曖昧さ回避
1.古代ラテン語で「鈍間」の意味(馬鹿に近い使い方だった)
2.ローマ人の姓
2-1.古代ローマ共和国初代執政者(古代ローマ王を追放し共和政ローマを開く):「ルキウス・ユニウス・ブルトゥス」Lucius Iunius Brutus 生没年不明
2-2.カエサル暗殺の首謀者として有名な古代ローマの政治家。フルネームはマルクス・ユニウス・ブルトゥス。2-1.の末裔。本項目で詳述。
2-3.カエサル暗殺に関与した古代ローマの軍人兼政治家。フルネームはデキムス・ユニウス・ブルトゥス・アルビヌス。2-1.の末裔で、2-2と同じ氏族の出身。本項目で詳述。
3.ルネサンスの巨匠ミケランジェロの制作した彫像(メイン画像)。モデルは2-2だとされている。デッサンの題材では定番。
ブルータスは、古代ローマの家族名ブルートゥスの英語読みしたもの。
主に共和政ローマ末期の政治家でガイウス・ユリウス・カエサル暗殺の首謀者の1人、マルクス・ユニウス・ブルトゥスを指す。
2-2 マルクス・ユニウス・ブルトゥス
概要
幼年期、父が民衆派と元老院派の闘争に巻き込まれて死亡したため、未亡人となった母と愛人関係になったカエサルの保護を受ける。(その為、一部では養父扱いしているメディアもある)
共和政ローマ末期において元老院議員として政治的キャリアを重ねた。
終身独裁官となったカエサルに権力が集中することを危険視したほかの政治家達(共和主義者)と共に、紀元前44年3月15日にカエサルを暗殺する。
後にローマを離れたがアントニウス軍と対決していた二人のコンスルが横死したことによりオクタウィアヌス、アントニウス、レピドゥスによる第2回三頭政治が成立。その後紀元前42年10月23日のピリッピの戦いで、オクタウィアヌス、アントニウス連合軍に敗北し、自決した。
後世の評価
現代においては、彼の行ったカエサル暗殺は共和政ローマの帝政移行は止められなかったこと、後にアウグストゥスが行った数々の政策によって150年余りに渡るパクス・ロマーナが実現したことなど、大局を見極められなかった愚者としての評価が一般的となっている。
こうした意見に対し、もしヒルティウスとパンサが共に戦場で倒れることがなければ、その後の展開が変わって愚者として見られる現在の評価も違っていたかもしれないという考えも見受けられる。
2-3 デキムス・ユニウス・ブルトゥス・アルビヌス
概要
共和制末期、ガリア戦争にて、遠縁にあたるガイウス・ユリウス・カエサルの部下として従軍する。階級はレガトゥス(訳は総督代理、つまりガリア総督として赴任したカエサルの副官相当)。
ガリア人に対する海戦で独創的な兵器を使用することで勝利し、ローマ内戦でもたびたび海戦で勝利を挙げている。また、ガリア戦争後のガリア統治に従事し、ローマ内戦中も平穏を保たせていた。
その有能さから、カエサルの部下随一の名将プブリウス・リキニウス・クラッススと同じほど重用され、彼とブルトゥスは『青年ブルトゥス』『青年クラッスス』とカエサル自身がガリア戦記に記している。
しかし、同じ一族のマルクス・ユニウス・ブルトゥスが主導したカエサル暗殺事件には、直前に将来の共和国最高職(執政官)を任されていながら直接加担することになる。
その後、半年前に書かれたカエサルの遺言状が公開されたが、そこにはオクタウィウス(後のアウグストゥス)に次ぐ第二相続人かつ若年時の後見人としてデキムスの名が記載されており、既に遠いパルティアで戦死した『青年クラッスス』と同等以上の篤い信頼を最後まで寄せていたことが判明、全てを知ったデキムスは自室にてしばし茫然としたという。
その発生した内戦において、同じカエサルの部下で同僚のアントニウスとレピドゥスに敗れて殺害される。
余談
あの有名な「ブルータス、お前もか」のブルータスは2-2マルクス・ユニウス・ブルトゥスではなく、2-3デキムス・ユニウス・ブルトゥス・アルビヌスを指すのではないかという説がまことしやかに囁かれている。
実際のところ、「ブルータス、お前もか」が有名になったのはシェイクスピアの作劇からであり、そこではデキムスは『デキウス』という役名で登場しているので微妙に異なる。
ただし、そもそも暗殺当日、カエサルを家から現場まで随行してきたのはデキムスであり、暗殺時に発した言葉については「息子よ」だったり「ブルータス」だったり「そもそも何も言っていない」と所説ある話なので気にしすぎないのが吉。
それに上述の通り、ガリア戦争とローマ内戦を通して篤い信頼と親愛を寄せていたのは間違いなく、さらに暗殺当日に元老院への出廷を促してさえいるので、荒唐無稽という話でもない。
というか、ポンペイウス派との戦争で元老院派についたマルクスより、むしろカエサル軍としてずっと従軍してこの日も随行しているデキムスが暗殺に加担したという事実のほうが衝撃だろう。