序幕
彼女は、学者でもなければ、作家でもなく、
芸術家でもなければ、貴族でもない。
ただの、街道沿いの宿場町に住む、
宿屋の娘であった。
彼女は、街道から来る旅人から物語を聴き、
街道をゆく旅人に物語を語った。
物語を愛し、物語を語ることを愛し、
そしてなにより、物語を聴く人々を愛した。
そんな彼女を、彼女の仲間たちは、
懐かしそうに語る。
ある絵描きは、「不思議な人だった」と。
ある戯曲家は、「掴みどころのない小娘だった」と。
そしてある語り部の兄は「彼女こそが、
“グリム童話”の源泉である」と。
彼女の名は、ドロテア・フィーマン…
人は彼女をこう呼ぶ。
「語り部の中の語り部」と――
ストーリー
“フィーマン”の想区
開幕:先に訪れた、“フランケンシュタイン”の想区での、パラケルススからの情報を元に、一行はキュベリエの導きで、“フィーマン”の想区に足を踏み入れる。どこまでも続く道がつらぬく世界に戸惑いつつも、まずは遠くに見える街に向かい、歩を進める。
不思議な街
開幕:街にたどり着いた一行。そこは、東西南北から、人と物が集まり交錯する、宿場町であった。行き交う人々の熱気と、そして、なんとも説明の出来ない奇妙な感覚にとまどいながらも、情報を収集するべく、さらに街を進む。
終幕:街を調査するも、違和感の正体がつかめない一行。酒場に入り小休止し、そこの主から、この想区の住人は、大半が『空白の書』の持ち主であり、強制される運命を持たないという事実を教えられる。“フィーマン”の想区とは、ストーリーテラーのいない想区だったのだ。困惑する一行だったが、まずは創造主ドロテアを探すことにする。その時、謎の人物が彼らを見つめていた。
案内人現る
終幕:ドロテアを探す一行。しかし手がかりは見つからない。そんな彼らの前に現れたのは、謎の男(?)、「夜の帝王」を自称する、カッツェであった。ドロテアと顔なじみだという彼は、案内を買って出る。あからさまに怪しげな男ではあったが、ドロテアと会うために、一行は彼の申し出を受ける。
罠Ⅰ
開幕:カッツェの案内のもと、一行は宿場町の裏通りの怪しげな場所に連れて行かれる。そこに現れる、謎の刺客。問答無用で襲いかかる彼女らと、一行は、戦うことになる。
終幕:謎の刺客に勝利した一行。しかしそれは罠だった。カッツェに人質に取られるエレナ。そこに現れる謎の男たち。彼らの正体は、ドロテアを守る“ブレーメンの音楽隊”であった。一行をプロメテウスが送り込んだ刺客だと誤解した彼らは、一行に詰め寄る。だがその時、謎の声が、彼らの元に響く。戦いをとめたその声の主は、ドロテア・フィーマンだった。
神殿への道
終幕:翌日、ブレーメンの音楽隊に案内され、ドロテアがいるという神殿に向かう一行。その途上で、この想区は「街道の想区」であり、その出入口が外部と繋がっているため、常にプロメテウスの脅威にさらされていることを知らされる。
調律の神殿
開幕:ドロテアがいるという「調律の神殿」を訪れた一行。その荘厳な造りに息を呑みつつ、妙な違和感を覚えるものを見つけ、首をかしげる。そこに知らされる、プロメテウスの刺客の襲来。一行は、現れた敵を迎撃すべく向かうが、現れた敵は、かつて他の想区で出会った、強者たちであった。
終幕:強者たちに勝利した一行。傷ついた神殿の者たちと共に、ドロテアに誘われ、まるで普通の民家のような造りの、本殿を訪れる。そこで対面したドロテアは、一瞬で、負傷者たちの傷を癒やす。笑顔で一行を迎え入れる彼女を、エレナは無意識のうちに、「ドロテアお姉さん」と呼んでしまう。
語り部の聖女
開幕:一行と対面したドロテアは、多くの事柄を語る。自分が、かつてグリムノーツの一員として旅をし、モリガンとなる前のエレナから、姉も同然に慕われていたこと。そして、自分こそが、この想区のストーリーテラーであること。すでに自分は命を終えた後だということ。彼女が、かりそめの形でも蘇ったのは、彼女が記し焼かれて灰となった“万象大全”の力であった。ドロテアはその力をエレナに託そうとするが、その前に敵が現れ、一行は迎撃のために、街道に向かう。
街道の攻防戦
開幕:街道にやってきた一行。すでに戦いは始まっており、ブレーメンの音楽隊たちが、ヴィランたちを退けていた。だが、新たに現れたのは凶悪な気配を発する三人。それぞれ、出身想区では主役級の力を持つ者ばかりであった。一行は苦戦を覚悟しつつ、戦いを挑む。
終幕:襲撃者を撃退した一行。だが、それは陽動作戦だった。街道の逆側から進行してきた部隊が、すでに宿場町に達し、戦闘が開始されていた。一行はブレーメンの音楽隊を神殿に戻し、宿場町の救援に走る。
宿場町の攻防戦
開幕:宿場町は戦闘の真っ最中であり、一行が着いたときには、あちこち火の海となり、抵抗した者たちも、敗れ、倒れている有様だった。一行の前に現れたのは、かつて“人魚姫”の想区で戦った、カオス・プリンス――兄とは別人とわかっていながらも、戦いづらい相手に、レヴォルは苦心する。
終幕:カオス・プリンスに勝利した一行。だがそれもまた陽動であり、本隊はすでに、「調律の神殿」に向かったと知らされる。一行は、急ぎ、敵本隊の追撃に向かう。
神殿の攻防戦
開幕:「調律の神殿」ではすでに激戦が始まっており、一行が到着したときには、敵の攻撃に耐えきれず、ブレーメンの音楽隊たちは、最終防衛ラインである、ドロテアのいる本殿まで後退していた。生存者狩りを行っていた二体のカオステラーと、一行は戦うことになる。
終幕:カオステラーたちに勝利した一行。生存者からの情報で、さらに凶悪な敵が、この先に向かったと知らされる。一行は、本殿に向かって走る。
本殿の攻防戦
開幕:本殿に到着した一行。そこでは、ブレーメンの音楽隊たちと、敵の本隊であるカオス・マリーとカオス・オーロラ姫がにらみ合いをしていた。一行は、二人と戦おうとするが、そこにさらに増援が現れる。警備部隊を一瞬で壊滅させた鋼鉄の巨人、カオス・ピノキオが、空から降りてきたのだ。一人でも強大な力を持つ者を、三人同時に、一行は相手にすることとなった。
終幕:三人のカオステラーに勝利した一行。これでようやく終わったと安堵するが、その隙を突いて、まだ力尽きていなかったカオス・オーロラ姫が、ドロテアに襲いかかる。しかし、ドロテアは彼女らに憐れみを持って接し、「第三の力」、『創造』を発動させる。それは、『創造』の力をエレナに伝えるためでもあった。
リザレクション
開幕:ドロテアの『創造』が発動し、破壊された想区も、傷ついた人々も、皆一瞬でもとに戻る。それだけではなく、カオステラーとなった者たちも、本来の姿を取り戻し、元の想区へ誘われた。『創造』の力とは『調律』や『再編』と異なり、全ての想区を含めた、世界そのものに干渉する力であった。ドロテアはさらに、その力の真髄を伝えようとするが、その前に、ついにプロメテウスが襲来し、一行はその迎撃に出ざるを得なくなる。
終幕:心の中で、エクスはプロメテウスから、自分に体を譲り渡せば、レイナたちは解放すると、取り引きを提案される。それ以外には、プロメテウスとともに、自分が死ぬしかないと告げられ、エクスは絶望する。しかし、ほんの僅かな希望を、エクスは見出す。
プロメテウス襲来
開幕:「調律の神殿」に襲来したプロメテウス。一行が到着する前に、ブレーメンの音楽隊を圧倒し、さらにドロテアのいる本殿に迫ろうとする。その異様な雰囲気に、レヴォルは違和感を覚える。プロメテウスは一行にネオ・ジャバウォックを差し向け、自身は、本殿へと向かってしまう。
終幕:ネオ・ジャバウォックに勝利した一行。シェインは、プロメテウスの言葉の端々から、彼が自分の力の源である、ヒーローの魂を解放しすぎたため、激しく弱体化していることを推測する。今日こそ決着の日となるのかも知れない。その事実に、一行は戦意を高揚させる。
嫌な予感
終幕:一方その頃、別の想区でシャルル・ペローは、泉の女神キュベリエより、一行が“フィーマン”の想区に向かったことを聞く。プロメテウスがなにかを企んでいる――それに気づいたシャルルは、ある男とともに、彼に作らせていたある物を携え、大急ぎで“フィーマン”の想区へと向かう。
最後の戦い
開幕:追いついた一行に、プロメテウスは非情な真実を告げる。
自分を殺せば、自分の中の『調律の巫女』一行は死んでしまう。しかし、そこでエクスの自我が目覚め、プロメテウスの言葉は偽りであり、自分ごと殺せば、全員解放されると伝える。エクスを殺すことをためらう一行であったが、エレナは戦う決意を見せる。彼女は非情な決断をしたのではなく、この現状をひっくり返す秘策を持っていた。
終幕:ついに一行はプロメテウスに勝利する。だが、それすらも、プロメテウスの策略だった。彼の本当の目的は、自らに逆らうエクスの体を見限り、別の「ワイルドの紋章」の持ち主、レヴォルの体を乗っ取ることであった。しかし、その寸前、プロメテウスの動きを予測していたエレナが、「魂をあるべき場所に戻す」ために、『創造』の力を発動させる。
少年の帰還、そして…
開幕:エレナの『創造』が発動し、体から、プロメテウス――「お月さま」は排除され、エクスは自分の体を取り戻す。最大の敵を倒したことで、安堵し、喜び合う一行。しかし、プロメテウスが消えたことで、もう現れないはずのヴィランが発生し、一行に襲いかかる。激しく戸惑いながらも、一行はヴィランと戦う。
終幕:事態が把握できず、困惑する一行。エレナは、自分の心の中で対面したモリガンの言葉を思い出し、自分がなにかとんでもないことをしてしまったのではないかと、真っ青になる。まずは、ドロテアの話を聞くため、彼女のもとに行くことにする。一方その頃、なにかが、動き出していた。
デウス・プロメテウス
開幕:一行はドロテアのもとへ向かう。ドロテアは、エレナの行った『創造』は、真の意味でのものではないと告げる。全てはプロメテウスの計算のままに、動いてしまった。そう告げる彼女に、詳しく話を聞こうとするが、その前に、強大な力を持つヴィランの大群が襲来する。
終幕:強大な力を持つヴィランとの戦いの中、突如現れる仮面の男。彼こそが、「完璧なる肉体」を得たプロメテウス、デウス・プロメテウスであった。エクス、ドロテア、エレナらの心を利用し、この体に宿ることこそが、彼の目的だった。尋常ならざる力で、デウス・プロメテウスは、自らの想区“プロメテウス”の想区を創り出す。一行は、デウス・プロメテウスとの戦いを決意し、その想区に、踏み込んでいくのであった。