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女性の踊り手を意味するバレリーナ(イタリア語)に対して男性の踊り手を指す語はバレリーノだが、近年は主役級バレリーナの対義語としてこの呼称を見かけるようになった。


クラシックバレエにおける王子役の意義編集

クラシックバレエの多幕作品の代表的な存在としてチャイコフスキー三大バレエ「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」が挙げられるが、これらの作品は単に物語を音楽と踊りで表現したというだけではなく、さまざまな様式の踊りを積み重ねて構成した娯楽性の高いスペクタクルとしてデザインされている。そして、これらの踊りの最大の見せ場として主役のプリマバレリーナと、役柄上の彼女の恋人である男性ダンサーが踊るグラン・パ・ド・ドゥがある。


グラン・パ・ド・ドゥは通常は4曲で構成され、男女によるアダージォ、男性によるソロ、女性によるソロ、男女によるコーダが踊られる。男女二人の踊りでは男性ダンサーはプリマバレリーナをサポートし、女性一人では困難なポーズやリフトなどのコンビネーションによる踊りを実現させる。また、同時にこの踊りは主役男女カップルの恋愛感情ないし精神的な結合を表現したものとして、物語のクライマックスシーンを形成する。


このカップルの片割れとして男性ダンサーに「王子」というストックキャラクターが割り当てられているのは、恋愛を軸とした物語における理想的男性の像として最も典型的かつ普遍的役柄であることが背景にあると考えられる。三大バレエ以外のバレエ作品においても、この主役バレリーナの恋人役=パ・ド・ドゥの相手役としての男性ダンサーは王子ないし貴公子のイメージを踏襲したキャラクターを演じることが多い。こうした役柄を演じるダンサーをダンスール・ノーブル(仏語で貴族的な男性舞踊手の意)と称することもある。


クラシックバレエにおける王子役の造型編集

王子役の衣裳はいわゆる中世ヨーロッパの貴族男子の服装に準拠しているが、踊り手の衣裳としては上半身にブラウスシャツ、裾の短い長袖の上着、袖なしの胴衣などの組み合わせ、下半身には胴までのタイツを穿くのが典型的なスタイルである。タイツに関しては特に白いタイツの着用が多く見られるが、高貴な人物としてのイメージの形成、踊り手の下半身の線が舞台において鮮やかに映えること、などが考慮されたためと思われる。結果として、クラシックバレエはおとぎ話に登場する「西洋騎士の軽装に白タイツをはいた王子様」というストックキャラクターを生身の人間が演じる最大の機会となった。


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