概要
2008年9月20日に開業した、滋賀県守山市今浜町に所在するショッピングモールで、2023年現在は双日商業開発が運営を手掛けている。
後述の略歴にもあるように、開業から早い段階での様々な不振が響き、一時は「明るい廃墟」などと呼ばれるほどの閑散ぶりを見せたことでも話題を博した一方、リニューアルオープン後の2010年代後半からはかつての閑散さが嘘のような盛況ぶりを見せるという、劇的なまでのV字回復に成功した商業施設の一つでもある。
略歴
生誕と短かった栄光
ピエリ守山は、かつて琵琶湖の湖岸に存在したテーマパーク「琵琶湖わんわん王国」(1998年~2005年)の跡地に、「豊かな自然にかこまれて1日を"クルージング"」というコンセプトの元建設されたショッピングモールである。開業当初の正式名称は「琵琶湖クルージングモール ピエリ守山」であった。
誕生当初は滋賀県内随一の規模を有するショッピングモールとして期待され、大勢の客で賑わいを見せた。店舗数は180を数え、豪華客船をモチーフにしたという外観を擁し、湖岸に位置することからその眺望を売りにしたテラスなども配備された。加えて、湖岸の「ピエリ守山港」には遊覧船が寄港しており、「クルージングモール」の名に相応しい様相であった。また店内イメージキャラクターが何キャラが作られ、ソフト面でのアピールも図った。
競合店の大量出店
しかし、前後して草津市内に国内最大手のイオンモールが出店。ピエリと遜色ない専門店街に加え、総合スーパー・映画館にまで備えており、交通の利便性の良さからたちまち顧客を奪われることとなる。
更に琵琶湖対岸の堅田市の平和堂堅田店が、モール形態のアル・プラザへと進化。続く形で滋賀県南西部には次々と大型ショッピングモールが開店。2010年にはアウトレット形態の三井アウトレットパーク 滋賀竜王も開業し、ニーズの隙間を探す隙も無くなってしまい、開業から2年足らずで早くも客足は遠のいてしまったのである。
交通利便性の悪さ
元々ピエリの位置は対岸との距離が湖内でも最も狭い部類に入り、対岸からは琵琶湖を横断する琵琶湖大橋一本でピエリに行けたわけだが、この橋が有料(200円)であることがネックとなり、アル・プラザ開店後は対岸の顧客も奪われる始末となった。
続く滋賀県内のショッピングモールも、大体は県内の主要道か主要駅に位置する。守山市の代表駅である守山駅は新快速停車駅であり、駅自体の利便性は悪くないのだが、その駅から20分もかかってしまっている状態であった。更に、琵琶湖遊覧船の寄港も中止され、ピエリに公共交通で行く手段は絶えてしまった。
次々と撤退する店舗、親会社の倒産
客足を奪われてしまっては専門店も経営のやりようがない。2010年には早くも全店舗の3分の1以上が撤退し、モール案内図は白テープが次々と増えていった。加えて、運営会社である大和システムが民事再生法を適用するなど、周辺環境の悪化は追い打ちをかけている。
ついにはキーテナントとして開業時からピエリを牽引してきた食品スーパー「バロー」や「無印良品」など有名チェーン店の撤退まで招く始末となる。核店舗、それも日用品として最も重要な食品売り場を無くしてしまったピエリは、衰退に拍車をかけることとなった。
「生ける廃墟」
イメージキャラクターの代表格「ナズマ店長」によるブログ・ツイッターの更新も停止され、ピエリ内の書店・雑貨屋「ヴィレッジヴァンガード」にはピエリの経営陣や現状を皮肉るPOPが貼られるなど、早くも店内は末期の様相を示してきたが、状況が変わることはなかった。
しかしながら、元々周辺住民のみで「潰れるのでは」程度のネット上の書き込みしかなかったピエリの現状がいよいよ悪化していくに従い、ガラガラとなった店舗跡地を撮影してはツイッターなどにあげ、「廃墟のようだ」と皮肉る書き込みが増えた。次第に「生ける廃墟」「廃墟モール」の名でネット上では通じる有様となってしまい、本来狙った目的と全く異なる目的の「来店」が増加することとなる。
復活の狼煙と挫折
テナント数がなおも減少する中、親会社の大和システムがついにピエリの売却を決意。売却先企業により、スーパー・ホームセンターの誘致が行われ、ついに出店か?というところまで来た…のだが、2013年秋、1年以上に及んだ出店騒動は結局契約に至らずという結果に終わってしまった。この頃にはスポーツ用品店ヒマラヤも撤退し、いよいよ小規模の専門店が十数店舗という、開業当時を見れば信じられないほどの惨状を見せることになる。
余談ではあるが、この頃対岸にかつて存在した遊園地「びわ湖タワー」の巨大観覧車が、遊園地閉園から13年もの時を経てベトナムに移設されることが決まった。完成当時世界一の大きさを誇った大観覧車であるが、皮肉にも衰退しつつあるピエリの開業当時から、廃墟としてその姿を晒し続けてきた。そんな観覧車が、ピエリの行く末を見守ることなく、琵琶湖から姿を消したのである。
部分閉鎖
13年10月にはついに残存店舗は8店舗まで減り、11月には6店舗、2014年初頭には4店舗にまで減ってしまった。フードコートからは店舗が消える結果となり、残存店舗から「世界一大きいペットショップか、世界一大きい宝くじ売り場か」とまで言われる状態となる。
そして、僅か4店舗のために巨大な設備を全て公開するという効率の悪さや、「廃墟」として写真撮影をするものに業を煮やしたか、店舗側は店内施設の大部分の閉鎖を決意。出入口は各店舗に繋がる3箇所のみを除いて全て閉鎖、通路も通行禁止となり、店舗間移動は店外を通じてしか出来なくなってしまった。
再売却と、リニューアル
この頃再びピエリの運営会社が変更となった。部分閉鎖もこの新会社の指示によるものと考えられる。新会社はピエリを全面リニューアルし、2014年秋までに100~200の専門店を擁するショッピングモールとして開業する意向を示した。暗黒の道を歩むだけであったピエリに、ようやく一筋の光が差した…?かどうかは分からない。
完全閉鎖へ
2014年2月半ばには、これまで「絶対に閉店しない」と意気込んでおり、末期には食事施設以外では最大の集客を誇ったペットショップが閉店し、堅田に移転することとなった。そして、2月末をもって全ての店舗が閉店し、まもなくピエリそのものもリニューアルのため休館する旨が発表される。最終営業日まで残ったのはカフェと宝くじ売り場であった。
そして復活へ
2014年2月の休館後、リニューアル工事が開始された。その間、再オープンに向けたテナント誘致が行われた。運営については、交渉の後に双日商業開発が運営会社となる形で、2014年12月17日にオープンすることが決定した。
リニューアルオープンに際しては、それまでの小規模テナント200店体制から、海外ブランドの大型店を中心とした100店舗体制へと移行し、テナントの総入れ替えを断行するのみならず、フットサルコートやアスレチック、温浴施設の併設も実施された。
このように、県内にない有名ブランドの店舗を引っ張ってくる戦略が功を奏してか、リニューアルオープンから1年後の時点で、既にテナント数が110店舗を突破。また同時期には消費税免税手続き代行カウンターも設置されるなど、外国人観光客の誘致に向けた取り組みも積極的に行われた。
2023年現在では、リニューアルオープン当初からのH&MやZARA、GAPなどの、所謂ファストファッションを代表するブランドに加え、JINS、マツモトキヨシ、ニトリなども入店。「びわこスカイアドベンチャー」「めっちゃさわれる動物園」などの屋内体験型施設も人気を集めており、往時の「明るい廃墟」も今は昔と言わんばかりの盛況ぶりを取り戻しつつある。