概要
一輪は初登場した『東方星蓮船』以降その種族は「妖怪」とされており、その後登場した『東方心綺楼』や『東方深秘録』においても「妖怪」であることが前提となるセリフや設定などが登場している。
一方で稗田阿求が一輪について記述したところによると、一輪は「 元々は人間だったらしい 」。
『東方求聞口授』における阿求の記述によれば、一輪は雲山との出会いを通して人間から妖怪へと変化した存在である。
稗田阿求曰く
阿求が記述する一輪と雲山の過去は次のようなものである。
今日でこそ一輪とともにある雲山であるが、当時はまだ人間を喰らう危険な見越入道であった。
一方度胸のある少女一輪はこの見越入道に「 一泡吹かせてやろうと 」会いに行った。
そして見越入道を撃退する「 呪文 」によって入道の雲山を破ったのである。
雲山は自身が破れたショックと一輪の度量に感服し、以後一輪を守り続ける事を決意した。
しかしこれが同時に、一輪の生き方を変える起点ともなった。
詳細は語られていないが、見越入道という強力な加護があることから妖怪を恐れる必要が無くなった一方、人間から疎まれたこともあるようである。
阿求は一輪の過去について、「 波乱万丈の人生 」を送った後に、「 いつしか妖怪の仲間入りをしたようである 」としている。
その後も紆余曲折はありながらも今日では人間と妖怪との融和を目指す聖白蓮に帰依し、雲山もまた見越入道を「 廃業 」しているため妖怪としての危険性は低いようである(ただし阿求評では「雲居一輪&雲山」としてはその危険度は「 高 」)。
なお一輪は妖怪となった経緯に限らずその妖怪性も特殊であるらしく、「入道を使う」という一輪について阿求は「 聞いた事のない妖怪 」ともしている。
また一輪は「 魔法使いのようなタイプ 」ともされている。
東方Projectにおける魔法使いには大きく二種類あり、それは先天的な魔法使いと後天的な魔法使いである(『東方求聞史紀』)。一輪が元々人間であったとするとき、この定義的においては後天的な魔法使いにあたる。
一方で「 人間が身に付けた特殊な能力は総称して「魔法」と呼ぶ 」(『求聞口授』、白蓮項)ともされており、呪文によって入道を撃退し、以後はその力を得るという特殊な魔法的手続きは、英雄譚やファンタジーにおける魔法的な事柄でもある。
一輪が信頼を寄せる白蓮もまた魔法使いとされ、白蓮の場合は仏法を極めたことによる魔法使いであるという、より東洋ファンタジー的な要素に基づく魔法使いである。
二次創作では
二次創作においても一輪の過去を含め「人間一輪」について様々にストーリーが生み出されている。
キャラクター性としては『求聞口授』の記述から快活な少女として描かれる事も多いが、そもそも一輪がなぜ危険な見越し入道に挑もうとしたのか、といった内面の詳細部分にアプローチするものもあり、その際には当時の一輪の人間関係含め多様な一輪の人間性が描かれている。
同時に人間としての一輪の普段の生活が想像される事も多い。
そして雲山との勝負の経緯をはじめ出会いの後の一輪、妖怪に至る経緯や作中にある「 人間から嫌われたりもした 」という要素なども想像される事がある。後者の要素は、一輪が元々人間であったがために雲山との結びつきが生まれて以後自身と周囲が変化していったという意味において、広く「人間一輪」のテーマともなっている。
その時は同時に、一輪のあり方を変えることともなった雲山の想いも多様に描かれている。
またこの視点では一輪と雲山を通して「妖怪になるとはどういうことか」という考察へと至る作風もある。
それでも「人間一輪」の向かう先にあるものは『星蓮船』以前における白蓮との出会いであり、『星蓮船』とそれ以後の様々な作品で語られる一輪の人生なのである。
視覚的なイメージ・デザインとしての「人間一輪」については2015年6月現在原作では挿絵などの形でも語られていないため、ファンや二次創作作品によって様々にその姿が考察されている。『求聞口授』で語られた少女時代のセリフイメージをはじめ『星蓮船』以後のイメージなども含め、服装や髪形含め明るく元気な様子でデザインされる事も多い一方で、先述のような複雑な内面性の考察を前提とする作品ではそれに限らないデザイン性が見出されるなど、作品ごとにアプローチも多様である。