして雇用、WKの盗作を手伝わせる
- アイノイツキが新たに連載する作品を、盗んだWKで潰そうとする
これでは好青年どころか、大悪党である。
それ以外にも
- 他人の原稿の上で飲食
- アシスタントと一緒に作り上げた原稿を無言で破り捨てる
- 〆切りを無視して編集部に不法侵入し、ネームを押し付ける
……と、マナー・モラル・法律違反を挙げればキリがない。
「哲平は平凡な善人」とする作者と、「とっとと裁かれろこのカス」と考える読者。両者に生じた著しい認識の乖離が「タイパク」誕生の屋台骨を形成している。
作中の描写に説得力が無い
打ち切り漫画なので、回収しきれなかった伏線や出し切れなかったネタのせいで辻褄が合わない部分があるのは仕方のないこと。
が、本作にはそれ以外の部分でも「本当にそうなのか……?」と首を傾げてしまう描写が多々ある。
作中作のホワイトナイトを例に挙げると
- WKを読んだ編集がアヘ顔で椅子から転げ落ち「神漫画だ……」と絶賛
- そのくせ内容は抽象的な賞賛セリフばかり
といった感じ。面白さの根拠が「登場人物が凄いと言っているから」のみで、WKの内容が絵に起こされたことはほぼ皆無。
未来ジャンプが届かなくなった時も「どのように自力でWKを描くか」は一切描写されず、アンケート上位で安定しているという結果だけが示されている。主人公がどのように成長し、WKの続きを描けるようになったのかは一切不明なのだ。
総じて漫画として盛り上がる点が絵で描写されず、見たくもない主人公の悪行と自己弁護だけは毎度毎度バッチリなため「もっと他に描くことないの?」と感じた読者も多い。
この点に関しては読者との認識のすれ違いではなく、純粋に漫画家として技量不足と言えるだろう。
主人公だけに都合の良い歪んだ世界
本作は基本的に、主人公の手前勝手な自己完結で話が進んでしまう。
主人公の盗作を打ち明けない理由は
- 盗作を打ち明けたら、アイノイツキがショックで筆を折ってしまうかもしれない
- 読者のために、失われたWKを世に届ける責任がある
というもの。
しかし、一般的な倫理観を持つ者からすれば
まず盗作をやめろ。他人の事情を勝手に決めつけて盗作の理由に使うな
でしかない。
盗作されたと知ってアイノイツキが筆を折るならば、それは盗作した主人公のせいであるし、本来のWKが失われたのも主人公に原因がある。
そもそもアイノイツキは原稿を破かれようが、構想中のWKをパクられようが自分の漫画を描き上げる程に漫画への熱意と才能に溢れている。今更主人公が盗作を打ち明けた程度で筆を折るようには到底見えない。
さらに言うなら哲平は自分の意思で盗作した。
最初だけは自分の見た夢だと思ったので言い訳は効くが、以降の盗作と自覚した後でも止めていない。
結局のところ主人公の言い分は「アイノイツキのため」「読者のため」と言いつつ、自分の犯した罪と醜悪な人間性から目を背けているだけに過ぎないのだ。
しかし本作では、主人公が「○○としたら!」「○○かもしれない」と自分に都合の良い思考をすると、それが正しいことになってしまう。
さらに、主人公の考えを糾弾する者も作中には一切登場しない。哲平がどれほど気色悪い自己擁護をしても、肯定される展開しか来ない。
上記の通り哲平はそもそも主人公の器ですらない。そんなクズに都合よく回り続ける世界は、恐るべきスピードで読者の不満を溜めることとなった。
安易なパクリ
他作品からパクったと思しき要素が散見される。
特に、未来ジャンプや宝くじの当たり番号等が送られてくるタイムマシンと化した電子レンジが「これ電話レンジじゃん」と言われることが多い。宝くじも、2020年時点ではロト7のところがシュタゲと同じロト6だったりと、表層だけ模倣したとみなされることがある。
似たような要素があっても独自の面白さを出せていればまだ良いが、徹頭徹尾不快な主人公と、ちぐはぐな構成も相まってタイパクは「作中作で未来の名作をパクり、作品自体も過去の名作をパクる」という強烈な悪印象を(特にシュタゲファンに)植え付けてしまった。
余談
ヘイトの一因として、本作の第一話と鬼滅の刃の最終話が同時に掲載されたことが挙げられる。
最終回のセンターカラーは原則貰えないとはいえ、週刊少年ジャンプ24号の表紙カラーでは炭治郎が隅っこにおいやられ、中央に佐々木哲平(タイパラ)がデカデカと居座っている。
実質、鬼滅の後釜と編集部が目している……と捉えられてもおかしくない扱いをタイパクが受けていたのは事実である。まあ作者に非はないのだが。
また、鬼滅の刃の作者が未来のアイノイツキと共通点を持つ(30歳前後の女性作家、初連載で特大ヒット)ことから、
- 「吾峠先生から鬼滅を奪ったと考えると本当に許せない」
と、現実にの作家置き換えて哲平の所業に憤るジャンプ読者も出た。
原作者である市真ケンジがTwitter(当時、現X)にて「作品の略称募集」なる企画を第一話掲載後に唐突に始めた。
しかし、この時点で「タイパク」という略称は(蔑称の意味も大きいが、普通に略称として)ネット上で浸透しており、さらにその「略称募集」の中には「タイパク」は無かったため、「タイパクという略称は都合が悪いのか」と呆れられた。
- さらに、これに対して「もうタイパクって略称ありますよね??」とリプが送られていたが、市真の回答は無言でブロックだった。
関連タグ
佐々木哲平(タイパラ):作品の主人公。作品にこの蔑称が付いた最大の要因。