「バットマン/ヘルボーイ/スターマン」とは、DCコミックから出版されている「バットマン」「スターマン」および、ダークホースコミックスから出版されている「ヘルボーイ」とが共演する、クロスオーバーコミックのタイトルである。
作品解説(ネタバレあり注意)
98年に発行した、三タイトルのクロスオーバー作品。
ヘルボーイのマイク・ミニョーラが作画を担当している。
邦訳版は、小学館プロダクションより「バットマン/ヘルボーイ/スターマン マイク・ミニョーラ バットマンコレクション」のタイトルで発売。同タイトル以外にも、「バットマン:ゴッサム・バイ・ガスライト」「バットマン:レジェンズ・オブ・ダークナイト#54『聖域』」の邦訳が掲載されている。
作風は「ヘルボーイ」に合わせ、オカルティックな敵と戦うものとなっている。
BOOK1
ゴッサムシティ。ある夜にバットマンはジョーカーを追うが、逃がしてしまった。
バットマン=ブルースは、ゴッサムにテッド・ナイトを呼んでいた。ウェイン産業が出資していたエネルギー関連の研究発表の講演があるのだ。
講演は滞りなく行われていたが、突如ネオナチ風の若者たちが乱入。彼らは電撃の魔術を用いてテッドを誘拐、駆けつけたバットマンすらも翻弄し逃走してしまった。バットマンはそれでも若者の一人を捕まえるが、「10月が来る」と言い残し、彼はバットマンの目前で自分に電撃を浴びせて自殺してしまった。
その日の夜に、バットシグナルに導かれて署にやってきたバットマンは、ゴードンの隣に立つヘルボーイの姿を認める。BPRDが、現在追っている事件と関連があるためにと派遣してきたのだ。
当初は一人で十分だとはねつけるバットマンだったが、ヘルボーイに諭されてともに行動する。
やがて、人気の無い飛行場に、あのネオナチの若者たちが集まっているのを発見。その中にはナチスの高官らしき男と、彼とともに飛行機で連れ去られそうになっているテッドの姿があった。
バットマンとヘルボーイは、助けようと駆けつける。魔術を用いる若者たちやナチスのロボットと戦い、叩きのめす二人だが、ナチスの高官らしき男は「なんとしてもテッドをサン・ディアブロに連れて行かねばならん。必要なら開門の呪文を使え」と言い放ち、飛行機に乗り込み離陸。
バットマンは飛行機に取りつくが、兵士により落とされてしまった。
そしてヘルボーイも、開門の呪文を止めようとしたが間に合わなかった。発動した呪文はネオナチの若者たち全員、そして周囲の建物などすべてを吸い込み、後には何も残らなかった。
かろうじて吸い込まれずに済んだバットマンとヘルボーイ。すぐに飛行機で後を追おうとするが、空には再びバットシグナルが。
署に戻ると、ゴードンからジョーカーから犯行予告が届いたと聞く。誘拐したゴッサムの政財界の子供達を、自分と同じ異常者にするというのだ。
バットマンは、この件を片付けてからサン・ディアブロに向かうことに。
当面は一人でサン・ディアブロに向かわねばならなくなったと、不安になるヘルボーイ。だがその場に、「一人じゃないぜ」と、ジャック・ナイト=スターマンが舞い降りた。
BOOK2
ウェイン名義のプライベートジェットを借り、ジャックとヘルボーイはサン・ディアブロへ向かう事に。
機内でジャックは、テッドの研究内容には神秘的なものは何もないとヘルボーイに告げる。
テッドをさらったナチスの高官も、現在BPRDが調査している最中との事。サン・ディアブロに到着するまで、一眠りして休む二人。
やがて、サン・ディアブロ上空に到着する。BPRDからの連絡で、サン・ディアブロは、元は銅を掘っていた鉱夫の街で、鉱脈が枯れた後にナチスが陣取ったらしい。
そして、テッドをさらったのは、オットー・ダンツ。悪名高きルードウィッヒ・ダンツの息子だという。
ジャックのコズミックロッドで、そのまま飛行機から一緒に降下するヘルボーイ。しかし砲撃を受ける。
ナチスのエクトプラズム砲の直撃をなんとか回避し、着地した二人。しかし彼らにナチスの偵察隊が迫って来た。彼らをロッドの光で気絶させ、隊長の口を割らせるヘルボーイ。
彼らは「10月の騎士団」。ナチス総統の意思を継ぎ、実現させるための作戦を遂行していたのだ。
その方法とは、旧支配者シュゴー・ヨグロスの召喚。かつても召喚され、レムリア人に封じられたものの、レムリアの都市をも破壊した巨大な怪物である。
テッドはその母星の光を集め、召喚のためのパワーを集める手伝いをさせられていたのだ。麻薬を投与され、テッドは操り人形と同じように意志を奪われているとのこと。
隊長をぶん殴って黙らせ、ヘルボーイとジャックは基地へと向かう。
コズミックロッドで空から攻撃するジャック。その隙をついて、オットーからテッドを奪い返し、退却するヘルボーイ。
ヘルボーイが持っていた解毒剤で意識を取り戻したテッドは、「シュゴー・ヨグロスの召喚装置にジャックのコズミックブラストを放てば、電圧が過負荷になり怪物にダメージを与えられる」と示唆。
ヘルボーイの持つ封印の呪文と組み合わせ、再び彼らは攻撃開始する。
まずは、ジャックが空中からナチスと怪物を攻撃。その間にヘルボーイが侵入し、大砲などの武器を破壊し、ナチスの兵士たちを蹴散らしていった。
合図でヘルボーイが呪文を唱え、その間に後退したジャックが後衛と装置の破壊とを行う。
召喚装置は過負荷を起こして暴走、怪物も呪文がきいて封印された。
ナチスの基地は崩壊、負け惜しみを口にするオットーと怪物とを巻き込んで大爆発を起こした。
「一晩で、親父も、世界も救ったんだ」と、得意げなジャック。
ヘルボーイはどうやって帰るか思案していたら、空にバットウイングのシルエットを発見。
「あっちもうまくいったみたいだな」と、満足げに呟くヘルボーイだった。
登場人物、その他
バットマン=ブルース・ウェイン
当該記事参照。テッド・ナイトの研究に出資していた。
ヘルボーイ
今回の事件を聞き、BPRDから派遣されてきた。
ジャック・ナイト
七代目スターマン。テッドの息子。テッドが誘拐されたと聞いて駆け付けた。
テッド・ナイト
初代スターマン。コズミックエネルギーの研究発表の際に連れ去られる。講演時に壇上では、スターマンの現役時代の姿が映し出されていた。ネオナチの若者たちに襲われても、拳をふるって自衛するが、呪文の電撃を受けて昏倒してしまう。
ジョーカー
冒頭でバットマンに追われていた。バットマンとゴードンとの会話内容から、七月にバーにて、アイスホッケーの試合よりも「フレイザー(精神科医フレイザー・クレーンが主人公のコメディ番組)」が見たいという理由で、客と従業員を皆殺しにした事件を起こしたらしい。
ジェームズ・ゴードン
ゴッサム市警本部長。ヘルボーイを「頼りになる男だぞ」と、バットマンに推薦していた。
ゴッサムの魔術師
最初にバットマンが訊ねた男。本名不明。占い師らしく着飾って魔術の大家のように振る舞い、富裕層から大金をせしめているらしい。市警の詐欺師担当課の名前を出したら、ジェリー・ジョバンニの名前を出した。
ジェリー・ジョバンニ
自動車修理業を営む男。その裏の顔は、逃走犯のために車を盗むこそ泥。頼むのは三下の犯罪者が多いらしく、名のあるヴィランなどの大物は、モーティ・スレードの方に頼むらしい。
顧客の事はろくなことにならないからと、あまり深入りしないようにしている。バットマンとヘルボーイに対し、すぐに協力的な態度になった。
モーティ・スレード
ジェリー・ジョバンニが、盗難車をさばいていた時の仲間。大物の犯罪者やヴィランなどから依頼を受け、逃走用の乗り物や場所を調達する仕事をしている。気が弱く、バットマンの姿を見ただけで逃走したが、ヘルボーイに先回りされて気絶しそうになり、簡単に口を割った。
オットー・ダンツ
ナチス戦犯、ルードウィッヒ・ダンツの息子。ヘルボーイいわく「罪状だけで本が書けるってくらいの大物さ」。
「10月の騎士団」を率い、テッドを誘拐してその技術を悪用し、旧支配者を召喚しようと企む。
10月の騎士団
今回の事件を起こした集団。ヘルボーイ曰く「マルタ騎士団やテンプル騎士団のドイツ版でな、第一次大戦後に国の復興と、次の戦争の勝利を目的に結成されたのさ」。
旧支配者を召喚する事で、世界に混乱と破壊を起こし、支配せんと目論んだ。テッドを誘拐したのは、星の光を集める装置を発明していたためで、それを改造して旧支配者の母星の光を集めて目覚めさせる予定だった。
召喚途中でも、光からパワーを引き出し使用する事は可能。テッドやジャックが用いるコズミックロッドのパワー同様に、巨大なエクトプラズム砲を発射する事もできる。構成員の隊長いわく「軍隊とて敵ではない」。
科学者と兵士の他、手から電撃を放つ呪文を心得たネオナチ風の若者たちで構成されている。空港では、大柄なロボット兵士も連れていた。
シュゴー・ヨグロス
10月の騎士団が召喚した旧支配者の一種。見た目は全長数十mの巨大なイカ。
10月の騎士団は、テッドにヨグロスの母星の光を集めさせ、そこからパワーを引き出して召喚および、兵器のエネルギー源に用いていた。