概要
pixivにおいては信頼していた人間に裏切られている場面、あるいは単にブルータスを描いた作品に用いられている。
シェイクスピアの悲劇『ジュリアス・シーザー』において襲撃に遭ったシーザー(ガイウス・ユリウス・カエサル)が暗殺犯の中にマーカス・ブルータス(マルクス・ユニウス・ブルトゥス)の姿まで認めて発した言葉。第三幕第一場のシーザー暗殺の場面で発せられる。そのまま「ぜひもないぞ、シーザー (Then fall, Caesar!)」とセリフは続きシーザーは絶命する。
戯曲自体は全編がシェイクスピア時代の英語で書かれているがこの"Et tu Brute"のみラテン語が使われ、続く"Then fall, Caesar!"は英語に戻っている。
解説
シェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』は古代ギリシア語で書かれたプルタルコス『英雄伝』の英訳を種本としているが、そこには「ブルータス、お前もか」に類する記述はない。他方、ラテン語で記されたスエトニウス『ローマ皇帝伝』ではカエサルは最期にギリシア語で「息子よ、お前もか」と述べたとの説も紹介されている。
シェイクスピアの時代にスエトニウスの英訳は存在せず、またシェイクスピアが原語の古典作品を参照したとも考えられないため、当時のロンドンで流通していた古代ローマの解説本の類に似た記述がありそれを参考にしたのだろうと考えられている。
とりあえず、このラテン語の成句を作ったのは、少なくともこの形で人口に膾炙させたのはシェイクスピアとしておけばよいだろう。
ちなみにラテン語で "et"(エト)は「&」、"tu"(トゥー)は二人称の主格つまり「あなたが」の意味で、"Burte"(ブルーテ)は「ブルトゥスよ」と呼びかける形(呼格)になっている。なので「お前までもが、ブルータスよ」などと訳しても間違いではない。
ついでに、"then"(ゼン)は「だから」「であれば」といったニュアンスの副詞、"fall"(フォール)は「終わり」、"Caesar"(シーザー)はカエサルが『ガリア戦記』等の自著で自らを指す一人称として「カエサル」を使っていることを踏まえている。
デキムス説
この言葉の「ブルータス」は暗殺首謀者のマルクス・ブルトゥスではなくカエサルの元幕僚で暗殺グループの一員デキムス・ブルトゥスを指すとの説が信じられている。
そもそもカエサルの最期の言葉として「ブルータス」の名が登場するのは上述の通りシェイクスピアの戯曲中であり、ここでは明確に主人公マーカス(マルクス)を指している。戯曲中にはデキムスをモデルとしたデーシャンも暗殺グループの一人として登場しているのだが、最期の「ブルータス」をデーシャンとする解釈は無駄に筋を混乱させるだけであり作劇上ありえないと言ってしまってよいだろう。
この言葉が実際の歴史上においてなされたものであったと考えると、カエサルがガリア戦記で、最側近のプブリウスと並ぶ表現で親愛を示していたのはデキムス・ブルトゥスぐらいなので、完全な創作や荒唐無稽な話でもない。
というか当日、暗殺現場となる元老院に妻と共に渋り気味のカエサルに出席を促した上に道中護衛したのはこっちのブルトゥスだし、マルクスのほうは血筋も含めて根っからの共和主義者でポンペイウス派として敵対してきた人物なので、心情的にはそっちを推したくなる。
もっとも、逆にそこまで恩をうったのに裏切るのかという話もないわけもないが・・・
関連タグ
ジュリアス・シーザー ブルータス ガイウス・ユリウス・カエサル
ブルータス、お前モカ
関連リンク
ブルータス、お前もか - ニコニコ大百科(デキムス説を何の説明もなく採用している・・・が、流石にあれだったのか、現在は両論併記、両論を正として扱う形に修正されている)