概要
著:西村悠、イラスト:高階@聖人による電撃文庫のライトノベル。全2巻。
第5回電撃hp短編小説賞〈銀賞〉受賞。
キャッチコピーは『優しくて残酷な、神様と世界のお話』。
自分の住む世界が巨大な塔の中の部屋であることを知らされた少年が、塔の外の世界を見るべく世界の階層を降りていく物語。
作中には様々な国や空間が塔の階ごとに存在し、主人公はそれぞれの世界にて、下の階へ行く為の『鍵』と『扉』を探すこととなる。
作品のストーリー構成や雰囲気は『キノの旅』を思わせる。
登場人物
サドリ
主人公。人当りのいい優しい少年。所属世界は一三〇二階。
ある時、二四〇九階の世界に住む少女からの通信を受け取ったことをきっかけに世界の真理を知り、度重なる会話から彼女に好意を持つようになる。
その後、塔の外の世界にあるという『海』に興味を抱き、彼女と再会する約束を交わして自らの世界を脱出、世界を下る旅に出ることとなった。
コーヒーが好物で、「この世で最も素晴らしい飲み物」「コーヒーをおいしいという人に悪人はいない」としている。
カエル
サドリの相棒。一二四四階の世界にて出会い、以降共に旅をしている。
遺跡から発掘された存在で、人語を理解し、機械を操る能力を備えている。
何故か格闘技の知識が豊富で、世界を渡り歩くサドリを鍛えるべく技を伝授した。
「彼女」
サドリの旅の発端となった、二四〇九階の世界に住む少女。
聡明だった為に世界の真実を知ったが、その知識を異端視され追放、幽閉されていた。
その後、自らの住む世界が崩壊に瀕していることを知り、別の階層に助けを求める通信を送る。
サドリと会話が繋がってからは外の世界で落ち合う約束を交わしたものの、作中ではどうやっても二四〇九階を脱出できず絶望しかけ、最後には音信不通になってしまう。
彼女の無事を信じ、サドリは世界を下ることとなった。
アントロポシュカ
それぞれの世界に一つずつ存在する人工知能。キャッチコピーの『神様』にあたる。
自らの定義する『幸せ』に基づいて世界を管理する為に作られたが、多くは長年の稼働によって幸せの定義が狂い、『戦争をする為に存在する国』『暗闇に閉ざされた国』など、住民の望まない歪んだ世界を作り出している個体も存在する。
上下の世界を繋ぐ『扉』を『鍵』なる人間によって閉ざしている。