『冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた』の登場人物。同作の主人公。
CV:諏訪部順一
概要
オルフェンギルドに所属するSクラス冒険者"黒髪の戦乙女"アンジェリンの育ての親。
自身は、かつては冒険者であったものの、現在はただの農夫。
本編開始時点で42歳。冒険者時代に右足を失っており、義足を用いている。
愛称はベル。
経歴
幼くして両親を亡くし村長の後見の元で世話になっていたが、孤児となった事で(村長一家は良くしてくれていたし、幼馴染のケリーとは親友とも言える仲であったが、ゆえにこそ)村では肩身が狭くなり、世話になる事に申し訳ない思いが募ったあげく、15歳でトルネラ村を飛び出して冒険者となった。
冒険者になってからは自らの力量を鑑み、慎重な姿勢とサポートに徹す事、何よりも自身のみならずパーティ全員の安全な帰還を第一義とする活動方針を取っていたが、それゆえに他の多くの冒険者からは臆病者と謗られる事になった。
しかし、そんなベルグリフの視野の広さとサポート力にパーシヴァル(パーシー)が目を付け、一緒にパーティを組む事を提案。さらに魔法使いのカシムとサティが加わり、気鋭の駆け出し冒険者パーティとして活動を始める。
しかし、その2年後、クエスト時の失策によって片足を失った事を切っ掛けに冒険者を廃業。故郷へと戻り、再び村長一家の後見のもと、いち村人としての生活を送る事となった。
冒険者になるために(周囲の気遣いを無視し、見方によっては村長一家に面倒を見てもらった恩を返す事無く)村を飛び出した挙げ句、足を失って帰って来たベルグリフに村の長老たちや同世代の若い女性たちは「威勢の良い事を言って出ていった挙げ句、村の役にも立てないくせに帰って来たお荷物」と非常に冷たかったが幼馴染のケリーが、軽作業や子守り、冒険者としての知見を活かした魔獣退治の立案などベルグリフにも出来る仕事を回してくれた上、本人も日々の鍛練を欠かさず義足ながらも日常の農作業が出来る(のちには魔獣退治も自分でできる)くらいに回復していった事から、少しずつ「村に必要な人材(知恵袋)のひとり」として認識されるようになった。
25歳の時に山中で捨て子を拾い、アンジェリンと名付けて自分の娘として育てる。のちにアンジェリンが冒険者の道を志した事から、自らの持てる冒険者としてのあらゆる知見と知恵と闘法をアンジェリンに授けオルフェンの街へと送り出した。
性格など
彼自身はいたって温厚で、父性の塊ともいうべき人格者であり、その人柄に惹かれる者は数多い。
また片足を失った状態から日常生活に支障の無い挙動を取り戻したエピソードからも見られるように類希なる努力家。日々の鍛練は欠かす事なく確実な基礎を常に積み上げており、普通に実力者になってしまえば疎かにしやすい地味な基礎努力を決して厭わない。長年の鍛練に裏打ちされた膨大な基礎こそが彼の真の強みと言える。
その一方、そこそこの年齢ではあるものの独身のまま。これは片足を失っている事に村の女性たちがドン引いている事や、村の同世代もその事に対する負い目があってベルグリフに容易に近寄れない事が一因となっているのだろうとケリーは見ている。
娘が広めた”赤鬼”の二つ名の件をはじめ、自分に関する根も葉もない噂が一人歩きしている事に困惑しているが、冒険者を辞めてからも鍛錬や村近辺の魔獣退治を欠かさず行っており、噂が本当だったと錯覚させるほどの実力を持っている事が、事態をややこしくさせている(そもそもアンジェリンに剣を教え、冒険者の心構えを叩き込んだのが他ならぬ彼である)。
ただし、孤児として庇われつつも負い目を感じながら過ごした少年時代、村を飛び出して冒険者となるも自分を仲間にしてくれた皆のためにとサポート特化に力を注いだ結果として活躍が地味になった結果として「パッとしない奴、活躍をしない臆病者」認定されてしまった新人時代、認めてくれる仲間に出会いやっと活躍できると思った矢先に不慮の事故で片足を失ってしまい「認めてくれる仲間に報いるどころか、お荷物になってしまった」と無闇矢鱈に自らを責め続け、それが癒されぬままに誰にも相談せずに自己完結させて冒険者をドロップアウトしてしまった事、さらに村に帰っても長らく厄介者扱いであった事など、とにかく悪い意味で"不幸慣れ"してしまっている上で、自分を肯定してもらったり誉められたりした経験が希薄であるがゆえに、とかく自己肯定感が育っていない性格でもあり基本的に自己犠牲を当然と受け止めて安易に請け負ってしまう人でもある。
パーシーのパーティにいた頃には、その自己肯定感の弱さゆえに、パーティメンバーであるパーシーとサティがお似合いで両思いだと勘違いした上で自らの本当の想いに蓋をした上で、サティの本当の想いに気付く事なく二人の仲を密かに応援したりしていた。
ある意味でアンジェリンの存在や、彼女が結んでくれる人の縁は、ベルグリフ自身にとっても救いになっている部分もある。
冒険者として
自身が早くに冒険者引退に追い込まれた事もあって、現役冒険者としては最低(駆け出し)のEランク止まりであったが、後年に軒並み高ランクの冒険者となったかつてのパーティの仲間たちから「自分の知る限りベルグリフ以上の冒険者はいない」と口を揃えて評されるほどの厚い信頼を得ている。
冒険者としては珍しい慎重派(頭脳派)であり事前調査と準備を十分にするタイプ。アンジェリンにも冒険者はとにかく「生き残る」事が第一であると教えている。
駆け出しの中でも特に駆け出しの頃、冒険者を始めてすぐの頃に無理して買った「魔獣図鑑」は現在でも自身の冒険者としての教科書のひとつにしている。
それにはベルグリフ自身が冒険者として体験した現実との誤差、あるいは多くの先輩冒険者に食らいついて尋ねた、本には載らないような注意点など自身の経験から得た情報をつぶさに書き込んでおり、アンジェリンもまたこの本で魔獣の性質や対処を学んでいる。
こうした地道な努力による含蓄(知識の蓄積)も本来はEランク冒険者であったベルグリフが他の冒険者たちから一目置かれる要因のひとつと言える。
パーティの人間関係を調整できる潤滑油に等しい存在であり、事実上のパーティの頭脳・司令塔として機能していた。村に帰郷して子どもたちや若手に護身・防衛の手段として冒険者の技術と戦い方の手ほどきもしており、それらが成果を挙げている事からも解るとおり、事実上の隠れた名伯楽とも言える。(アンジェの仲間であるアーネとミリィいわく「側で戦って(指示を)貰ってると安心感がハンパない」模様)
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※ 以下、ネタバレ |
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アンジェリンの親にして師である事から彼女の「戦いの癖」や「弱点」は熟知しているので、正真正銘のアンジェリン特効スキルの所持者と言える。が、何も知らない人からしてみると、その姿は「Sランク冒険者を手玉に取る(元)熟練冒険者」に見えてしまうため、これもまた余計に誤解が広まる原因になっている。
物語中盤からはトルネラ村にやってきた冒険者、剣聖グラハムにより、これまでの努力によって積み上げてきた基礎と実力を見いだされて、より一段高いステージの修行を積む事となり冒険者として義足のハンディをも全くものともせぬ更なる強さを得る事となった。物語の終盤では一時的にではあるがグラハムより聖剣を預かる(意志ある聖剣に認められる)ほどの心身ともに熟練した実力を持つに至る。
そして自らの過去のわだかまりと決着をつけるため、娘の引き寄せた奇縁によって再会した、かつての仲間であるカシムおよび娘のパーティとともに「自身、最後にして最大の冒険」へと旅立つ事となった。